ドイツ大手PCパーツ販売店Mindfactoryの販売データによると、AMDの最新ゲーミングプロセッサ「Ryzen 7 9800X3D」の販売台数が、Ryzen 9000シリーズの非X3Dモデル全体の販売台数を上回っていることが明らかになった。この結果は、ゲーミング向けプロセッサ市場における3D V-Cache技術搭載モデルの圧倒的な人気を示している。
異例の販売動向が示す市場の変化
Mindfactoryの販売データは、ハイエンドCPU市場における興味深い変化を明確に示している。2024年11月7日の発売以降、Ryzen 7 9800X3Dは8,650個という堅調な販売個数を記録した。これに対して、より高性能を謳うフラッグシップモデルのRyzen 9 9950Xは780個という控えめな販売数にとどまっている。同様に、Ryzen 9 9900Xは810個、Ryzen 7 9700Xは2,510個、そしてエントリーモデルとなるRyzen 5 9600Xも890個という結果となっており、9800X3D一機種で他のモデルの総数を圧倒する状況が明らかとなった。
特筆すべきは、この販売動向が価格による制約を受けていないという点である。Ryzen 7 9800X3Dは88,000円と決して安価とは言えない価格設定にもかかわらず、発売直後から品薄状態が続き、海外のオークションサイトでは希望小売価格490ドルの3倍以上となる1,500ドルという驚異的な高値で取引される事態となった。現在は供給が安定し価格は下落しているものの、依然として希望小売価格を上回る水準で取引が継続している。この現象は、ゲーミング性能を重視する消費者が、価格よりも実性能を重視する購買行動を取っていることを如実に示している。
前世代モデルとの比較と今後の展開
現行モデルの成功は明白である一方で、より長期的な視点では興味深い課題も浮かび上がっている。前世代モデルのRyzen 7 7800X3Dが記録した78,420個という圧倒的な販売実績と比較すると、9800X3Dの現在の販売数は約9分の1にとどまっている。この大きな差異は、単純な世代間比較だけでは説明できない複雑な市場要因を示唆している。
具体的には、新世代プラットフォームへの移行に伴うマザーボードやメモリの追加コスト、既存の7000シリーズプラットフォームの十分な性能レベル、そして全体的なPCのアップグレードサイクルの長期化などが、現行モデルの販売速度に影響を与えていると考えられる。しかしながら、AMDは既にこの状況に対する戦略的な対応を準備している。
今後の展開として、AMDは3D V-Cache技術を搭載したより幅広いラインナップの投入を計画している。6コアのRyzen 5 9600X3Dは、よりコストを重視する市場セグメントへのアプローチとして注目される。さらに、12コアのRyzen 9 9900X3Dおよび16コアのRyzen 9 9950X3Dは、クリエイター向けワークロードとゲーミング性能の両立を求める上位市場をターゲットとしている。これらの新モデルは、1月7日から10日まで開催されるCES 2024において、AMDの基調講演での発表が期待されている。特に価格設定と実性能のバランスは、市場の反応を大きく左右する要因となるだろう。
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