Samsungは独自開発のExynosプロセッサを持っているが、これに用いられているGPUはAMDのRDNAアーキテクチャであり、Samsung独自のGPUという物はない。2026年に登場する「Galaxy S26」向けに開発されている「Exynos 2600(仮)」では、そのAMD製RDNAアーキテクチャではなく、Samsung独自のGPUが採用されるとの噂もあったが、今回それに関連した物かは不明だが、同社がGPUへの多額の投資を決定した事が伝えられている。
AIインフラ向けの投資の可能性も
韓国メディアの報道によれば、Samsung Electronicsの経営委員会が3月に「GPU投資提案」を承認したことが明らかになった。経営委員会には、DX(Device eXperience)部門長でSamsung の共同最高経営責任者(CEO)である韓正熙(ハン・ジョンヒ)氏をはじめ、モバイルエクスペリエンス部門とメモリー事業部門の社長ら主要人物が名を連ねている。SamsungがGPU研究に多額の投資を行うのは2012年以来となる。
Samsungはおそらく、成長し続ける市場で競争力のあるプレーヤーになろうとしているのだろう。同社はすでに世界最大のメモリーメーカーであり、NVIDIAのようなサードパーティ企業が開発した高性能GPU向けにHBMチップを製造している。
投資に関する具体的な詳細は不明だが、Samsungがチップ製造事業において、ここにきて新たな領域への事業拡大という動きは、今日の最新の市場動向によく合致している。AIビジネスは本格化しており、GPUはMicrosoftのような大企業だけでなく、AI開発で一旗揚げようとする小規模ベンチャーにとっても喉から手が出るほど必要な物であり、奪い合いの様相を呈している。
現在、市場で最も強力で高性能なGPUとAIアクセラレーター製品を製造しているNVIDIAは、今や世界で最も価値のある企業だ。しかし、Samsungは伝統的な意味での新しいGPUを作ることよりも、製造プロセスの改善に関心がある可能性もありそうだ。
SamsungがGPUに投資することで、特定のデジタル・ツインの作成が加速され、完全に自動化された半導体工場のAIベースの仮想レプリカが作成されるかもしれない。
デジタル・ツインとは、現実の物理システムを忠実に仮想的に表現したもので、例えば半導体工場における実際の動作や行為を正確にモデル化したものである。cuLithoはNvidiaが開発したソフトウェア・ライブラリで、半導体製造ワークフローの重要なボトルネックであるコンピュテーショナル・リソグラフィを、数週間かかるプロセスから5日で完了するタスクにスピードアップする。TSMCのような大手企業はすでに、NVIDIAのサーバー・ハードウェアとソフトウェアを搭載したこれらのリソースを生産に使い始めている。Samsungはすでに過去に計画の概要を説明しており、2030年までにデジタルツインの目標を達成するためにNVIDIAと提携している。
SamsungのGPU関連投資のもうひとつの応用可能性は、華城キャンパスに最近建設された同社の高性能コンピューティング(HPC)センターだ。このHPC施設は完成までに3年を要し、現在は半導体設計に必要な大規模サーバーとネットワーク機器をホストしている。Samsungは、工場を埋めるためにGPUハードウェアを大量に購入し、新しく構築された能力を研究努力の向上やその他のAI関連作業に使用する可能性がある。
消費者向けGPUの可能性も考えられるが、Exynos 2500自体も歩留まりの低さから開発が行き詰まっているといわれており、年末に向けて歩留まりを高めることに全力を注いでいると言われている。加えて、以前にもExynosチップは、グラフィックス面で何度も失敗している。現在NVIDIA、AMD、Intelの3大プレーヤーが存在するコンシューマー向けグラフィックス市場に参入しても、ほとんど利益を得ることはないだろう。
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