PC用ディスクリートグラフィックボード(GPU)市場において、長年にわたり3強と言われてきたIntel、NVIDIA、AMDの構図が大きく変化した。最新の市場分析レポートによると、Intelが同市場から完全に姿を消し、NVIDIAが圧倒的なシェアを獲得する結果となった。
2024年第2四半期のGPU市場動向とIntelの消滅
市場調査会社Jon Peddie Research(JPR)が発表した2024年第2四半期のレポートによると、PC用グラフィックボードの出荷台数は約950万台に達し、前四半期比で9.4%増、前年同期比で48%増と大幅な成長を記録した。この成長は、業界の10年平均である第2四半期の7.1%減少傾向を覆す驚くべき結果となった。
しかし、この市場拡大の中で最も注目すべき点は、Intelのシェアが完全に消失したことだ。JPRのレポートによると、Intelは2023年に2%のシェアを保持していたものの、2024年初頭にはすでにそのシェアを失っていたという。この結果、PC用ディスクリートGPU市場は事実上、NVIDIAとAMDの2社による寡占状態となった。
市場シェアの内訳を見ると、NVIDIAが圧倒的な88%を占め、残りの12%をAMDが獲得している。NVIDIAは前年の80%から更にシェアを拡大し、市場をほぼ独占する状況となっている。
JPRの代表であるJon Peddie氏は、この状況について次のようにコメントしている。「ディスクリートGPU市場は、何十年も前から衰退を予測されてきましたが、驚くべきことに成長を続けています。第1四半期に一時的な落ち込みがあったものの、その後4四半期連続で成長を遂げています」。
Intelの市場撤退は、同社のディスクリートGPU事業の苦戦を如実に物語っている。しかし、Intelは完全に白旗を上げたわけではない。同社は最新のLunar Lakeモバイルプロセッサに新しいXe2グラフィックスコアを搭載しており、これを基にした次世代ディスクリートGPU「Battlemage」の開発を進めている。当初2023年のデビューを予定していたBattlemageは既に遅延しているものの、2024年の年末商戦を目標に開発が続けられているという。
一方、市場を席巻するNVIDIAは、次世代アーキテクチャ「Blackwell」を採用したGeForce RTX 5000シリーズの発表を2025年1月のCESで行う見込みだ。AMDも同時期にRDNA 4アーキテクチャを採用したRadeon RX 8000シリーズの投入を計画しており、ミッドレンジ市場での競争が激化すると予想されている。
JPRのアナリストC. Robert Dow氏は、NVIDIAとAMDが次世代GPUをリリースするまでは、グラフィックボードの価格は横ばいで推移すると予測している。しかし、Intelが再び市場シェアを獲得できるかどうかは、次世代チップの性能と価格設定次第であり、現状ではかなりの困難が予想される。
Xenospectrum’s Take
Intelのディスクリート GPU市場からの敗退は、同社にとって大きな痛手であると同時に、PC業界全体にとっても重要な転換点となるだろう。長年、CPUとGPUの両方で市場をリードしてきたIntelが、GPU市場でシェアを失ったことは、技術革新の速度と市場の変化の激しさを物語っている。
NVIDIAの圧倒的な市場支配は、同社の技術力と戦略の成功を示すものだが、一方で健全な競争環境の観点からは懸念材料でもある。特にAMDがハイエンドGPUからの撤退を表明したことは、NVIDIAを利することとなり、NVIDIAがハイエンド製品(RTX 5080以上等)の一部で大きく価格を引き上げる原因ともなりかねず、消費者としては歓迎出来ない事態だ。ミドルレンジにおいてはAMDが唯一の競合として残っているものの、その差は歴然としており、今後のバランス回復には相当の努力が必要だろう。
Intelの「Battlemage」の登場が市場に新たな活力をもたらすか、それともNVIDIAの独占がさらに強化されるのか。2024年末から2025年初頭にかけての各社の新製品発表が、PC グラフィックス市場の未来を大きく左右することになりそうだ。
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