Intelが満を持して送り出す新世代CPU、Core Ultra 9 285Kの姿が徐々に明らかになってきた。Arrow Lake世代の旗艦モデルとして注目を集めるこのプロセッサは、果たしてどれほどの実力を秘めているのだろうか。
Core Ultra 9 285Kベンチマークテスト結果:期待を裏切らない性能
Core Ultra 9 285Kは、8個のPコア(Lion Cove)と16個のEコア(Skymont)を組み合わせた24コア構成を採用している。これは前世代のRaptor Lake RefreshのCore i9-14900Kが持つ32スレッドには及ばないものの、総キャッシュ量は76MB(L2キャッシュ40MB + L3キャッシュ36MB)と、前モデルと同等の大容量を確保している。
Core Ultra 9 285Kの実力は、果たして噂通りなのか。各種ベンチマークテストの結果を詳細に分析してみよう。
まず、CPU-Zのベンチマークでは、シングルスレッド性能において909ポイント(5.4GHz時)と889ポイント(5.3GHz時)を記録した。これは直接の前身であるCore i9-14900Kをわずかに下回る結果だ。しかし、注目すべきはマルチスレッド性能だ。18,964ポイントという驚異的なスコアを叩き出し、競合他社のプロセッサを大きく引き離している。
Blenderベンチマークにおいても、Core Ultra 9 285Kは557.46ポイントを記録。これはCore i9-14900Kの475.97ポイントを大きく上回る結果だ。ただし、AMDのRyzen 9 9950Xの598.7ポイントには及ばなかった。
興味深いのは、Core Ultra 9 285Kが24スレッドという、競合の32スレッドに比べて少ないスレッド数でこの性能を発揮している点だ。これは、Intelの新アーキテクチャが単純なコア数の増加ではなく、効率的な演算処理を実現していることを示唆している。
一方で、ゲーミング性能に関しては若干の懸念も。Uncore(リングバス)クロックが3790.9MHzと報告されており、これはCore i9-14900Kより約700MHz低い。この点が、ゲーミング性能の向上を抑制する要因となる可能性がある。
消費電力と熱効率:Arrow Lakeの真骨頂
Core Ultra 9 285Kの真価は、その優れた電力効率と熱制御にある。Intelは今回のArrow Lake世代で、性能向上だけでなく、消費電力の削減と熱対策にも重点を置いたようだ。
最も注目すべきは、250Wの消費電力設定時のパフォーマンスだ。この設定でCinebench R23のマルチスレッドテストを実行したところ、45,563ポイントを記録した。これは、253W以上の電力を消費するCore i9-14900Kの「Performance」モードよりも10%高速で、300W以上を消費するCore i9-14900KSの「Extreme」モードと比べても6%高速という驚異的な結果だ。
さらに興味深いのは、このテスト中のCPU温度だ。ピーク時でも76℃、平均59℃という低温を維持している。これは、100℃以上に達することがあるCore i9-14900KやCore i9-14900KSと比較すると、驚異的な改善と言える。
この結果は、Arrow Lake世代のCPUが前世代と比較して、最大188Wの消費電力削減と17℃の温度低下を実現していることを示している。これは、データセンターやノートPCなど、電力効率が重視される環境での使用を考えると、非常に大きな進歩だ。
また、この優れた電力効率は、オーバークロッカーにとっても朗報かもしれない。低い基本消費電力は、より大きなオーバークロックの余地を意味する。Arrow Lake世代のCPUは、チューニングやアンダーボルティングの新たな遊び場となる可能性を秘めているのだ。
競合製品との比較
Core Ultra 9 285Kの登場は、高性能CPU市場に新たな波紋を投げかけている。では、主要な競合製品と比較して、このCPUはどのような位置づけにあるのだろうか。
まず、直接の競合となるAMDのRyzen 9 9950Xとの比較だ。Blenderベンチマークでは、Core Ultra 9 285Kが566.88ポイントを記録したのに対し、Ryzen 9 9950Xは598.7ポイントを記録している。純粋な演算性能では、AMDのフラッグシップモデルがわずかに上回っている。しかし、消費電力と熱効率を考慮すると、状況は一変する。
Ryzen 9 9950Xが253Wの消費電力モードで動作しているのに対し、Core Ultra 9 285Kは250Wで同等以上の性能を発揮している。さらに、AMDのCPUが200Wでも高い競争力を維持しているのに対し、IntelのCPUは65Wの標準TDPで設計されている点は特筆に値する。これは、Intel側がより広い動作範囲で柔軟な性能調整が可能であることを示唆している。
また、Core i9-14900KやCore i9-14900KSとの世代間比較も興味深い。マルチスレッド性能では、Core Ultra 9 285Kが前世代モデルを10%から15%上回る結果を示している。これは、コア数が減少しているにもかかわらず達成された進歩だ。一方で、シングルスレッド性能では若干の後退が見られる。これは、最大クロック速度が5.7GHzに抑えられていることが一因と考えられる。
市場での位置づけを考えると、Core Ultra 9 285Kは「高効率」と「高性能」の絶妙なバランスを突いた製品と言えるだろう。データセンターやワークステーション、さらには高性能ノートPCなど、従来は「性能か効率か」の二者択一を迫られていた分野に、新たな選択肢を提供する可能性を秘めている。
ゲーミング市場においては、Uncoreクロックの低下が懸念材料となっているものの、overall的な性能向上により、十分な競争力を持つと予想される。特に、電力効率の高さは、小型ゲーミングPCやハイエンドゲーミングノートPCにおいて大きなアドバンテージとなるだろう。
Sources
- CPU-Z Validator: Intel Core Ultra 9 285K @ 5486.69 MHz
- HXL
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