AppleがMacに接続することを前提としたARグラス開発プロジェクトを中止したことが、Bloombergによって報じられている。Vision Proに続く製品として期待されていたARグラスの開発中止は、AppleのAR戦略にどのような影響を与えるのだろうか。
Mac接続型ARグラス「N107」開発中止の背景
Bloombergの報道によると、Appleはコードネーム「N107」として開発していたMac接続型ARグラスのプロジェクトを中止したとのことだ。N107は、通常のメガネのような外観で、レンズにディスプレイを内蔵し、Macに接続して使用するデバイスとして構想されていた。
関係者によると、N107はVision Proの機能の一つであるMacの仮想ディスプレイ表示を、より手頃な価格で軽量に実現することを目指していた。しかし、開発は難航し、特にバッテリー消費とコスト効率の課題が大きかったようである。当初iPhoneとの接続も検討されたが、バッテリーの問題からMac接続に切り替えられた。しかし、Mac接続型も社内レビューで経営幹部からの評価が低く、プロジェクト中止に至ったとされている。
Vision Pro戦略への影響と今後の展望
今回のARグラス開発中止は、AppleのAR戦略に大きな影響を与える可能性がある。Vision Proは技術的には高い評価を得ているが、約50万円という高価格と大型で重いデザインが普及の障壁となっている。N107は、Vision Proの課題を克服し、より多くのユーザーにAR体験を提供するための重要な製品と位置づけられていたと考えられる。
Appleは、2023年にも別のARグラスプロジェクトを中止しており、Vision Pro 2の開発も一時保留し、低価格版Vision Proの開発に注力しているとの報道もある。これらの動きから、AppleがAR分野で製品戦略の見直しを迫られている状況がうかがえる。
競合が先行するARグラス市場
一方、ARグラス市場では競合他社が着実に製品開発を進めている。MetaはRay-Banと提携したスマートグラスを販売しており、高度なMicro LEDディスプレイとニューラルリストバンドを搭載したARグラスのプロトタイプ「Orion」も公開している。Mark Zuckerberg CEOは、スマートグラスをAIアシスタントの主要なプラットフォームと位置づけ、注力していく方針を示している。
GoogleもAndroid XRを発表し、ARグラス市場への参入を伺わせている。SamsungもARヘッドセット「Project Moohan」の開発を進めており、CES 2025では様々なスマートグラスが登場するなど、ARグラス市場は競争が激化している。
AppleのARグラス開発中止は、競合他社にとって追い風となる可能性がある。特にGoogleは、Appleが撤退したことで、ARグラス市場で主導権を握るチャンスを迎えたと言えるだろう。今後のAR市場は、Meta、Googleを中心に、新たなプレイヤーが参入する可能性もあり、競争はさらに激化していくと予想される。
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