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NVIDIA、最大96GB VRAMのRTX PRO 6000シリーズを発表

Y Kobayashi

2025年3月19日

NVIDIAは、プロフェッショナルユーザー向けの最新GPU「RTX PRO 6000 Blackwell」シリーズを発表した。最上位モデルは最大96GBのGDDR7メモリと24,064 CUDAコアを搭載し、AIワークロード、ゲーム開発、3Dデザインなどの高負荷タスクに対応する。4月から出荷が開始され、Dell、HP、Lenovoなどの主要メーカーからは5月に製品が登場する予定だ。

圧倒的なスペックを誇るプロフェッショナル向けGPU

NVIDIAの新しいRTX PRO 6000 Blackwellシリーズは、同社の最新「Blackwell」グラフィックスアーキテクチャを採用したプロフェッショナル向けのハイエンドGPUだ。最上位モデルとなるRTX PRO 6000は、GeForce RTX 5090よりも多いCUDAコアを搭載し、大容量のGDDR7 ECCメモリを駆動するために設計されている。

具体的なスペックとしては、「GB202」シリコンに物理的に存在する192 SMすべてに渡って24,064 CUDAコア、768 Tensorコア、192 RTコア、768 TMU、192 ROPを備えている。これはRTX 5090の21,760コアと比較して約10.5%多いコア数である。理論性能としては、FP32演算性能で125 TFLOPS、AI性能で4000 TOPS、レイトレーシング性能で380 TFLOPSと、RTX 5090より約19%高い数値を誇る。

メモリ構成も特筆すべき点で、512ビット幅のメモリインターフェースを介して96GBのECC GDDR7メモリを搭載している。これはRTX 5090の32GBと比較して3倍の容量だ。メモリ速度は28Gbpsに設定されており、合計帯域幅は1.8TB/sに達する。電力仕様としては、単一の12V-2×6 16ピン電源インターフェースが許容する最大容量である600Wの定格となっている。

クーリングソリューションについては、このような高性能カードを冷却するために多くの工夫がなされており、NVIDIAの熱設計チームはデュアルファンとデュアルスロットクーラーを採用している。

多様なバリエーションで様々な用途に対応

RTX PRO 6000 Blackwellシリーズには、さまざまな用途に対応するために複数のバリエーションが用意されている。

標準のRTX PRO 6000に加えて、RTX PRO 6000 Blackwell Max-Qバージョンも提供される。こちらはブロワースタイルの設計を採用し、ワークステーションセグメントを対象としている。デュアルスロットとブロワーファンを備え、TDPは300Wに抑えられている。

また、サーバー環境向けにはRTX PRO 6000 Server Editionも用意されており、こちらはパッシブクーリングソリューションを使用している。ラックマウントサーバーや大規模なレンダリングファーム向けに最適化された設計となっている。

デスクトップ向けには、RTX PRO 6000に加え、RTX PRO 5000、RTX PRO 4500、RTX PRO 4000も夏頃に登場予定だ。ノートパソコン向けにも、RTX PRO 5000から500までの幅広いラインアップが用意される。ノートPC向けモデルは最大24GBのVRAMを搭載し、NVIDIAの最新Blackwell Max-Q技術をサポートしている。これにより、AIを活用してラップトップのパフォーマンスと電力効率を継続的に最適化できるという。

これらのGPUは主に、AIアプリケーション、ゲーム開発者、大量のビデオメモリを必要とするプロフェッショナルユーザー向けに開発された。96GBのVRAMを搭載したRTX PRO 6000は、AIワークロードの面でAMDのRyzen Strix Haloと競合し、同等に大きなAIモデルをより高速に処理できるとされている。

実性能評価:ベンチマークから見る真の力

理論上の性能で19%の向上を示す一方、実際のベンチマークテストではその差は若干小さくなっている。GameTechBenchによるフルパストレーシング(CGIレンダリング)のベンチマークでは、RTX PRO 6000 Blackwellは4K解像度のパフォーマンスチャートでRTX 5090を5%上回る結果となった。一方、1440p解像度ではRTX 5090をやや下回った。

オフラインのパストレーシングレンダリングモードでは、RTX PRO 6000 BlackwellはRTX 5090より2%速いという結果が出ている。

このように、ペーパースペックでは19%優れているにもかかわらず、実際のパフォーマンス差はそれほど大きくない。これは、このような大規模なハードウェアの活用不足や、最適化の余地があるドライバーの問題が原因かもしれない。しかし、96GBという大容量のVRAMとアップグレードされたスペックは、ワークステーション、プロシューマー、AIエンスージアストにとって魅力的な選択肢となることは間違いないだろう。

特に、大規模なAIモデルやレンダリングプロジェクトを扱うユーザーにとって、メモリ容量の増加は処理速度以上に重要な要素となる場合がある。また、MIG(Multi-Instance-GPU)機能をサポートし、4x 24GB、2x 48GB、または1x 96GBモードで利用可能なため、リソースの柔軟な割り当てが可能となっている。

価格と市場投入時期

高性能と引き換えに、RTX PRO 6000 Blackwellの価格も相応に高く設定されている。具体的な公式価格はまだ発表されていないが、このワークステーション向けの高性能GPUの価格は約1万〜1万5千ドル、あるいはそれ以上になると予想されている。

出荷時期については、NVIDIAはRTX PROシリーズの「Server」GPUは5月に、RTX PRO Workstationバリアントは4月に主要プロバイダーから入手可能になると確認している。PNYやTD Synnexなどの流通パートナーからは4月に入手可能となり、Dell、HP、Lenovoなどのメーカーからは5月から製品が出荷される予定だ。

サーバー版はCisco、Dell、HP、Lenovo、Supermicroから「近日中に」提供される。また、AWS、Google Cloud、Microsoft Azure、CoreWeaveなどのクラウドプロバイダーも今年後半にRTX PRO 6000 Blackwellサーバーを提供する予定だ。

AIへの対応強化:ソフトウェアエコシステムの拡充

ハードウェアの強化だけでなく、NVIDIAはAI開発を加速するための一連のツールも発表している。NVIDIA CUDA-Xライブラリはデータサイエンス向けに設計されており、データ処理と機械学習タスクを大幅に加速するという。コード変更なしでデータ処理、機能エンジニアリング、モデル開発を高速化できるとしている。

また、NVIDIA NIMマイクロサービスにより、開発者はAIアシスタント、生産性プラグイン、高度なコンテンツ作成ワークフローをピークパフォーマンスでよりシームレスに構築できるようになるという。

これらに加え、ChatRTXの最新バージョンではNVIDIA NIMマイクロサービスのサポートが導入され、ユーザーに新しい基盤モデルへのアクセスを提供する。NIMは近日中に他のトップAIエコシステムアプリでも利用可能になる予定だ。

ゲーム関連では、Half-Life 2所有者は現在SteamからRTX Remixで構築されたHalf-Life 2 RTXデモを無料でダウンロードでき、最新のニューラルレンダリング強化機能を備えている。3月のNVIDIA Studio Driverも現在ダウンロード可能で、先週のRTX Remixの発売を含む最近のアプリのアップデートをサポートしている。

このように、NVIDIAはハードウェアとソフトウェアの両面から、AI時代のプロフェッショナルワークフローを支援する包括的なエコシステムを構築している。


Sources

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