人工知能(AI)の分野で注目を集めるスタートアップ、Contextual AIが8000万ドル(117億円)のシリーズA資金調達を完了した。この資金を活用し、同社は革新的なRAG(Retrieval Augmented Generation)2.0技術を用いたAIプラットフォームの商業化を加速させる。
RAG 2.0の応用範囲に高い投資効果を見出した
Contextual AIは、2023年に元Hugging FaceとMeta(旧Facebook)の研究者であるDouwe Kiela氏(現CEO)とAmanpreet Singh氏によって設立された。同社の核となる技術は、RAG 2.0と呼ばれる手法で、これは従来のRAG技術を進化させたものである。
RAG(Retrieval-Augmented Generation)は2020年にMeta(当時はFacebook)の研究チームによって開発された技術で、大規模言語モデル(LLM)が外部データソースから情報を取り込むことを可能にし、回答精度を向上させる技術だ。日本では、「検索拡張生成」と呼ばれたりもする。Contextual AIのRAG 2.0は、この技術をさらに改良し、AIアプリケーションがユーザーの質問により正確に答えられるようにしたものだ。
今回の資金調達ラウンドは、既存投資家のGreycroftがリードし、Bain Capital Ventures、Lightspeed、Lip-Bu Tan、Conviction/Sarah Guo、Recall Capitalなどが参加した。さらに、Bezos Expeditions、NVentures(Nvidia)、HSBC Ventures、Snowflake Venturesなどの新規投資家も加わった。
Contextual AIの技術は、すでにQualcommやHSBCなどの大手企業で採用されている。Qualcommのカスタマーエンジニアリング部門副社長であるYogi Chiniga氏は、「Contextual AIのRAG 2.0技術、深い専門知識、そして実証済みの結果により、生成AIを活用して我々のチームをサポートし、顧客が効率的に製品を設計・開発できるよう支援し、パフォーマンスと品質の新しい基準を設定できると確信しています」とコメントしている。
Contextual AIのプラットフォームの最大の特徴は、RAGシステムの三大コンポーネント、すなわちLLM、リトリーバー、埋め込みモデルを単一の最適化されたバンドルとして提供することにある。これにより、従来は複数の提供元から個別のコンポーネントを組み合わせる必要があったRAGアプリケーションの開発プロセスが大幅に簡略化され、わずか数分で完了できるようになるという。この革新的なアプローチにより、企業は開発時間とコストを劇的に削減できる可能性が開かれた。
さらに、Contextual AIは自社開発の言語モデルについて、OpenAIのGPT-4や他の最先端オープンソースモデルを大きく上回るパフォーマンスを示したと主張している。同社は、外部データソースからの情報を基に質問に正確に答える能力を比較する内部テストを実施し、その結果、自社モデルが他を凌駕したとしている。
Contextual AIの技術の応用範囲は非常に広い。技術サポートから投資調査、情報発見まで、幅広い用途をカバーしている。特に、同社は専門的なタスクを行う高度な知識労働者の能力を強化することに焦点を当てており、高い投資対効果が期待できる分野でのAI活用を推進している。
今回の資金調達により、Contextual AIは自社プラットフォームの市場投入を加速させる計画だ。具体的なリリース日はまだ設定されていないものの、今後、顧客獲得の取り組みを本格化させていくとしている。同社のプラットフォームは、マネージドクラウドサービスとして提供されるほか、オンプレミス環境で動作するスタンドアロンアプリケーションとしても提供される予定だ。
Source
コメント