米国の半導体大手Intelと日本の国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)が、先端半導体の研究開発センターを日本国内に設立する計画を明らかにした。この新施設は、最先端の半導体製造技術の開発を目指すものであり、日本の半導体産業の競争力強化に大きく貢献すると期待されている。
最先端技術で日本の半導体産業を牽引
新研究開発センターは、3〜5年以内の稼働を目指しており、極端紫外線(EUV)リソグラフィを用いたプロセス技術に焦点を当てる予定だ。EUV技術は、5nm(ナノメートル)以下のスケールでの半導体製造に不可欠であり、より高性能なチップの生産を可能にする。
投資規模は数百億円に上ると見られており、その大部分はEUV装置の導入に充てられる。1台あたり約2億ドルという高額な装置を、日本国内の研究機関が保有することの意義は大きい。この施設では、AISTとIntelだけでなく、日本の半導体関連企業も利用料を払って最先端の装置を使用し、プロトタイプの製作やテストを行うことができるようになる。
これにより、日本の半導体設計企業がEUVを用いた最新のプロセス技術を採用しやすくなり、国際的な競争力の向上につながると期待されている。現在、多くの日本企業はベルギーのIMECなど海外の研究センターに依存してEUV装置を利用しているが、国内に施設ができることで開発プロセスの迅速化と効率化が図れる。
この新たな研究開発センターの設立は、日本の半導体産業全体に大きな影響を与えると予想される。日本はすでに半導体製造装置や材料分野で世界をリードする企業を有しており、例えばレーザーテックはEUV関連検査装置で100%のシェアを持ち、JSRは回路形成に使用される感光材料で強みを持っている。
Intelは、この研究センターを通じてこれらの日本企業との関係を深め、自社の技術力を強化すると同時に、日本の半導体サプライチェーンにおける地位も強化することを目指している。また、日本に拠点を置くTSMCや新興企業Rapidusといった競合他社に対して、顧客関係や優れたツール、原材料の確保などの戦略的優位性を与えないようにする狙いもあると見られている。
国際的な観点からも、この米国企業と日本のAISTの共同R&Dセンターの設立は重要な意味を持つ。米中間の緊張が高まる中、アメリカは中国へのEUV関連技術の輸出規制を強化しており、研究データを日本に持ち帰るプロセスも複雑化している。国内にEUV施設を持つことで、日本はこれらの課題を回避し、半導体開発におけるセキュリティと効率性を高めることができる。
さらに、この研究センターは半導体製造の600以上におよぶ工程に関連する装置や材料の開発にも貢献すると期待されている。EUV装置の製造はオランダのASML Holdingが独占しているが、チップ生産には多様な技術が必要であり、日本企業の強みを活かした技術革新が進む可能性が高い。
この共同研究開発センターの設立は、日本の半導体産業の競争力強化だけでなく、国際的な半導体サプライチェーンにおける日本の地位向上にも寄与すると考えられる。今後の技術開発や産業への影響が注目される。
Sources
- 日本経済新聞: インテル・産総研が日本に開発拠点 最先端の半導体素材
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