Intelの次世代チップ製造技術である18Aプロセスが、重要な顧客であるBroadcomのテストで期待通りの結果を出せなかったことが明らかになった。この事態は、Intelの野心的な半導体製造事業の復活計画に影響を与える可能性がある。
Broadcomのテスト結果が示す18Aプロセスの課題
Reutersの報道によると、IntelがBroadcomに提供した18A(1.8nmクラス)プロセス技術を用いたテストウェハーの評価結果が芳しくなかったという。Broadcomのエンジニアと幹部は、この製造ノードが「まだ大量生産に移行できる状態ではない」と判断したとされている。
この結果は、Intelが2030年までに世界第2位の受託チップメーカーになるという目標に対して大きな障害となる可能性がある。Intelは18Aプロセスを用いて、台湾のTSMCを製造プロセスの進歩で追い抜くことを目指していた。
しかし、状況はそれほど劇的ではないかもしれない。Intelの広報担当者はReutersに対し、Broadcomの評価はまだ進行中であり、最終的な結論には至っていないと述べている。さらに、Intelは18Aプロセスの開発が順調に進んでいると主張している。
Intel CEOのPat Gelsinger氏は、Deutsche Bankの2024年テクノロジーカンファレンスで次のように述べた。「この製造プロセスの欠陥密度が現在0.4d0以下になっていることを報告できて嬉しいです。これは健全なプロセスです」。
一般的に、1平方センチメートルあたり0.5個未満の欠陥密度は良好な結果とされている。Intelの18Aプロセスの0.4という数値は、開発段階を考慮すると妥当な結果と言える。ただし、TSMCのN7およびN5技術は同様の開発段階で0.33の欠陥密度を達成しており、N5が量産に入った時点では0.1にまで低下している。
Intelのファウンドリ事業戦略への影響
Broadcomは通信機器用チップの主要サプライヤーであり、世界有数の受託チップ設計企業でもある。GoogleのTPU AIプロセッサを開発し、OpenAI向けのAIプロセッサの開発も噂されている。このため、BroadcomはTSMCにとって特に重要な顧客であり、Intelなどのファウンドリにとっても望ましいクライアントである。
しかし、Broadcomに適切にサービスを提供するには多くの課題がある。今年初め、Broadcomは当時世界最大のプロセッサとされるXPUを発表した。このXPUは、6つのHBM3メモリスタックを持つ2つの巨大なコンピューティングチップレット(858mm2、26mm x 33mm)で構成されている。比較として、NVIDIAのB200 GPUは2つの巨大なコンピューティングチップレットと8つのHBM3Eスタックで構成されている。
このサイズのチップレットを作ることは大きな成果であり、良好な歩留まりを達成することはさらなるマイルストーンである。BroadcomとNVIDIAのファウンドリパートナーであるTSMCはこれに成功している。つまり、IntelがBroadcomに18Aプロセス技術でサービスを提供するには、同様のスケールのチップレットを良好な歩留まりで製造できる必要がある。
競合他社との技術競争の現状
IntelのライバルであるTSMCは、2025年に2ナノメートル(2nm)チップの生産を目指している。2nmは20Aに相当し、Intelが2025年に18Aの量産を成功させれば、AIチップが世界で最も需要の高い製品の1つとなっているまさにそのタイミングで、台湾のライバルに対して重要な優位性を得られる可能性がある。
しかし、Intelは最近厳しい状況に直面している。2024年第2四半期に16億ドルの損失を計上し、15,000人以上の従業員に影響を与える人員削減を発表した。さらに、第13世代および第14世代CPUに広範な問題が発生している。
Intelの今後の展望については不透明な部分が多い。Reutersの報道によると、Intel CEO のPat Gelsinger氏は近々、企業の支出を見直し、不要な資産を削減する計画を提案する予定だという。また、プログラマブルロジックデバイスを製造するIntel傘下のAlteraの売却を検討しているほか、ドイツの半導体工場建設計画を一時中断する可能性もある。Intelはすでにオハイオ州に計画していた200億ドル規模の工場建設を延期している。
Intelが2025年にBroadcomの要求する大規模チップの欠陥と歩留まりの要件を18Aプロセスで満たせるかどうかは未だ不明だが、現時点ではBroadcomは満足していないようだ。Intelの半導体製造技術の復活と、世界第2位の受託チップメーカーになるという野心的な目標の達成には、まだ多くの課題が残されている。
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