中国企業による半導体製造装置の購入額は、2025年には減少に転じる見通しだ。米国の制裁強化と成熟プロセスにおける過剰生産能力が主な要因として挙げられる。TechInsightsなどの調査会社は、中国の設備投資額が前年比6%減の380億ドルに落ち込むと予測している。
中国の半導体製造装置購入額、減少の見通し
カナダの半導体調査会社TechInsightsによると、中国企業は過去数年間、半導体製造装置の最大の買い手だった。しかし、2024年の購入額は410億ドルと世界全体の40%を占めたが、2025年には380億ドルへと減少する見込みだという。これは、前年比で6%の減少となり、世界全体の購入額に占める割合も20%に低下する。2021年以来の減少だ。
TechInsightsのシニア半導体製造アナリスト、Boris Metodiev氏は、「輸出規制と過剰生産能力により、中国の支出はいくらか減速するだろう」と指摘している。
米国による制裁強化と過剰生産能力
中国の半導体製造装置購入額減少の背景には、米国の制裁強化と成熟プロセスにおける過剰生産能力がある。
米国は、中国の軍事用AI開発を阻止する目的で、先端半導体製造技術へのアクセスを制限する一連の制裁措置を講じてきた。この影響で、中国企業は先端プロセス向けの装置調達が困難になっている。
一方、成熟プロセスにおいては、中国企業は生産能力を大幅に拡大してきた。しかし、SMIC(中芯国際集成電路製造)が指摘するように、成熟プロセスチップの供給過剰リスクが高まっている。
中国国内メーカーの台頭と課題
米国の制裁を受け、中国国内の半導体製造装置メーカーは、技術力向上とシェア拡大に注力している。Naura Technology Group(北方華創科技集団)やAMEC(中微半導体設備)といった企業は、エッチング装置やCVD装置の分野で存在感を高めている。Nauraは現在、売上高で世界第7位の装置メーカーとなっている。
しかし、中国は依然としてリソグラフィ装置の分野で大きな課題を抱えている。オランダのASMLが市場を独占しており、中国国内メーカーの技術力はまだ追いついていない。また、テスト装置やアセンブリ装置の分野でも、国内企業の供給割合は低いままだ。TechInsightsによると、2023年に中国国内企業が供給したテストツールは17%、アセンブリ装置はわずか10%にとどまる。
今後の展望
TechInsightsは、中国の半導体製造装置購入額は2025年に減少するものの、依然として世界最大の市場であり続けると予測している。成熟プロセスに特化したファブの建設が急速に進んでおり、これらのファブが稼働すれば、ディスプレイ駆動IC(DDIC)や電源管理IC(PMIC)などの単純なチップの供給過剰を招き、他地域の企業に打撃を与える可能性もある。
とはいえ、中国の半導体製造装置購入額は、2025年に一時的な減少が見込まれるものの、中長期的には再び増加に転じる可能性が高い。米国の制裁は、中国の技術的自立を促す要因となっており、国内装置メーカーの技術力向上とシェア拡大が進むと予想される。ただし、リソグラフィ装置などの分野では、依然として海外メーカーへの依存度が高く、技術的格差を解消するには時間がかかるだろう。成熟プロセスにおける過剰生産能力は、短期的には市場の混乱を招く可能性があるが、長期的には中国の半導体産業の競争力強化につながる可能性がある。
Sources
- Reuters: China’s purchases of chipmaking equipment to decline in 2025, consultancy says
- TechInsights: China’s Chipmakers
- 工商時報
- 大紀元
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