Intel次世代のミッドレンジGPU「Arc B580」がGeekbenchのベンチマークデータベースに登場した。Xe2アーキテクチャを採用する新型GPUは、12GBのVRAMと2.85GHzの最大クロックを特徴としており、発売が間近に迫っていることを示唆している。
明らかになったIntel Arc B580仕様の詳細
新たにGeekbenchに登場したArc B580は、Intelの第2世代GPUアーキテクチャ「Xe2」を採用している。これによると、Arc B580は20個のXe2コアを搭載しているようだ。各Xe2コアはコンピュートユニットであるXe Vector Engine(XVE)を8個内包し、さらに各XVEは16個のALU(演算ユニット)で構成されている。つまり、総ALU数は2,560基となる。前世代のArc A580が24コア、3,072 ALUを搭載していたことを考えると、コア数では若干の減少となるものの、アーキテクチャの刷新による性能向上が期待できる。
メモリ構成に目を向けると、12GBのGDDR6 VRAMを192ビットメモリバス幅で接続している。VRAMの容量は前モデルから4GB増加しており、特に1080p解像度でのゲーミングにおいて有利に働くと考えられる。メモリバス幅は若干狭くなっているものの、大容量化による恩恵のほうが大きいとIntelは判断したようだ。
クロック周波数は大幅な向上を見せている。最大ブーストクロックは2.85GHzに達し、前世代のA580と比較して42.5%の高速化を実現した。この高クロック化により、理論演算性能は14.6TFLOPSを記録。A580の10.4TFLOPSから約40%の性能向上を達成している。なお、ASRockのカスタムモデルでは、さらに高いクロック周波数が実現される可能性も示唆されている。同社は既にSteel LegendシリーズとChallengerシリーズの2モデルを準備しており、前者は8ピン電源コネクタを2基搭載したトリプルファンデザイン、後者は8ピン電源コネクタを1基搭載したデュアルファンデザインとなっている。
このGPUのテストは、Intel Core Ultra 9 285KプロセッサとGigabyte Z890 AORUS Masterマザーボードを組み合わせた構成で実施された。32GBのDDR5-6400メモリを搭載しており、最新のプラットフォームで性能を引き出せるよう最適化が施されていることが窺える。
実際のArc B580ベンチマークテストの結果
実際のベンチマークテストの結果だが、Geekbenchで実施されたOpenCLベンチマークにおいて、Arc B580は78,743ポイントを記録した。この数値は一見すると前世代のArc A580を下回る結果となっているが、この評価を額面通りに受け取るのは早計だろう。OpenCLは比較的古いAPIであり、Battlemageアーキテクチャは最新のDirectX 12 UltimateやVulkanといった現代的なグラフィックスAPIに最適化されているためだ。同様の傾向はIntelの統合GPUでも確認されており、Core Ultra 7 155H(Meteor Lake)がCore Ultra 7 258V(Lunar Lake)と比較して、同一Xeコア数でありながらOpenCLテストで20%高いスコアを記録している事実は、この解釈を裏付けている。
製造に関してBattlemageはTSMCの4nmプロセスを採用する見込みだ。これはIntelにとって重要な戦略的決定となる。自社製造ではなくTSMCに製造を委託することで、安定した製造能力と高い歩留まりを確保できる一方で、製造コストの上昇は避けられない。この製造コストの増加は、最終的な小売価格に影響を及ぼす可能性が高い。市場では200-250ドル帯での価格設定が予想されているが、この価格帯で十分な利益を確保できるかが課題となるだろう。
市場投入時期については、複数の情報源が2024年12月から2025年1月にかけての発売を示唆している。特に1月に開催されるCES 2025は、正式発表の有力な機会として注目されている。ただし、初期の供給はArc B580に限定される可能性が高く、高性能モデルとなるBMG-31ベースのArc B770は後日の投入になると見られている。これはNVIDIAのBlackwell RTX 5000シリーズやAMDのRDNA 4 RX 8000シリーズに先んじての市場投入を狙った戦略的な判断と考えられる。
販売パートナーの動きも活発化している。ASRockは既にArc B580のカスタムモデルをAmazonに一時的にリスト掲載しており、複数のAIBパートナーが製品の準備を進めていることが確認されている。これは、発売時期が近づいていることを示す重要な指標となっている。しかし、初期の供給量については慎重な見方も存在しており、市場への浸透には一定の時間を要する可能性があるだろう。
Xenospectrum’s Take
Intelは着実にディスクリートGPU市場での地位を確立しつつある。Battlemageの仕様を見る限り、1080p解像度でのゲーミングに焦点を当てた戦略を継続する意図が読み取れる。しかし、TSMCの4nmプロセス採用は両刃の剣となる可能性がある。製造コストの上昇は利益率を圧迫し、競争力のある価格設定を困難にするかもしれない。年明けのCES 2024での正式発表が予想されるが、NVIDIAのRTX 5000シリーズやAMDのRDNA 4との競争を考えると、価格戦略が成功の鍵を握るだろう。皮肉なことに、ハイエンド市場への参入を避けることが、現時点でのIntelにとって最も賢明な選択かもしれない。
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