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Microsoft、GDC 2025でDirectX Raytracing 1.2発表:最大2.3倍の性能向上とNeural Rendering対応

Y Kobayashi

2025年3月21日

MicrosoftはGame Developers Conference 2025で、次世代グラフィックス技術「DirectX Raytracing 1.2」を発表した。新たなOpacity MicromapsとShader Execution Reorderingにより最大2.3倍のパフォーマンス向上を実現し、Neural Rendering技術との統合でゲームの視覚表現が革新的に進化する。

DirectX Raytracing 1.2の革新技術と性能向上

DXR 1.2では、レイトレーシングの性能を飛躍的に向上させる2つの革新的な技術が導入される:

  1. Opacity Micromaps(OMM):アルファテストされたジオメトリを大幅に最適化する技術。不透明度データを効率的に管理することでシェーダー呼び出しを削減し、視覚品質を損なうことなくレンダリング効率を向上させる。この技術により、パストレースゲームでは最大2.3倍のパフォーマンス向上が期待できる。
  2. Shader Execution Reordering(SER):シェーダー実行を効率的にグループ化してGPU効率を高め、分岐を削減し、フレームレートを向上させる技術。一部のシナリオでは最大2倍の高速化を実現し、レイトレースタイトルをよりスムーズで没入感のあるものにする。この機能により、将来的にはパストレースゲームの普及が加速すると期待されている。

これらによって、DXR 1.2は複雑なシーンにおいて最大40%のパフォーマンス向上を実現するという。この技術革新は、GDCでRemedyが展示したAlan Wake 2のデモでも披露され、大幅に詳細度が向上したレイトレーシングビジュアルが示された。

NVIDIAはすでにこれらの最先端機能のサポートを表明し、GeForce RTX GPUシリーズ全体でのドライバー対応を約束している。Microsoftは、AMD、Intel、Qualcommなど他のハードウェアベンダーとも連携を進めており、DXR 1.2の幅広い普及を目指している。

PIXの進化とデベロッパーサポート

Microsoftは、DirectXデバッガーおよびプロファイラーであるPIX on Windowsでも、DXR 1.2の発売日からのサポートを含む大幅な更新を発表した。これらの改良により、デベロッパーはより柔軟にPIXをカスタマイズできるようになる:

  1. PIX API Preview:PIXの機能とデータにプログラム的にアクセスするための新API。C++、C#、Pythonで利用可能で、D3D12に似たインターフェースを提供する。プライベートプレビューは2025年4月に開始予定。
  2. Custom Visualizers:過去1年間の発表を基に、バッファ、メッシュ、テクスチャをPIX UI内で表示する際の前例のないカスタマイズ機能を追加。
  3. PIX UXの刷新:2025年4月に予定されている近代化されたユーザーインターフェース。Visual Studioライクなレイアウトエディタシステムなど、PIX UIのカスタマイズ性を高める多くの改良が含まれる。

また、Windows WARP(Advanced Rasterization Platform)の更新も発表された。これはDirectX向けのCPUベースのソフトウェアレンダラーで、互換性のあるGPUがないシステム向けの診断に最適である。更新後のWARPはDX12 Ultimateと完全に互換性を持ち、レイトレーシング、メッシュシェーダー、ワークグラフなどの最新機能をサポートする。

Neural RenderingとCooperative Vectors

GDCのAdvanced Graphics Summitセッションでは、Cooperative Vectorsのサポートに関する詳細も発表された。これは、近日中にShader Model 6.9で導入される新しいプログラミング機能で、ベクトルと行列演算のための強力なハードウェアアクセラレーションを提供する。この技術により、デベロッパーはニューラルレンダリング技術をリアルタイムグラフィックスパイプラインに効率的に統合できるようになる。

Intel、AMD、NVIDIAがステージ上でこの技術の主要なユースケースを紹介した:

  1. Neural Block Texture Compression:メモリ使用量を大幅に削減しながら、優れた視覚的忠実度を維持する技術。Intelによれば、Cooperative Vectorsを活用して高度なニューラル圧縮モデルを強化することで、推論性能が10倍向上したという。
  2. リアルタイムパストレーシング:ニューラルスーパーサンプリングとデノイジングによって強化され、最先端のグラフィックス革新を組み合わせることで、実用的なパフォーマンスレベルで現実的な視覚効果を提供する。
  3. NVIDIA Neural Shading SDK:DirectXをサポートしCooperative Vectorsを活用するSDKをNVIDIAが発表。これにより、デベロッパーはパフォーマンスを犠牲にすることなく、視覚的リアリズムを大幅に向上させるニューラルレンダリング技術を簡単に統合できるようになる。

業界パートナーシップと今後の展開

MicrosoftはAMD、Intel、NVIDIA、Qualcommなどの主要なハードウェアパートナーや、Remedyなどのゲームスタジオと密接に連携して、これらの革新的な技術を開発した。特筆すべきは以下の協力関係だ:

  • AMDのMax Oberbergerは、昨年のGDCで発表されたワークグラフ機能を実際に試し、自身のトークとMicrosoftのプレゼンテーションの両方でデモを共有した。
  • RemedyのCTO、Mika Vehkalaは、OMM、SERの早期フィードバックとパフォーマンス向上の検証において重要な役割を果たし、Alan Wake IIのデモをGDCで披露した。Microsoftはステージ上での協力に感謝の意を表している。
  • すべての主要なハードウェアベンダー(NVIDIA、AMD、Intel)がCooperative VectorsとNeural Renderingの取り組みに参加している。

DXR 1.2、Cooperative Vectors、強化されたPIXツールは、2025年4月下旬に提供されるプレビューAgility SDKで利用可能になる予定である。Microsoftはすべてのデベロッパーに対して、これらの強力な新機能を活用し、次世代ゲームの開発に取り組むことを呼びかけている。


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