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TSMC、Intelファウンドリ事業の共同運営を提案:NVIDIA、AMDらと提携模索

2025年3月13日

台湾の半導体製造大手TSMCが、NVIDIA、AMD、Broadcom、Qualcommといった米国の主要チップ設計企業とともにIntelのファウンドリ部門を運営する合弁会社設立を提案していることがReutersの報道で明らかになった。この動きはTrump政権の要請を受けたもので、TSMCは合弁会社の50%以下の株式所有を目指している。

米政府の意向受けTSMCがIntelファウンドリ合弁事業を提案

TSMCの提案によれば、同社はIntelのファウンドリ部門(顧客のニーズに合わせてチップを製造する部門)の日常運営を担当するが、所有権は50%を超えないとしている。残りの株式をNVIDIA、AMD、Broadcom、Qualcommといった米国の主要半導体設計企業が保有する形を目指している。

Reutersによると、この交渉は初期段階にあり、Trump政権がTSMCに対して米国の産業界の象徴であるIntelの立て直しを支援するよう要請したことに端を発している。交渉の詳細や合弁会社の評価額は明らかになっていないが、最終的な取引が成立するにはTrump政権の承認が必要となる見込みだ。

TSMCは2024年3月3日にTrump大統領と共に、同社が米国に1,000億ドルを追加投資し、5つの新たなチップ工場を建設する計画を発表する前に、この合弁事業について潜在的なパートナーに打診していた。それ以降も協議は継続しており、TSMCは複数のチップ設計企業をパートナーとして迎え入れることを望んでいるという。

Intelの経営危機と業界への影響

この提案の背景には、Intelの深刻な経営危機がある。同社は2024年に188億ドルの純損失を記録し、これは1986年以来初めての年間損失となった。特にファウンドリ部門は昨年175億ドルの収益に対して130億ドル以上の損失を計上している。これはTSMCが900億ドルの収益に対して411億ドルの営業利益を報告していることと対照的である。

Intelのファウンドリ部門の不動産・設備は2023年12月31日時点で簿価1,080億ドルと評価されており、合弁事業への参加企業は数百億ドル規模の投資を行う必要がある。

Intelは2024年9月に当時のCEOであったPat Gelsinger氏の主導で、ファウンドリサービス事業を「Intel内の独立子会社」として分離・運営すると発表した。これは「外部のファウンドリ顧客とサプライヤーに、Intelの他の部門からの明確な分離と独立性を提供する」ことを目的としていた。しかし、Gelsinger氏は2024年12月に「引退」し、2025年1月には同社は3四半期連続の損失を計上した。

提案実現への課題と展望

TSMCとIntelの提携には大きな技術的課題が存在する。両社は現在、まったく異なる製造プロセス、化学物質、チップ製造ツールの設定を工場で使用しており、情報筋によれば提携は「費用がかかり、労力を要する」ものになると予想される。

特にIntelの最先端製造技術である「18A」プロセスが交渉における「論争の的」となっているという。2025年2月の交渉でIntel幹部はTSMCに対し、同社の18A製造技術がTSMCの2nm(ナノメートル)プロセスよりも優れていると主張したとされる。

18Aプロセスは2024年後半に量産体制に入る予定で、「BSPDN(バックサイドパワーデリバリーネットワーク)」と「GAA(ゲートオールアラウンド)」トランジスタ設計という2つの革新的な機能を備えている。BSPDNは、通常プロセッサの回路に電力を供給する微細な配線をトランジスタの上から下に移動させることで、処理速度の向上と省エネルギー化を実現する技術だ。また、GAA設計では、電流の流れを管理するゲートがトランジスタをすべての側面から囲むことで、電力漏れを減少させ、電力効率を向上させる。

NVIDIAとBroadcomは既にIntelの18A製造技術を使用したテストを実施しており、AMDもこの技術の評価を行っているという。TSMCは合弁事業への投資者に対し、Intelの先端製造技術の顧客にもなることを望んでいるようだ。

米国半導体政策とTSMCの戦略

Trump政権は米国の先端製造業の復活を目指しており、Intelの復活もその一環と見られている。一方で、Trump大統領は台湾の企業が「米国のチップビジネスを盗んだ」と主張し、「世界のチップビジネスの約98%を占めている」と述べている。実際には、台湾のチップ企業は世界のチップの約60%を生産しているが、NVIDIAのデータセンターGPUを含む最先端チップの90%以上を生産している。

Trump大統領は海外生産に対して「100%の税金」を課すことにより、コンピュータチップや半導体の生産を米国に「回帰」させることを約束している。このような背景から、政権はIntelやそのファウンドリ部門が完全に外国企業の所有下に置かれることを望んでいない。

TSMCはこの政治的環境の中で、米国での存在感を高める戦略を進めている。同社は3月に既存の650億ドルの投資に加えて、米国のチップ製造業に1,000億ドルの追加投資を行うと発表した。この投資には5つの新たなチップ施設の建設、2つの先進パッケージング施設、研究開発センターの設立が含まれており、建設に40,000の雇用と数万の「高給の技術職」を今後数年間で創出するとしている。

Intelは米国のCHIPS法の下で、アリゾナ州チャンドラー、オハイオ州ニューアルバニー、オレゴン州ヒルズボロ、ニューメキシコ州リオランチョの半導体製造施設の建設・アップグレードのために約78.6億ドルの直接資金を得ている。さらに米軍向けチップ製造のための30億ドルの契約も獲得しており、CHIPS法による資金調達総額は110億ドルに達している。


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