Appleが、テクノロジーと健康の関連性を探る大規模な研究「Apple Health Study」を開始した。iPhone、Apple Watch、AirPodsなどのデバイスから得られるデータが、身体的・精神的な健康にどのように役立つかを明らかにする。本研究は、Brigham and Women’s Hospitalとの共同で行われ、米国内の参加者を対象に、AppleのResearchアプリを通じて実施される。
Apple Health Studyとは?:ウェアラブルデバイスのデータで健康を予測・管理
Apple Health Studyは、ウェアラブルデバイスから収集される生体情報とユーザーの自己申告データを結びつけ、健康状態との関連性を解明することを目的としている。具体的には、活動量、加齢、心血管の健康、循環器の健康、認知機能、聴覚、月経、メンタルヘルス、代謝、運動機能、神経、呼吸器、睡眠など、多岐にわたる分野を対象とする。
Brigham and Women’s HospitalのCalum MacRae, M.D., Ph.D.は、「テクノロジーが人間の健康に対する理解をどのように向上させるかについては、まだほんの表面をなぞったに過ぎない」と述べ、「Apple Health Studyに参加できることを嬉しく思う。この研究は、多くの人々が毎日持ち歩いているテクノロジーを使って、健康のさまざまな分野間のつながりを引き続き探求していく」と期待を寄せている。
従来の医学研究の限界を超える:Appleデバイスの強みを生かす
従来の医学研究は、参加者数、データ量、研究期間などの制約があった。しかし、Apple Health Studyは、Appleのエコシステムの強みを生かし、これらの課題を克服する可能性を秘めたものと言える。
既に、Apple Women’s Health Study、Apple Hearing Study、Apple Heart and Movement Studyでは、合計35万人以上の参加者からデータを収集。Apple Health Studyは、これらの研究から得られた知見を基盤とし、さらに大規模なデータ収集と分析を行うことで、新たな発見や製品開発につなげることを目指すものだ。
これまでにも、同社の研究で得られた知見は、Apple WatchのVitalsアプリやiPhoneのWalking Steadiness機能など、具体的な製品機能として結実している。
例えば、AirPods Pro 2に搭載された補聴器機能は、Apple Hearing Studyでの研究成果がFDA(米国食品医薬品局)の認可に繋がり、実現した。これにより、ユーザーは自宅で手軽に聴力テストを行い、その結果を医師の診断に役立てることが可能になった。
これらの実績は、Appleが健康研究を通じて得られた知見を、ユーザーに直接的な価値として還元する姿勢を示すものだ。今回のApple Health Studyも、将来的なヘルスケア技術の発展に大きく貢献することが期待される。
AppleのHealth担当バイスプレジデントであるSumbul Desai, M.D.は、The Vergeに対し、「Researchアプリの立ち上げ以来得られた貴重な洞察により、Apple WatchのVitalsアプリやiPhoneのWalking Steadinessなど、革新的な新ツールをユーザーに提供できるようになった」と述べ、「Apple Health Studyは、身体的、精神的な健康とテクノロジーに関する理解を加速させるだろう」と語った。
研究内容の詳細:対象分野とデータ活用
Apple Health Studyは、活動量、加齢、心血管の健康、循環器の健康、認知機能、聴覚、月経の健康、メンタルヘルス、代謝の健康、運動能力、神経系の健康、呼吸器の健康、睡眠など、広範な健康領域を対象としている。
この研究では、ウェアラブルデバイスから収集されるバイオマーカー情報と、参加者からの入力データを組み合わせることで、センサーデータと健康状態の関連性を解明することを目指す。具体的には、スマートウォッチのデータが精神疾患の予測や遺伝的ルーツの特定に役立つ可能性や、スマートウォッチのECG(心電図)データからうっ血性心不全の兆候を約90%の精度で検出できるフレームワークなどが研究事例として挙げられている。
Appleは、収集されたデータを活用し、健康状態の変化を早期に特定するためのアルゴリズムやフレームワークの開発を目指している。例えば、健康状態の変化は身体的または感情的な信号として現れる可能性があり、これらの変化を早期に捉えることで、よりプロアクティブな健康管理が可能になると考えられる。
参加方法は?:Researchアプリから登録、データ共有は任意
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Apple Health Studyへの参加は、米国内に居住し、年齢要件を満たし、インフォームドコンセントのプロセスを完了した人が対象となる。参加希望者は、Researchアプリを通じて登録できる。
参加は任意であり、研究者に共有するデータの種類は自分で選択でき、いつでも共有を停止できる。Appleは、Researchアプリを通じて提供された連絡先情報などの個人を特定できる情報にはアクセスできない。また、参加者はいつでも研究から脱退でき、将来のデータ収集を終了できる。
日本のユーザーには関係のない話ではあるが、今後対象国を広げ、日本でも同様の研究が行われる可能性もあるだろう。
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