TSMCと言えば、Appleデバイスの心臓部品である「Appleシリコン」の唯一の製造元であり、常にその最先端プロセスをAppleに優先的に供給していることでも知られているが、そのTSMCが2025年のiPhone 17シリーズにおいて搭載されると見られる、最先端の2nmプロセスチップ「A19(仮称)」を確実に供給するため、開発を加速させていることが明らかとなった。
TSMCの2nmプロセス開発加速の背景に歩留まりへの懸念あり?
TSMCは来週から、台湾北部の新竹科学工業園区にある宝山工場で2nmチップの試作生産を開始する予定だ。当初、業界では2nmプロセスの試作は早くても2024年第4四半期と予想されていたが、TSMCは予定を大幅に前倒しして7月に開始する。この早期開始の背景には、量産前に安定した歩留まりを確保したいというTSMCの意図がある。
2nmプロセスは、チップの性能と電力効率を大幅に向上させると期待されている。TSMCは、このプロセスでGAA(Gate All Around)トランジスタ技術とBSPDN(背面電力供給)技術を導入する計画だ。これらの技術革新により、2nmチップを搭載したデバイスは、現行の3nmプロセスを用いたチップと比較して、10〜15%の性能向上と最大30%の消費電力削減が可能になると予想されている。
Appleは、TSMCの2nmチップ生産能力の全てを予約した可能性があるとの報道もある。これはAppleとTSMCの伝統的な協力関係の一環と見られ、2023年のA17 Proチップで採用された3nm「N3B」プロセスでAppleが行ったと言われる戦略と同様だ。この動きは、AppleがiPhone 17シリーズやM5チップを搭載する次世代Macなど、2025年以降に発売予定の製品で2nmチップを独占的に使用する意図があることを示唆している。
TSMCの2nmプロセス開発の成功は、スマートフォンやコンピューター業界に大きな影響を与える可能性がある。特に人工知能(AI)や高性能コンピューティング(HPC)分野での需要増加が見込まれており、TSMCはこれらの需要に応えるべく生産能力の拡大を進めている。
ただし、新しいプロセス技術の導入には常に課題がある。特に歩留まり率の向上は重要な課題となる。TSMCは3nmチップの生産で当初50%程度の歩留まり率に苦戦した経験があり、2nmプロセスでも同様の課題に直面する可能性がある。
今回のTSMCの動きは、半導体業界の激しい競争と技術革新のスピードを反映している。2nmプロセスに関しては、Samsungも3nmで受注を獲得できていない反省から、開発を加速させ受注獲得に努めており、昨日には日本のPreferred Networks向けのAIチップ受注を獲得したことが発表されている。2nmプロセスでは、特にAIチップの受注合戦が激しい物になりそうだ。
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