Samsung Electronicsが次世代フラグシップスマートフォンGalaxy S26シリーズに自社製チップ「Exynos 2600」を搭載するため、特別タスクフォースを設立した。前世代のExynos 2500が製造歩留まり問題で失敗し、Galaxy S25全機種が高コストのQualcommチップを採用せざるを得なかった教訓から、2nmプロセス技術を採用する新チップの開発に全力を注ぎ、5月から量産試作を開始する計画だ。
「最後のチャンス」-Exynos復活へ社運をかけるタスクフォース
Samsung Electronicsの半導体部門であるSamsung Foundryは、次世代プロセッサExynos 2600の開発を成功させるため、社内に「性能向上TF(タスクフォース)」と呼ばれる特別チームを設置した。韓国メディアFN Newsの報道によると、このタスクフォースは主に2つの目標を掲げている。一つは2nmプロセス技術の歩留まり率(正常に機能するチップの製造比率)の向上、もう一つはExynos 2600チップ自体の性能最適化だ。
前世代のExynos 2500が直面した問題は業界内でよく知られている。同チップは最新の3nmゲートオールアラウンド(GAA)プロセス技術を採用していたものの、製造の歩留まりが極めて低く、Galaxy S25シリーズへの搭載を断念。その結果、Samsungは全モデルに高価なQualcommの「Snapdragon 8 Elite」チップセットを採用することとなり、利益率に大きな打撃を受けた。
「今回が最後」という切迫感がSamsung内部で高まっているという。業界関係者によれば、Exynos 2600の開発成功はSamsungにとって数兆ウォン(数千億円)規模のコスト削減と業績改善につながる可能性があり、半導体部門の非メモリ事業(システムLSIとファウンドリ)の存続にも関わる最重要課題となっている。
2nmプロセスの歩留まり30%から目標70%へ-TSMCとの技術競争
Exynos 2600は、Samsung Foundryの最新の2nmプロセス技術(SF2)を採用する予定だ。半導体の製造プロセスはナノメートル(nm)単位で表され、数値が小さいほど微細化が進んだ先端技術を意味する。現在の初期試験では、2nmプロセスの歩留まりは約30%と報告されている。
半導体製造では、チップ生産を経済的に実行可能とするために通常60~70%の歩留まりが必要とされる。前世代の3nmプロセスが最悪時で10%程度、現在でも約50%の歩留まりであることと比較すると、2nmプロセスは大幅な改善が見られるものの、まだ目標には達していない。
こうした状況の中、「2nmプロセス(SF2)を使用するExynos 2600の歩留まりは、前世代のExynos 2500よりも有意に高い」と関係者は述べている。一方、台湾の半導体製造大手TSMCは既に同等の2nmクラスのプロセスで60%の歩留まりを達成していると報告されており、Samsung Foundryは急速な追い上げを図る必要がある。
Samsung Foundry内部の関係者によれば、「歩留まり問題がある程度安定してきたため、競合製品であるSnapdragonシリーズ(Qualcomm)やDimensity(MediaTek)と比較して性能競争力を確保するために先制的にタスクフォースを設立した」と説明している。
項目 | Exynos 2500 | Exynos 2600 |
---|---|---|
製造プロセス | 3nm GAA | 2nm GAA |
初期歩留まり | 約10% | 約30% |
現在の歩留まり | 約50% | 測定中 |
目標歩留まり | 60-70% | 60-70% |
Galaxy搭載状況 | 見送り(S25) | 検討中(S26) |
量産試作時期 | – | 2025年5月予定 |
5月量産試作開始、年末までにGalaxy S26搭載判断へ
現在の計画によれば、Samsungは2025年5月頃にExynos 2600の試作品の量産(プロトタイプの大量生産)を開始する予定だ。これにより、2025年末までにGalaxy S26シリーズへの搭載可否について最終判断が下されると見られている。Galaxy S26シリーズは2026年第1四半期(1-3月)に発売予定とされており、そのタイミングに合わせた生産スケジュールが組まれているものと考えられる。
Exynos 2600の成功は、単にSamsungのスマートフォン事業のコスト削減にとどまらない戦略的意義を持つ。2nmプロセス技術の安定化は、Samsung Foundryの技術的競争力の証明となり、失われた顧客を呼び戻す契機ともなりうる。
特に近年、Samsung Foundryは主要顧客であったQualcommやNVIDIAなどの大手半導体設計企業(ファブレス企業)がTSMCに生産を移行したことで、先端プロセス分野での存在感低下に直面している。自社チップの成功は自社技術への信頼回復の第一歩となる。
NVIDIAやAMDも関心示す-半導体業界のパワーバランス変化の可能性
業界関係者の証言によれば、SamsungはNVIDIAに対して「定期的に試作品を送ってGPUのファウンドリ受注を打診している」とされる。また、「AMDについても最近目に見える成果が現れている」と言及されている。米国のファブレス企業AMDは過去に、主力チップの生産パートナーをTSMCからSamsungに切り替える可能性を数回にわたって公に言及している。
この動きは、半導体業界全体のパワーバランスにも影響を与える可能性がある。現在、先端プロセス技術においてTSMCの一極集中が進んでおり、多くのテクノロジー企業が供給リスクやコスト面での懸念を抱えている。
「TSMC独占体制に多くのビッグテック企業が負担を感じている状況でも、最も根本的な問題である歩留まりと性能がSamsungに向かう企業の足かせになっている」と別の半導体業界関係者は指摘。「結局は初心に戻り、根本的な技術力回復に全力を尽くさなければ、非メモリ事業部が反転の機会を作ることはできないだろう」と分析している。
一方でQualcommも次世代チップ「Snapdragon 8 Elite Gen 2」を開発中で、TSMCの2nmプロセスで製造される見通しだ。Samsungが自社スマートフォンにExynos 2600を採用するかどうかは、この競合チップとの性能差にも左右される可能性がある。
業界の一部では、Samsungがこれまでのように性能面でSnapdragonに劣ったExynos搭載モデルを市場投入すれば、Galaxy S26シリーズの販売に悪影響を及ぼす可能性を懸念する声もある。しかし、今回のタスクフォース設立とSamsungの強い決意は、これまでの課題を克服し、競争力のある自社チップ復活に向けた本気度の表れと見ることができる。
Sources