Qualcommが中価格帯スマートフォン市場向けとなる「Snapdragon 7s Gen 3」プロセッサを発表した。この新チップは、AI処理能力の強化と全体的な性能向上を特徴としており、高性能と手頃な価格のバランスを追求したことで、多くのスマートフォンメーカーの注目を集めそうだ。
エントリーレベルにも高性能なAI処理能力をもたらすSnapdragon 7s Gen 3
Snapdragon 7s Gen 3は、TSMCの最新4nmプロセス技術を採用し、電力効率と性能の両立を図っている。CPUアーキテクチャには、Armの最新Armv9設計を採用し、1+3+4のコア構成を実現した。具体的には、2.5GHzで動作する1つのプライムコア(Cortex-A720)、2.4GHzで動作する3つのパフォーマンスコア(同じくCortex-A720)、そして1.8GHzで動作する4つの効率コア(Cortex-A520)から構成されている。この新しい構成により、Qualcommは前世代のSnapdragon 7s Gen 2と比較して20%のCPU性能向上を達成したと主張している。
GPUについても大幅な改善が見られ、Qualcommは前世代比40%の性能向上を謳っている。新たに搭載された「Adaptive Performance Engine」機能により、ゲームにおける持続的なパフォーマンスが向上。また、「Adreno HDR Fast Blend」技術によって、より高速で滑らかなグラフィックスレンダリングが可能になった。これらの改善により、中価格帯デバイスでもより高品質なゲーミング体験が期待できる。
AI処理能力も大きく強化されており、Qualcommは前世代から30%の性能向上を実現したとしている。新チップは、オンデバイスでのAIモデル実行をサポートし、Llama 2のような10億パラメータ規模の大規模言語モデルにも対応可能だ。また、多言語翻訳や文字起こしなどの機能も強化されており、日常的なタスクにおけるAIの活用範囲が広がることが期待される。
カメラ機能においても進化が見られる。Snapdragon 7s Gen 3は、200MPのスナップショットや64MPのシングルキャプチャ、21MP+21MP+21MPのトリプルカメラキャプチャをサポート。さらに、4K HDRビデオ撮影にも対応しており、中価格帯デバイスでもプロフェッショナルに近い写真・動画撮影が可能になる。
通信面では、Sub-6とmmWaveの両バンドに対応した5Gモデムを内蔵し、理論上最大2.9Gbpsのスループットを実現。Wi-Fi 6Eにも対応しており、高速かつ安定したワイヤレス接続を提供する。これにより、ストリーミングやオンラインゲームなどの高帯域幅を必要とするアプリケーションでもスムーズな体験が可能となる。
電力効率も改善されており、Qualcommは前世代と比較して12%の省電力化を達成したとしている。この改善は、新しい製造プロセスの採用だけでなく、チップ設計の最適化によっても実現されている。結果として、より長時間のバッテリー持続時間が期待できる。
Snapdragon 7s Gen 3を搭載した最初のデバイスは、2024年9月にXiaomiから発売される予定だ。その後、Realme、Samsung、Sharpなども同チップを採用したデバイスをリリースする見込みとなっている。特に、Samsungが同チップを採用する予定であることは注目に値する。これまでSamsungは中価格帯のGalaxyデバイスに自社製Exynos チップを使用することが多かったが、Snapdragon 7s Gen 3の採用は、同社の戦略に変化をもたらす可能性がある。
この新チップの登場により、中価格帯スマートフォン市場における競争が一層激化すると予想される。特に、AI処理能力の強化は、より高度な機能を手頃な価格で提供することを可能にし、消費者にとっては魅力的な選択肢となりそうだ。さらに、5Gの普及とAIの進化が進む中、Snapdragon 7s Gen 3は次世代のモバイルコンピューティングの基盤となる可能性を秘めている。
Snapdragon 7 Gen 3 (SM7550-AB) | Snapdragon 7s Gen 3 (SM7635) | Snapdragon 7s Gen 2 (SM7435-AB) | |
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CPU | 1x Cortex-A715 @ 2.63GHz 3x Cortex-A715 @ 2.4GHz 4x Cortex-A510 @ 1.8GHz | 1x Cortex-A720 @ 2.5GHz 3x Cortex-A720 @ 2.4GHz 4x Cortex-A520 @ 1.8GHz | 4x Cortex-A78 @ 2.4GHz 4x Cortex-A55 @ 1.95GHz |
GPU | Adreno | Adreno | Adreno |
DSP / NPU | Hexagon | Hexagon | Hexagon |
メモリ コントローラ | 2x 16-bit CH @ 3200MHz LPDDR5 / 25.6GB/s @ 2133MHz LPDDR4X / 17.0GB/s | 2x 16-bit CH @ 3200MHz LPDDR5 / 25.6GB/s @ 2133MHz LPDDR4X / 17.0GB/s | 2x 16-bit CH @ 3200MHz LPDDR5 / 25.6GB/s @ 2133MHz LPDDR4X / 17.0GB/s |
ISP/カメラ | トリプル 12 ビット スペクトル ISP 1x 200MP または 64MP (ZSL 付き )、 32+21MP (ZSL 付き) 、 3x 21MP (ZSL 付き) 4K HDR ビデオと 64MP バースト キャプチャ | トリプル 12 ビット スペクトル ISP 1x 200MP または 64MP (ZSL 付き )、 32+21MP (ZSL 付き) 、 3x 21MP (ZSL 付き) 4K HDR ビデオと 64MP バースト キャプチャ | トリプル 12 ビット スペクトル ISP 1x 200MP または 48MP (ZSL 付き )、 32+16MP (ZSL 付き) 、 3x 16MP (ZSL 付き) |
エンコード/ デコード | 4K60 10-bit H.265 H.265, VP9 デコード Dolby Vision, HDR10+, HDR10, HLG 1080p120 SlowMo | 4K60 10-bit H.265 H.265, VP9 デコード HDR10+, HDR10, HLG 1080p120 SlowMo | 4K60 10-bit H.265 H.265, VP9 デコード HDR10, HLG 1080p120 SlowMo |
統合無線 | FastConnect 6700 Wi-Fi 6E + BT 5.3 2×2 MIMO | FastConnect Wi-Fi 6E + BT 5.4 2×2 MIMO | FastConnect 6700 Wi-Fi 6E + BT 5.2 2×2 MIMO |
統合モデム | X63 統合 (5G NR サブ6 + ミリ波) DL = 5.0 Gbps 5G/4G Dual Active SIM (DSDA) | 統合 (5G NR サブ6 + ミリ波) DL = 2.9 Gbps 5G/4G Dual Active SIM (DSDA) | X62 統合 (5G NR サブ6 + ミリ波) DL = 2.9 Gbps 5G/4G Dual Active SIM (DSDA) |
製造プロセス | TSMC N4P | TSMC N4P | Samsung 4LPE |
Source
- Qualcomm: Snapdragon 7s Gen 3 Mobile Platform
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