AI検索エンジンPerplexityの急成長が明らかになり、懸念されているAIの一つの有用な用途とインターネット検索の未来が示されたかも知れない。
2024年7月だけで2億5000万件のクエリを処理、2023年全体では5億件だった
Perplexityの最高ビジネス責任者Dmitry Shevelenko氏がFinancial Timesに明かしたところによると、同社の検索エンジンは2023年全体で約5億件の検索クエリを処理したのに対し、2024年7月単月で約2億5000万件の検索クエリに回答したという。この急激な成長は、ユーザーがAI技術を活用した新しい検索方法を積極的に求めていることの表れとも言える。
収益面でも、Perplexityは目覚ましい成長を遂げている。2024年初めには年間収益が500万ドルだったが、最近の数ヶ月間の数字に基づくと、現在では3500万ドル以上に達しているという。この成長を支えているのが、SoftBankのVision Fund 2を含む投資家からの2.5億ドルの新規資金調達であり、これにより同社の企業価値は10億ドルから30億ドルへと急上昇した。
しかしながら、Perplexityの成功は、依然として市場を支配するGoogleの地位を根本から脅かすまでには至っていない。Googleは90%以上という圧倒的な市場シェアを保持し続けており、1日あたり約85億件ものクエリを処理している。これは、Perplexityの月間クエリ数の約34倍に相当する。とはいえ、PerplexityのようなAI検索エンジンの台頭は、ユーザーの検索行動の変化と、長年にわたって確立されてきた検索エンジンのビジネスモデルへの挑戦を明確に示している。
Perplexityは現在、広告収入モデルへの移行を進めており、出版社とのパートナーシップを通じて収益の一部を共有する新たな取り組みを開始している。具体的には、Fortune、Time、Der Spiegelなどの出版社と提携し、スポンサー付き記事からの収益の一部(二桁のパーセンテージ)を共有する計画を立てている。これは、AIによる検索結果が原コンテンツの作成者からトラフィックを奪うという批判に対応する動きでもある。
一方で、GoogleやMicrosoft、そして最近ではOpenAIもAI検索機能の強化に乗り出しており、この分野での競争は今後さらに激化すると予想される。特にGoogleは、莫大な財務資源とデータ量を活用して自社のAI機能を継続的に改善しており、最近ではマルチモーダルなGeminiモデルをベンチマークのトップに押し上げることに成功している。
Perplexityの成功は、AIが検索エンジン市場を根本的に変える可能性を示唆している。しかし、同社はGoogleとの競争や、コンテンツの適切な引用と帰属に関する課題など、克服すべき障壁も抱えている。それでも、NvidiaやAmazon創業者Jeff Bezos、OpenAI共同創業者のAndrej Karpathy、Metaの主任AIサイエンティストYann LeCunといった業界の著名人からの投資を受けていることは、Perplexityの潜在的な可能性を示している。
AI検索エンジン市場の今後の展開は予断を許さないが、Perplexityの急成長は、ユーザーがより精度の高い、文脈に即した検索結果を求めていることを明確に示している。従来の検索エンジンとAI駆動型の新興企業との競争が激化する中、検索の未来がどのように形作られていくのか、その行方が注目される。
Source
- Financial Times: Perplexity’s popularity surges as AI search start-up takes on Google
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