Intelが年末に配信を開始した新マイクロコード「0x114」が、Arrow Lake-S CPUの性能問題を解決できていない可能性が浮上した。信頼性の高いベンチマークテストでは、むしろパフォーマンスが最大18%低下するという衝撃的な結果が報告されている。
新マイクロコードの配信状況と期待された効果
IntelのArrow Lake-S向け新マイクロコード「0x114」の配信は、主要マザーボードメーカー各社によって年末のタイミングで開始された。ASUSをはじめ、ASRock、Gigabyte、Colorfulといった有力メーカーがZ890シリーズマザーボード向けにBIOSアップデートの提供を始めている。ただし、現時点でこれらのBIOSはベータ版として位置づけられており、一般公開のチャネルでは入手できない状況にある。
この新マイクロコードは、Intelが直面していた深刻な課題に対応することを目的としていた。具体的には、同社のCore Ultra 200Sデスクトップ向けCPUにおいて、公式発表時に示された性能値を大きく下回るパフォーマンスが報告されていたためである。Intelは最近発表した「Field Update」において、この性能低下の原因として、PPM(Performance and Power Management)の構成に関する問題や、APO(Application Optimizer)に関連する課題など、合計5つの根本的な問題を特定したと説明している。
特筆すべきは、Intel中国が実施したメディアブリーフィングでの発表内容である。同社は、これらの根本的な問題に対する解決策を適用することで、合成ベンチマークとゲーミング性能の両方において二桁のパーセンテージでの性能向上が見込めると説明していた。この発表は市場に大きな期待を抱かせることとなった。
しかしながら、このマイクロコードの適用については慎重な姿勢も示されている。Intel自身も、一般消費者向けのシステムでどの程度の性能改善が実現されるかについては、専門家による検証を待つよう助言を出している状況である。これは、過去の経験から、マイクロコードの更新が予期せぬ影響を及ぼす可能性を考慮してのことと考えられる。なお、IntelはCES 2025において、Core Ultra 200Sの性能問題に関する包括的なメディアブリーフィングを予定しており、より詳細な説明が期待されている。
予想に反する性能低下の実態
だが、今回新マイクロコード「0x114」の適用後に実施された検証結果は、Intelが期待した性能向上とは正反対の衝撃的な事態を明らかにした。信頼性の高いベンチマーク分析で知られる@CapFrameXによる詳細な検証では、同社のフラッグシップモデルであるCore Ultra 9 285Kにおいて、深刻なパフォーマンスの低下が確認された。
特に注目すべきは、現代のCPU性能を測る重要な指標となるゲーミング性能での大幅な低下である。代表的なベンチマークタイトルとして使用された『Cyberpunk 2077』では、平均フレームレートが約18%も低下するという憂慮すべき結果が報告された。この数値は、単なる測定誤差や一時的な変動として片付けられるレベルを大きく超えており、システム全体の性能に実質的な影響を及ぼす深刻な低下といえる。
さらに、システムの応答性や全体的なパフォーマンスに直接影響を与えるメモリレイテンシーにおいても、約14%の増加が観測された。メモリレイテンシーの増加は、特にリアルタイム性が求められるアプリケーションやゲームにおいて、ユーザー体験の著しい低下をもたらす可能性がある。
これらの性能低下は、Intelが「Field Update」で特定したとする5つの根本的な問題の解決が、少なくとも現時点では成功していないことを示唆している。特に懸念されるのは、この性能低下が単一のアプリケーションや特定の使用条件下でのみ発生している問題ではなく、システム全体に影響を及ぼす可能性が高いという点である。
@CapFrameXによる検証は、ベンチマーク業界では最も信頼性の高い調査の一つとして認識されているが、Intelはこの結果に対して現時点で公式な見解を示していない。より広範な検証と追加のベンチマークデータの蓄積が必要とされる状況ではあるものの、現時点での検証結果は、Arrow Lake-Sプラットフォームが直面している課題の深刻さを如実に示している。
Xenospectrum’s Take
今回の事態は、Intelのデスクトップ向けCPU開発における深刻な品質管理の問題を浮き彫りにしている。Raptor Lake Refreshでの熱問題に続き、Arrow Lake-Sでもまた重大な性能問題が発生していることは、同社の製品開発プロセスに構造的な問題が存在する可能性を示唆している。
CES 2025で予定されているメディアブリーフィングでの説明が待たれるが、この問題の完全な解決にはさらなる時間を要する可能性が高い。エンドユーザーは、性能低下のリスクを考慮し、当面は0x114マイクロコードの適用を慎重に検討する必要があるだろう。
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