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NVIDIA、AI開発者向けデスクトップ型スーパーコンピュータ「DGX Spark」と「DGX Station」を発表

Y Kobayashi

2025年3月19日

NVIDIAは、GTC 2025において、開発者向けの新しいデスクトップ型AIスーパーコンピュータ「DGX Spark」と「DGX Station」を発表した。いずれもNVIDIAの最新Grace Blackwellプラットフォームを搭載し、AIモデルの開発、ファインチューニング、推論をローカル環境で強力にサポートする。

小型ながらパワフルな「DGX Spark」

DGX Spark」は、以前「Project DIGITS」として発表されていた、世界最小のAIスーパーコンピュータと紹介されていたものだ。GB10 Grace Blackwellスーパーチップを搭載し、第5世代TensorコアとFP4をサポートするBlackwell GPUにより、最大1,000兆回/秒のAI演算性能を発揮。NVIDIA Cosmos ReasonやGR00T N1といった最新のAI推論モデルのファインチューニングや推論に最適化されている。

GB10 Grace Blackwellスーパーチップは、NVLink-C2Cインターコネクト技術を採用し、CPUとGPU間でコヒーレントなメモリモデルを実現。第5世代PCIeの5倍の帯域幅を持ち、メモリ負荷の高いAI開発ワークロードのパフォーマンスを向上させている。

これらのシステムはスタンドアロンのデスクトップAIラボとしても、またはDGX Cloudや他のAIクラウドインフラストラクチャへのコード変更が少なく移行できる「ブリッジシステム」としても機能する。

筐体はデスクトップに最適化された小型サイズ。128GBのユニファイドメモリと最大4TBのNVMe SSDストレージを搭載する。Asus、Dell、HP、Lenovoが各社モデルを開発・販売し、NVIDIAのウェブサイトで予約受付が開始されている。出荷は今夏を予定しており、NVIDIAは以前、DGX Sparkに相当するコンピュータの基本構成が約3,000ドルになると発表していた。

データセンター級の性能「DGX Station」

DGX Station」は、NVIDIA GB300 Grace Blackwell Ultraデスクトップスーパーチップを搭載した、初のデスクトップシステムだ。784GBという大容量のコヒーレントメモリを備え、大規模なAIモデルのトレーニングや推論を加速する。

GB300 Grace Blackwell Ultraデスクトップスーパーチップは、最新世代のTensorコアとFP4精度を備えたBlackwell Ultra GPUと、高性能なNVIDIA Grace CPUをNVLink-C2Cで接続。システム全体の通信とパフォーマンスを最大限に引き出す。

さらに、最大800Gb/sのネットワークをサポートするConnectX-8 SuperNICを搭載。複数のDGX Stationを高速接続し、より大規模なワークロードに対応できる。

DGX Stationは、Asus、BOXX、Dell、HP、Lambda、Supermicroなどのパートナー企業から、今年後半に発売される予定だ。

AI開発の新たなスタンダードへ

NVIDIAの創業者兼CEOであるJensen Huang氏は、これらの新製品について、「AIはコンピューティングスタックのあらゆる層を変革した。AIネイティブな開発者向けに設計され、AIネイティブなアプリケーションを実行する、新しいクラスのコンピュータが登場するのは当然のことだ」と述べている。

DGX SparkとDGX Stationは、これまでデータセンターでしか利用できなかったGrace Blackwellアーキテクチャのパワーを、デスクトップにもたらす。AI開発者は、これらのシステムを活用することで、ローカルで大規模なAIモデルを開発し、NVIDIA DGX Cloudやその他のクラウドインフラストラクチャにシームレスに展開できるようになる。

XenoSpectrum’s Take

NVIDIAのDGX SparkとDGX Stationは、AI開発の現場に大きな変革をもたらす可能性を秘めている。これまで、大規模なAIモデルの開発には、高価なデータセンターリソースが必要だった。しかし、これらのデスクトップ型スーパーコンピュータの登場により、開発者は手元のマシンで、より迅速かつ効率的に作業を進められるようになる。

特に注目すべきは、DGX Sparkのコンパクトさと価格帯だ。約3,000ドルという価格設定は、個人や小規模なチームでも導入しやすい。これにより、AI開発の裾野が広がり、新たなイノベーションが生まれることが期待される。

一方、DGX Stationは、より大規模なプロジェクトや、高度な研究開発に取り組む企業や研究機関にとって、強力なツールとなるだろう。784GBものメモリ容量は、これまでデスクトップでは考えられなかった規模であり、AIモデルの複雑化・大規模化に対応できる。

競合のAMDも、Ryzen AI Max+ “Strix Halo”のような、統合メモリを多く搭載したGPUを開発しているが、NVIDIAはDGXシリーズで、AI開発に特化したハードウェアとソフトウェアの統合ソリューションを提供することで、差別化を図っている。

今後、DGX SparkとDGX Stationが、AI開発の現場でどのように活用され、どのような成果を生み出すのか、注目していきたい。


Sources

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