Microsoftは2025会計年度(2024年7月-2025年6月)において、AI処理能力を備えたデータセンターの建設に800億ドルを投資する計画を発表した。Brad Smith副会長兼社長によると、この巨額投資の半分以上が米国内で実施される予定である。
投資の詳細と目的
投資の主な目的は、AIモデルの学習(トレーニング)とAI・クラウドベースのアプリケーション展開を可能にするデータセンターの構築にある。Microsoftはすでに2025会計年度第1四半期において、世界全体で200億ドルの設備投資を実施しており、そのうち149億ドルを不動産および設備に充てている。Amy Hood最高財務責任者は、第2四半期にはさらなる投資の増加を予測している。
この大規模投資は、同社が「AI時代の電力」と位置付ける人工知能技術の基盤構築を目指すものである。特に注目すべきは、この投資が単なるインフラ整備にとどまらず、基礎研究から製品開発まで幅広い領域をカバーする包括的なものとなっている点だ。Microsoft Researchを通じた基礎研究への投資と、製品開発における民間投資を組み合わせることで、米国のR&D体制の強みを最大限に活用する戦略を取っている。
また、この投資拡大の背景には、Azure及びその他のクラウドサービスによる収益が前年同期比33%増加しており、そのうち12パーセントポイントがAIサービスによるものという実績がある。この成長を加速させるため、建設業者、鉄鋼メーカー、製造業者、そして電気工事士や配管工を含む組織労働者など、幅広い産業との協力関係を構築している。
グローバル展開と戦略的意義
Microsoftの国際展開戦略は、中国との技術競争を強く意識したものとなっている。同社は今後3年間で14カ国に350億ドル以上を投資し、信頼性の高い安全なAIおよびクラウドデータセンターのインフラを構築する計画を発表している。現在、同社のグローバルインフラは40カ国に及び、特に中国が「一帯一路」構想で重点を置いているグローバルサウス(発展途上国)への展開を強化している。
この戦略的展開において、Microsoftは単独での投資にとどまらず、様々なパートナーシップを構築している。OpenAI、Anthropic、xAIといった企業との協力関係に加え、UAEのソブリンAI企業であるG42とのパートナーシップを通じて、ケニアへのAIインフラ展開も計画している。さらに、BlackRockとMGXと協力し、AIインフラストラクチャーとAIサプライチェーンに最大1000億ドルの追加資金を提供する国際投資ファンドの創設も進めている。
特に注目すべきは、同社のAI技術が米国政府の最高レベルのサイバーセキュリティおよび物理セキュリティ基準を満たしているという点である。これは、プライバシー保護、デジタルセーフティ、その他の責任あるAI利用の観点から、中国製品との差別化を図る重要な要素となっている。また、北米、欧州、アジア太平洋地域の民主主義国家間での規制協力の強化も、この戦略を後押ししている。
Source
- Microsoft: The Golden Opportunity for American AI
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