Intelファンのゲーマーにとって悲しい話題だが、同社の次世代プロセッサ「Beast Lake」の開発が中止された可能性が報じられている。あまり知られていないこのプロセッサは、高性能ゲーミングチップとして一部のエンスージアストやハードコアゲーマーから大きな期待を集めていたが、Beast Lakeの開発中止は、Intelの今後の製品戦略に重大な影響を及ぼす可能性がありそうだ。
Royal Coreプロジェクトも大幅に見直しへ
Beast Lakeプロセッサは、Intelの野心的な「Royal Core」プロジェクトの集大成として位置付けられていた。このプロジェクトは、AMDのZenアーキテクチャを手掛けたことで知られる Jim Keller氏(現Tenstorrent創業者兼CEO)が主導し、Intelの次世代プロセッサ技術の基盤となることが期待されていた。
YouTubeチャンネル「Moore’s Law is Dead (MLID)」が最初に報じたBeast Lake情報によると、このプロセッサは革新的な設計を採用していた。具体的には、4つの「超大型」高性能コアと32の効率コアを組み合わせた36コア構成が予定されており、この独特な構成により、ゲーミング性能において画期的な向上が見込まれていた。特に、単一コア性能においては、ゲーム分野で比類なき性能を誇るAMDのX3Dプロセッサを上回ることが期待され、ゲーミング市場でIntelの優位性を確立する切り札となる可能性があった。
Royal Coreプロジェクトでは、Beast Lake以外にも複数の革新的な技術が開発されていた。例えば、レンタブルユニット、4ウェイハイパースレッディング、状況に応じてパフォーマンスコア(Pコア)や効率コア(Eコア)として機能するCPUタイルなどが含まれていた。これらの技術は、Intelのプロセッサ性能を大幅に向上させ、特にAppleのM系列SoCに対抗する切り札になると期待されていた。
しかし、MLIDの最新の報告によれば、IntelはBeast Lakeの開発を中止し、Royal Coreプロジェクトの要素技術を異なるCPUライン向けに分散させる方針に転換したという。例えば、レンタブルユニット技術は今後のNova Lake世代に組み込まれる可能性が示唆されている。この決定により、Royal Coreプロジェクトの全ての技術を1つのアーキテクチャに統合するという当初の構想は実現しない見込みとなった。
この開発中止の決定は、Intelが現在直面している複数の課題と関連している可能性がある。特に、プロセッサの安定性に関する懸念や、次世代Arrow Lakeの販売に対する消費者の信頼低下といった問題が指摘されている。これらの要因が、Intelの長期的な製品戦略の見直しにつながった可能性が高い。
Beast Lakeの開発中止は、Intelの競争力にも影響を与える可能性がある。特に、AMDのRyzen 9000 X3Dチップとの競争が予想されるArrow Lake世代において、Intelがどのように技術的優位性を確保するかが注目される。Beast Lakeで予定されていた革新的な技術の一部が、Arrow Lakeやその後継モデルに部分的に採用される可能性はあるが、全体的な性能向上の度合いは不透明だ。
なお、これらの情報はあくまでリークや噂に基づくものであり、Intelからの公式発表はまだない。Arrow LakeやLunar Lakeなど、既に発表済みの次世代プロセッサの開発は予定通り進行していると見られる。しかし、Beast Lake以降の長期的な製品戦略については、大幅な見直しが行われている可能性が高そうだ。
Source
- Moore’s Law is Dead (YouTube): Intel Beast Lake CANCELLED Leak, AMD Earnings Analysis, Ryzen 9000 Supply, PS5 Pro | July Loose Ends
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