AMDの次世代ハイエンドAPU「Strix Halo」シリーズの最上位モデルと思われるRyzen AI MAX+ Pro 395のベンチマーク結果が、ベンチマークテストソフトウェアGeekbenchのデータベースに登場した。16コアのZen 5プロセッサと強力なRDNA 3.5統合GPUを搭載するこのチップは、NVIDIA GeForce RTX 4060モバイルを上回るグラフィックス性能を示している。
強力な仕様が明らかに
今回Geekbenchに登場したRyzen AI MAX+ Pro 395の詳細な仕様からは、AMDの次世代APUに対する野心的な構想が読み取れる。プロセッサのコア構成は、最新のZen 5アーキテクチャを採用した16コアを搭載し、同時マルチスレッディング(SMT)により32スレッドの並列処理が可能となっている。動作周波数は通常時の3.0GHzから最大4.4GHzまでブーストすることが確認されており、これは初期のエンジニアリングサンプルとしては良好な数値といえる。
キャッシュ構造にも注目が集まっている。64MBという大容量のL3キャッシュは、デュアルCCD(Core Complex Die)設計を採用していることを示唆しており、各CCDに32MBのL3キャッシュが配置されていると考えられる。さらに、各コアに1MBのL2キャッシュを割り当て、合計16MBのL2キャッシュを実装することで、データアクセスの高速化を図っている。この階層的なキャッシュ構造は、特に統合環境における演算処理の効率化に大きく貢献すると予想される。
グラフィックス性能を担うのは、RDNA 3.5アーキテクチャを採用したRadeon 8060S統合GPUだ。40基のコンピュートユニットを搭載し、これはAMDの現行ミッドレンジGPUであるRX 7600と比較して25%多い構成となっている。さらに、メモリボトルネックを解消するため、32MB以上のInfinity Cache(MALL)をSoCダイ上に実装していることが報告されている。
テスト環境には、AMDの開発用リファレンスボード「MAPLE-STXH」が使用され、FP11ソケットに対応したプラットフォームで検証が行われた。メモリには64GBのDDR5 SDRAMがクアッドチャネルで実装され、1,994 MT/sで動作。この構成でVulkan APIテストを実施したところ、67,004ポイントを記録し、NVIDIA GeForce RTX 4060モバイル(63,264ポイント)をわずかながら上回る結果となった。ただし、これは初期のドライバーやファームウェアでの結果であり、正式リリースまでにさらなる性能向上が期待される。
Strix Haloラインナップの全容
シリーズには、今回登場した最上位のRyzen AI MAX+ Pro 395に加え、12コア24スレッドのRyzen AI MAX 390、8コア16スレッドの385、そして6コア12スレッドの380が用意される見込みだ。TDP(熱設計電力)は55Wから130Wの範囲で設定される。統合GPUについては、上位2モデルがRadeon 8060S(40 CU)、Ryzen AI MAX 385がRadeon 8050S(32 CU)を採用。最下位の380は16 CUの構成となる見通しだ。
Xenospectrum’s Take
今回のベンチマーク結果は、AMDが目指すApple M世代のコンピューティングの方向性を示唆している。単体GPUに迫る性能を持つ統合GPUの実現は、ノートPCの設計に革新的な変化をもたらす可能性を秘めている。
しかし、初期ファームウェアでのスコアであることを考慮すると、最終的な性能はさらに向上する可能性がある一方で、電力効率や実際のゲーミング性能については慎重な評価が必要だろう。来月のCES 2025での正式発表が、PCプラットフォームの新時代の幕開けとなるか、それとも単なる期待倒れに終わるのか。業界の注目が集まっている。
Source
- Geekbench: AMD MAPLE
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