Intelが昨年、業界初のガラス基板を発表した事を受け、この分野での競争がにわかに活気づいてきている。
ガラス基板の有用性は、微細化が進む半導体チップ開発の停滞を打破する物と見られており、この技術の早期の実用化が期待されている。Intelは2030年までにこの技術を商用製品に展開する意向だが、ライバルSamsungもこれに追いつくべく、その動きを加速させており、今回更にスケジュールを更新し、Intelに先んじてこの技術を用いた製品を展開する可能性があるようだ。
9月にも装置を設置、第4四半期にはパイロットラインを立ち上げへ
Samsungの動きはかなり迅速だ。既に子会社のSamsung Electro-Mechanicsを通じてガラス基板の研究開発を開始し、潜在的な使用例の調査を開始していたという。そしてETNewsの報道によると、既にSamsungはこの新技術開発のための装置の調達と設置作業を9月に前倒し、第4四半期に韓国の世宗で次世代パッケージングのパイロットラインを立ち上げる予定とのことだ。
計画では、ハイエンドのSiP(System in Package)向けガラス基板を2026年にも生産開始する予定だという。
Samsungはこのプロジェクトのサプライヤーリストを最終決定し、コンポーネントを提供するPhiloptics社、Chemtronics社、Joongwoo M-Tech社、ドイツのLPKF社を選定しているようだ。
Samsungのこうした迅速な動きの背景には、Intelへの対抗という動機も一つにはあるだろうが、その他の競合他社とのギャップを埋めようという部分もあるようだ。
既に韓国のライバルSKグループが子会社のAbsolicsを通じて米国ジョージア州に第2四半期にも試作品工場を本格稼働させる予定だという。Samsungがパイロットラインを立ち上げる頃には競合他社は小規模の生産に移行するのだ。これに焦ったという見方もある。
ガラス基板は、半導体パッケージのトランジスタの微細化を進める上で大きな可能性を秘めている。Intelは、有機基板は消費電力が高く、収縮や反りの影響を受けやすいため、半導体業界は2030年には、有機基板を使用したシリコンパッケージのトランジスタの微細化が限界を迎えると予測している。
対照的に、ガラスは超低平坦性であるため、部品をより近接して配置することが可能であり、優れた熱的・機械的安定性により、基板内の配線密度を最大10倍まで大幅に向上させることが出来る。これらの利点により、チップ設計者は、人工知能のようなデータ集約型のタスクに適した、高密度で高性能なチップパッケージを設計できるようになるのだ。
このガラス基板を巡っては、既にAppleが採用の可能性を探っており、ガラス基板を電子機器に統合する戦略を開発するため、Samsungを含む様々なサプライヤーと協議を行っていると報じられている。
だが、実用化までにはまだ乗り越えるべき課題が多いことも指摘されている。Intelのフェロー兼基板TDモジュール・エンジニアリング・ディレクターであるRahul Manepalli氏が説明するように、ガラスそのものの脆弱性、金属ワイヤーとの接着力の欠如、安定した電気性能に不可欠な均一なビア充填の達成の困難さなどがある。
とはいえ、こうした課題の解決については楽観的な見方も広がっている。世界のガラス基板市場は今年23億ドルに達すると予測され、2024年から2034年にかけて年平均成長率(CAGR)は5.9%と堅調に推移し、2034年には42億ドルに達すると予想されている。
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