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ASMLとImec、半導体研究と持続可能性に向けた5年間の戦略提携協定を締結

2025年3月13日

オランダの半導体製造装置大手ASMLとベルギーの研究・イノベーションハブImecは、半導体技術の進歩と持続可能なイノベーション促進を目的とした5年間の戦略提携協定を締結した。この提携により、ASMLの最先端リソグラフィーツールがImecの研究施設で利用可能となり、2nm(ナノメートル)以下のプロセス技術開発が加速される見込みだ。

提携の概要と目的

今回の戦略提携は、ASMLとImecそれぞれの知識と専門性を結集し、主に2つの分野で価値ある解決策を提供することを目指している。1つ目は半導体産業を進歩させる技術開発、2つ目は持続可能なイノベーションに焦点を当てた取り組みだ。

ASMLの社長兼CEOであるChristophe Fouquet氏は「この協定はASMLとImecの長年にわたる協力関係における次のステップを示すものです。半導体産業のための解決策を開発するという我々の共同目標を示し、社会全体に利益をもたらす技術とイノベーションへの投資という我々の戦略に合致しています」とコメントしている。

Imecの社長兼CEOであるLuc Van den hove氏は「30年以上にわたり業界に最先端のパターニングソリューションへのアクセスを提供してきたASMLとの長年のユニークなパートナーシップを継続できることに興奮しています。ASMLの製品ポートフォリオ全体を含めることで、パイロットラインの能力を拡張しさらに成熟させ、AI駆動の技術的進歩の課題に取り組むための最先端のR&Dを半導体エコシステム全体に提供できるようになります」と述べている。

技術的焦点と研究開発分野

この協力関係にはASMLの製品ポートフォリオ全体が含まれており、特に高度なノードの開発に焦点を当てている。具体的には、ASMLの0.55 NA EUV(高NA極端紫外線)、0.33 NA EUV(標準NA極端紫外線)、DUV(深紫外線)イマージョン、YieldStar光学計測、HMIシングル・マルチビーム技術などのシステムを活用する。

これらのツールは、Twinscan NXT(DUV)、Twinscan NXE(0.33NAのLow-NA EUV)、Twinscan EXE(0.55NAのHigh-NA EUV)リソグラフィーシステムをImecが利用できるようになることを意味する。特に注目すべきは、2nm以下の効率的な製造には単一露光で8nmの解像度をサポートするリソグラフィーツールが必要とされており、これはHigh-NA EUVツールのみが達成可能とされる点だ。しかし、各High-NA EUVシステムのコストは3億5000万ドル(約500億円)にものぼり、新規参入者や研究者が個別に入手することは事実上不可能であった。

研究開発の焦点となる分野は、2nm以下のプロセス技術に加え、シリコンフォトニクス、メモリ、先進パッケージングも含まれる。これらの技術は、多様な市場における将来の半導体ベースのAIアプリケーションのためのフルスタックイノベーションを提供する。

ImecのNanoICパイロットラインと資金源

これらの先端装置はImecの最先端パイロットラインに設置され、EUおよびフランダース政府が資金提供するNanoICパイロットラインに組み込まれる。これにより、国際的な半導体エコシステムに2nm以下の研究開発のための最先端インフラが提供される。

NanoICプロジェクトは2024年5月に初めて発表され、EU資金プログラムから約14億ユーロ(15億ドル、約2100億円)の公的投資と、ASMLを含む民間企業から11億ユーロ(12億ドル、約1700億円)の追加投資を受けている。

パートナーシップへのASMLの投資はChips Joint Undertaking(EUのチップ関連組織)とフランダース政府(EUチップ法NanoICパイロットライン実現のため)、およびオランダ政府(共通欧州利益のための重要プロジェクト(IPCEI)として)から提供される資金によって補完される。

NanoICパイロットラインの取得と運用は、EUのDigital EuropeおよびHorizon Europeプログラムを通じたChips Joint Undertaking、ならびにベルギー(フランダース)、フランス、ドイツ、フィンランド、アイルランド、ルーマニアなどの参加国が共同で資金を提供している。

特に、Imecでの0.55 NA技術(High-NA EUV)の利用可能性は、オランダ政府がIPCEIとして資金提供するNext Gen-7Aプロジェクトの一部だった。

ASMLとimecの協力関係の進化と重要性

これまでASMLとImecの研究者は主にオランダのフェルトホーフェン(ASMLの本社がある都市)にあるASMLの専用研究施設でHigh-NA(0.55 NA EUV)ツールを使用していた。今回の新たな協定により、Imecはベルギーのルーヴェンにある自前の研究ラインでこの最先端装置に直接アクセスできるようになる。これは、imecの研究者が自前の施設で直接High-NA EUV技術を使用できるようになる初めての機会であり、研究作業の加速が期待される。

ASMLとImecはフェルトホーフェンに共同ラボを運営しており、2024年6月、両社はこのラボを顧客に開放する計画を発表した。この施設では、9.5nmの密集金属線(19ナノメートルピッチに相当)を持つロジックチップの回路パターンの印刷に成功するなど、いくつかのチップ製造の画期的成果を達成している。

また、新たな協力分野として、環境的・社会的利益をもたらすImecの研究活動や革新的なアイデアに資金提供する重要な取り組みも含まれている。これは、Imecが持続可能なイノベーションに強いフォーカスを持っていることから、パートナーシップに明示的に含めることが大きな付加価値だと評価されている。

今後、論理チップ向けの次世代2nm以下ノードの共同開発に加え、ASMLとimecはDRAMプロセス技術、シリコンフォトニクス、先進パッケージングソリューションでも協力する予定だ。

この提携は欧州の半導体研究と持続可能なイノベーションを支援するための重要なステップであり、特にAI駆動の技術的進歩に対応するための研究開発基盤を強化するものといえる。ASMLとImecという半導体分野のリーディングカンパニーの協力関係がさらに深まることで、欧州の半導体エコシステム全体が恩恵を受けることが期待される。


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