NVIDIAは、CES 2025において次世代のディープラーニングスーパーサンプリング技術「DLSS 4」を発表した。新世代のGeForce RTX 50シリーズGPUと組み合わせることで、従来比最大8倍のフレームレート向上を実現する画期的な技術革新となる。
マルチフレーム生成による劇的な性能向上
DLSS 4の最大の特徴は、新たに導入された「マルチフレーム生成」技術だ。従来のDLSS 3が1フレームにつき1枚の追加フレームを生成していたのに対し、DLSS 4では最大3枚の追加フレームを生成可能となった。この革新により、4K解像度での240FPSのフルレイトレーシングゲームプレイが現実のものとなる。
新しいフレーム生成AIモデルは、従来比で40%高速化され、VRAM使用量も30%削減されている。重要な技術的進歩として、レンダリングされた1フレームから複数フレームを生成する際に、AIモデルを1回だけ実行すれば良くなった点が挙げられる。例えば「Warhammer 40,000: Darktide」では、4K最高設定時に10%のフレームレート向上と400MBのメモリ使用量削減を達成している。
フレーム生成の効率化に加えて、光学フローフィールドの生成も大幅に改善された。従来のハードウェアベースの光学フローに代わり、高効率なAIモデルを採用することで、計算コストを大幅に削減することに成功した。しかしながら、1フレームの生成にはスーパー解像度、レイ再構築、マルチフレーム生成にわたる5つのAIモデルを数ミリ秒以内に実行する必要がある。この要件を満たすため、GeForce RTX 50シリーズGPUには第5世代Tensorコアが搭載され、AI処理性能を最大2.5倍に向上させている。
フレームの生成後、滑らかな体験を実現するために均等なペーシングが適用される。DLSS 3では追加フレームによって不安定になる可能性のあったCPUベースのペーシングに代わり、Blackwellアーキテクチャではハードウェアフリップメータリングを採用。フレームペーシングロジックをディスプレイエンジンに移行することで、GPUがより正確にディスプレイタイミングを管理できるようになった。さらに、Blackwellのディスプレイエンジンはピクセル処理能力が2倍に強化され、DLSS 4でのハードウェアフリップメータリングにおいて、より高い解像度とリフレッシュレートをサポートする。
これらのハードウェアとソフトウェアの革新を組み合わせることで、DLSS 4は16ピクセル中15ピクセルを高品質に生成することが可能となった。その結果、従来のブルートフォースレンダリングと比較して最大8倍、DLSS 3のフレーム生成からの更新でも最大1.7倍のフレームレート向上を実現している。
Transformerモデルの採用による画質向上
DLSS 4は、グラフィックス業界で初めてTransformerアーキテクチャをリアルタイム処理に採用した革新的な技術だ。ChatGPTやGeminiなどの最先端AIモデルで使用される同アーキテクチャを、DLSS Ray Reconstruction、Super Resolution、DLAAのすべての処理に適用することで、画質の大幅な向上を実現している。
従来のDLSSは畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を使用し、局所的なコンテキストの分析と、それらの領域における経時的な変化の追跡によって新しいピクセルを生成していた。NVIDIAによれば、6年間の継続的な改善を経て、このCNNアーキテクチャでは技術的な限界に達していたという。
新たに採用されたVision Transformerは、セルフアテンション操作により、フレーム全体にわたる各ピクセルの相対的な重要性を評価し、さらに複数フレームにわたる分析を可能にする。CNNモデルの2倍のパラメータを採用することでシーンのより深い理解を実現し、その結果、時間的安定性の向上、ゴースティングの低減、モーション時の詳細度向上、エッジの滑らかさ改善といった多面的な画質向上を達成している。
特に集中的なレイトレーシングコンテンツにおいて、新しいTransformerモデルによるRay Reconstructionは大きな画質向上をもたらす。例えば「Alan Wake 2」では、複雑な照明条件下でも高い効果を発揮する。具体的には、細部まで表現されたチェーンリンクフェンスの安定性向上、ファンブレードのゴースティング低減、送電線のちらつき除去などが実現され、三人称視点でのゲームプレイにおける没入感を大幅に向上させている。
Super Resolutionにおいても、Transformerモデルは有望な結果を示している。時間的安定性の向上、ゴースティングの低減、モーション時の詳細表現の向上が確認されており、ベータ版として提供される予定だ。これにより、ユーザーは改善点を実際に体験し、フィードバックを提供できる。
NVIDIAは、この新しいTransformerモデルアーキテクチャにより、過去6年間のCNNアーキテクチャで実現してきたように、今後も継続的な画質向上のための十分な余地が確保されたと説明している。これは、AIベースのグラフィックス技術における新たな時代の幕開けを示唆するものと言えるだろう。
広範なゲームサポート
DLSS 4は、GeForce RTX 50シリーズGPUの発売時点で75のゲームとアプリケーションでマルチフレーム生成をサポートする。「Alan Wake 2」「Cyberpunk 2077」「Indiana Jones and the Great Circle」「Star Wars Outlaws」などの人気タイトルが、RTX 50シリーズGPUのローンチ時にDLSS 4対応アップデートを予定している。
さらに、NVIDIAアプリの新機能「DLSS Override」により、開発者のアップデートを待たずとも、多くのゲームでDLSS 4の機能を利用可能となる。これにより、すべてのGeForce RTXユーザーが新しいTransformerモデルベースのDLSS技術の恩恵を受けられる。
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