OpenAIが開発中と言われる、革新的なAIモデル「Project Strawberry」が今秋にもリリースされるかもしれない。このモデルは、現行のAIシステムでは困難とされる複雑な問題解決能力を持つとされており、AIを新たな段階に引き上げる物と言われている革新的な物だ。
Project Strawberryの与える衝撃と影響
Project Strawberry(以下、Strawberry)は、OpenAI内部で開発が進められている次世代AIモデルである。以前は「Q*」(Qスター)として知られていたこのモデルは、現在のAIモデルを大きく超える能力を持つとされている。
Strawberryの最も注目すべき特徴は、その高度な数学的推論能力である。これまで遭遇したことのない複雑な数学問題を解決する能力を持つとされており、特にMATHベンチマークにおいて90%以上のスコアを達成したという報告がある。MATHベンチマークはチャンピオンシップレベルの数学問題集であり、現行のGPT-4が53%、GPT-4oが76.6%のスコアを記録していることを考えると、Strawberryの能力の高さが際立つ。
さらに、Strawberryは複雑な言語タスクの遂行にも優れているとされる。例えば、New York Timesの単語パズル「Connections」を解くことができたと報告されている。これは、AIが複雑な言語パターンを理解し、創造的に問題を解決できることを示していると言える。加えて、マーケティング戦略の立案など、複雑で創造性を要する業務タスクを実行できる可能性も指摘されている。これらの能力は、AIが単なる情報処理や分析だけでなく、戦略的思考や意思決定支援にも活用できる可能性を示唆する物だ。
こうした高度なAIモデルは、OpenAIがAGI実現に至る目安として既に発表している5段階評価の、現在の最先端モデルの“次のレベル”である、“推論者”になるものと言えるだろう。(現在のGPT-4oはレベル1とされている)
Strawberryの開発は、OpenAIの次世代言語モデル「Orion」(GPT-4の後継)の進化にも貢献するとされている。具体的には、Strawberryを用いて生成された高品質な「合成データ」がOrionの学習に使用される予定である。これにより、AIモデルのトレーニングにおけるインターネット上のデータへの依存度を減らし、より精度の高いAIモデルの開発が期待できる。また、高品質な合成データを用いることで、AIモデルの誤った出力(ハルシネーション)を減少させる効果も期待されている。これは、AIの信頼性と実用性を大きく向上させる可能性がある。
Strawberryの開発経緯は興味深い。OpenAIの元チーフサイエンティストであるIlya Sutskev氏によって始められ、後にJakub Pachocki氏とSzymon Sidor氏によって改良された。この技術的ブレークスルーは、2023年にOpenAI内部で大きな議論を呼び、Sam Altman CEOの一時解任騒動にも関連していたとされる。
The Informationの報道によると、OpenAIはStrawberryの小規模版をチャットボットとして今秋にリリースする計画を立てているという。この小規模版は、元のモデルと同等の性能を維持しつつ、より低コストで運用しやすいものになるとされている。ChatGPTの一部として統合される可能性も示唆されているが、詳細は明らかになっていない。
また、OpenAIはStrawberryの技術を米国の国家安全保障当局者にも披露したとされている。これは、AIの力に脅威を感じている政策立案者に対して透明性を示す取り組みの一環と考えられる。同時に、高度なAI技術がもたらす潜在的なリスクについても議論が続いており、特に人工知能の制御不能や人間の価値観との不一致などの懸念が指摘されている。
Strawberryの開発は、AIの進化における重要な一歩となる可能性がある一方で、AIの倫理的な使用や安全性の確保といった課題にも直面している。OpenAIの今後の動向と、Strawberryが実際にどのような形で世に出るのか、業界関係者のみならず、広く社会の注目を集めている。AIの急速な進化が続く中、Strawberryの登場が人工知能の未来にどのような影響を与えるのか、その行方が注目される。
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