Intelの次世代CPU、Core Ultra 200シリーズ(開発コードネーム:Arrow Lake)の詳細仕様が明らかになった。複数の情報筋によると、この新シリーズは2024年10月24日に発売される予定で、初回は5つのSKU(Stock Keeping Unit)がラインナップされる。最上位モデルとなるCore Ultra 9 285Kは、最大24コアと5.7GHzのブーストクロック周波数を実現し、高性能CPUの新たな基準を打ち立てる可能性がある。
Intel Core Ultra 200シリーズの概要と主要スペック
Core Ultra 200シリーズの最初のバッチには、以下の5つのモデルが含まれる:
- Core Ultra 9 285K
- Core Ultra 7 265K
- Core Ultra 7 265KF
- Core Ultra 5 245K
- Core Ultra 5 245KF
これらのCPUは、IntelのLion Cove(Pコア)とSkymont(Eコア)アーキテクチャを採用し、TSMCの3nmプロセスノードを使用している。注目すべきは、KFモデルがCore Ultra 9には存在せず、Core Ultra 7とCore Ultra 5にのみ用意されている点だ。
フラッグシップモデルとなるCore Ultra 9 285Kは、8つのPコアと16のEコアを搭載し、合計24コア/24スレッドの構成となる。L3キャッシュは36MB、L2キャッシュは40MBを備え、合計76MBの大容量キャッシュを実現している。最大ブースト周波数は5.7GHzに達し、基本TDPは125W、最大ターボブースト電力は250Wとされている。
Intel Thermal Velocity Boost(TVB)テクノロジーにより、特定の条件下で5.7GHzまでの高クロックを実現し、Intel Turbo Boost Max Technology 3.0(TBMT 3.0)では5.6GHzまでのブーストが可能となっている。これらの高度な技術により、Core Ultra 9 285Kは極めて高い単一スレッド性能を発揮することが期待される。
Core Ultra 7 265K/KFは、8つのPコアと12のEコアを搭載し、合計20コア/20スレッドの構成となる。L3キャッシュは30MB、L2キャッシュは36MBで、合計66MBのキャッシュを備える。最大ブースト周波数は5.5GHzで、Core Ultra 9 285Kと同様に125Wの基本TDPと250Wの最大ターボブースト電力を持つ。このモデルは、Intel TVBテクノロジーとTBMT 3.0をサポートしており、特定の条件下で5.5GHzまでのブーストが可能となっている。
Core Ultra 5 245K/KFは、6つのPコアと8つのEコアを搭載し、合計14コア/14スレッドの構成となる。L3キャッシュは24MB、L2キャッシュは26MBで、合計50MBのキャッシュを備える。最大ブースト周波数は5.2GHzで、基本TDPは125W、最大ターボブースト電力は159Wとなっている。このモデルではTBMT 3.0はサポートされておらず、Intel TVBテクノロジーによる最大5.2GHzまでのブーストが可能となっている。
現行のRaptor Lake RefreshシリーズのCore i9-14900Kと比較すると、Core Ultra 9 285Kはコア数が同じ24コアを維持しているものの、最大ブースト周波数が300MHz低下している。これは新しいプロセスノードとアーキテクチャへの移行によるものと考えられる。一方で、L2キャッシュは8MB増加しており、総合的なパフォーマンスへの影響が注目される。
Core Ultra 7 265K/KFは、前世代のCore i7-14700K/KFとコア数が同じであるが、L3キャッシュが3MB、L2キャッシュが8MB増加している。Core Ultra 5 245K/KFも、Core i5-14600K/KFとコア数は同じだが、L2キャッシュが6MB増加している。これらのキャッシュ容量の増加は、特定のワークロードでのパフォーマンス向上につながる可能性がある。
Core Ultra 9 285K | Core Ultra 7 265K / KF | Core Ultra 5 245K / KF | |
---|---|---|---|
コア / スレッド | 8+16 / 24 | 8+12 / 24 | 6+8 / 14 |
L3 キャッシュ / 合計 L2 キャッシュ | 36MB / 40MB | 30MB / 36MB | 24MB / 26MB |
ブーストクロック | 5.7GHz帯 | 5.5GHz帯 | 5.2GHz帯 |
ターボブーストマックス(TBMT 3.0) | 5.6GHz帯 | 5.5GHz帯 | なし |
Pコアピークブースト | 5.6GHz帯 | 5.4GHz帯 | 5.2GHz帯 |
E-コア ピークブースト | 4.6GHz帯 | 4.6GHz帯 | 4.6GHz帯 |
Pコアベースクロック | 3.7GHz帯 | 3.9GHz帯 | 4.2GHz帯 |
E-コアベースクロック | 3.2GHz帯 | 3.3GHz帯 | 3.6GHz帯 |
CPU ベースパワー | 125W | 125W | 125W |
最大出力 | 250W | 250W | 159W |
注目すべき点として、Core Ultra 200シリーズでは、KモデルにXe-LPGベースの統合グラフィックスが搭載される一方、KFモデルではディスプレイ出力のために個別のGPUが必要となる。この違いは、ユーザーの用途や予算に応じた選択肢を提供することになる。
また、これらのCPUは、第13世代および第14世代のラインナップと比較して、実際の消費電力が低くなると予想されている。新しいアーキテクチャの採用により、性能あたりの電力効率が向上している可能性が高く、これは特にデスクトップPCのユーザーにとって魅力的な特徴となるだろう。
さらに、Intel Z890チップセットを搭載した新しいマザーボードとともに発売されることが報告されている。これらのマザーボードは、メモリ構成に大きな変更をもたらすとされており、特にASRock Z890 Taichiマザーボードのリーク情報では、新しいメモリ技術のサポートが示唆されている。
Xenospectrum’s Take
AMDのZen 5 Ryzen 9000シリーズが期待外れに終わったことから、Intel Core Ultra 200シリーズに注目が集まっているが、今回の詳細仕様リークから、苦境のIntelにとってこのデスクトップCPUは大きな助けになるかも知れない、その性能が垣間見える。特に注目すべきは、最大24コアという高い並列処理能力と5.7GHzという高いクロック周波数の両立だ。これは、マルチタスク処理や高負荷のクリエイティブワークにおいて、大きなパフォーマンス向上をもたらす可能性があるだろう。
一方で、前世代と比較して最大クロック周波数が若干低下している点は気になるところだ。しかし、新しいアーキテクチャとプロセスノードの採用により、クロックあたりの性能(IPC)が向上している可能性も高い。また、キャッシュ容量の増加は、特定のワークロードでの性能向上に寄与するだろう。
消費電力の低減も大きなポイントだ。高性能と省電力の両立は、デスクトップPC市場において重要な要素となっている。特に、電力効率の向上は、静音性や冷却性能の面でも利点をもたらす可能性がある。
ただし、ハイパースレッディングを廃止したことが、Intelの主張と裏腹に、マルチコアに有利なワークロードでどのような変化をもたらすのかも気になるところだ。
総じて、Intel Core Ultra 200シリーズは、高性能デスクトップCPU市場において、AMDとの競争をさらに激化させる製品ラインナップとなりそうだ。実際の製品発表と独立したベンチマークテストの結果が待たれるところだ。
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