AMDが次世代のFidelityFX Super Resolution(FSR)、「FSR4」を完全にAIベースにすることを計画していることが明らかになった。同社は次世代FSRにおいて、画質向上と電力効率の最大化を主な目標としており、特に携帯ゲームデバイスのバッテリー持続時間延長に重点を置いているようだ。
FSR4開発の背景:AIによる革新
AMDのJack Huynh氏(Computing and Graphics Business Groupのシニアバイスプレジデント兼ゲネラルマネージャー)は、IFA 2024でのインタビューで、FSR4の開発について詳細を語った。Huynh氏によると、FSR4は約9〜12ヶ月前から開発が進められており、従来の解析ベースのアプローチからAIベースのフレーム生成・補間技術へと大きく方向転換したという。
「FSR2とFSR3は解析ベースの生成でした。フィルターベースだったんです。我々はそれを市場への迅速な投入のために行いました。しかし、私はチームに『それは未来の方向性ではない』と伝えました。そこで、約9〜12ヶ月前にチームを完全にAIベースへと方向転換させたんです」。とHuynh氏は説明している。
この戦略的転換の背景には、携帯ゲーム機のバッテリー持続時間という課題がある。Huynh氏は、ASUS ROG AllyやLenovo Legion Goなどの現行機器のバッテリー持続時間が不十分であると指摘し、「私には何時間も必要なんです。『Wukong』を60分ではなく3時間プレイしたいんです」と述べており、現行からの大幅な効率アップを計画している事を示唆している。
FSR4の主要な目標は、AIベースのフレーム生成と補間技術を活用して、バッテリー持続時間を最大化することにある。Huynh氏は、フレームレートを30FPSや35FPSに固定することで、効率を向上させつつ、プレイ時間を延長できる可能性を示唆している。
そのため、FSR4は、完全にAIベースのアプローチを採用することで、画質の向上と電力効率の最大化を同時に実現することを目指している。この新技術は、AIを活用したフレーム生成と補間を行うことで、よりスムーズなゲームプレイ体験を提供しつつ、デバイスのバッテリー消費を抑える効果が期待されている。
しかし、FSR4の適用範囲は携帯ゲーム機に限定されるものではない。AMDの過去の取り組みから、FSR4もまた幅広いGPUソリューションをサポートする可能性が高い。AIベースのアプローチを採用しても、過去6年以上にわたって発売されてきた多くのGPUが、FP16やDP4a(INT8)命令をサポートしているため、テンソルコアやNPU命令と重複する処理を実行できると考えられる。
競合技術との比較では、IntelのXeSSが類似のアプローチを取っている。XeSSはArc GPUのXe Matrix eXtensions(XMX)モードで動作し、XMXをサポートしていないGPUに対してはDP4a命令を使用して同様の処理を行う。FSR4も同様のアプローチを採用し、幅広いハードウェアでの互換性を確保する可能性がある。
FSR4の正式リリース時期については明確な情報が得られていないが、9〜12ヶ月の開発期間を経ていることから、近い将来にリリースされる可能性がある。ただし、過去のアップスケーリングソリューションの例を見ると、APIのリリースは最初のステップに過ぎず、ゲームがこの新しいAPIをサポートするまでにはさらに時間がかかる可能性がある。
AMDは最近、ドライバーレベルでフレーム生成を提供するFluid Motion Frames 2(AFMF 2)技術もアップデートしており、これが短期的には携帯ゲーム機のパフォーマンス向上ソリューションとなる可能性がある。しかし、補間に依存するすべてのフレーム生成ソリューションと同様に、真のパフォーマンス向上機能というよりも、フレームスムージング機能として機能することに注意が必要だ。
Xenospectrum’s Take
AMDのFSR4開発は、ゲーミング業界に大きな影響を与える可能性を秘めている。同様にAIベースのDLSSは、NVIDIAデバイスに縛られているため、デバイスに縛られないFSR4はユーザーとしても有り難い物となるだろう。
特筆すべきは、AMDが携帯ゲーム機の制約を克服するソリューションとしてFSR4を位置付けていることだ。これは、急成長するモバイルゲーミング市場への戦略的アプローチとも言える。しかし、FSR4の潜在的な適用範囲はそれにとどまらない。デスクトップPCやコンソールゲーム機など、より広範なプラットフォームでの活用も期待できる。
競合他社との技術競争も激化するなか、FSR4の成功はAMDの市場ポジションを大きく左右する可能性がある。ただし、新技術の実装には時間がかかることも予想され、短期的にはAFMF 2のような既存技術の改良が重要な役割を果たすだろう。
今後は、FSR4の具体的な性能や互換性、そして実際のゲームでの実装事例に注目が集まるだろう。AMDがこの技術をどのように展開し、ゲーム開発者やハードウェアメーカーとどのように協力していくのか、今後の動向が注目されるところだ。
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