4月2日に台湾東部を襲った地震の影響で、台湾積体電路製造股份有限公司(TSMC)は、即時操業停止を行い従業員を避難させた。その後、地震による評価を終えた同社は、重要なチップ製造設備に被害がなかったことを報告し、迅速に現場の復旧が完了したことを報告している。これによりチップ供給への混乱を最小限に抑えることができた。
フィリピン海プレートとユーラシアプレートの間の断層線上に位置する台湾は地震が起こりやすい地域であり、そのため半導体の製造という極めて繊細な作業を行う工場には、数々の耐震・安全対策が施されている。世界最先端の半導体を製造するTSMCも当然のことながら地震に備えており、同社の工場は西岸に位置していたこともあって被害は比較的軽微だったが、しかし、全くの無傷だったわけではない。
DigiTimesによると、TSMCの主要な極端紫外線露光(EUV)リソグラフィ装置は“無事”であったが、地震による被害はその他に及び、TSMC全体としては6200万ドルの損害が発生しているという。被害の範囲は、工場の梁、柱、壁、パイプラインに及ぶと、DigiTimesの情報筋は報告しているが、公式な発表ではないため正確なところは不明だ。
被害の範囲について、DigiTimesは詳しい情報筋の話として、以下のように伝えている:
- ウェハーの広範囲の破損(新竹)
- 梁の破損(N3)
- 柱の破損(N3)
- 研究開発室の壁に亀裂(N3
- パイプライン破損(新竹)
被害が比較的軽微で済んだのは、地理的な要因に加え、同社の取る耐震対策が奏功したとみられる。TSMCは耐震建築物として、法的要件以上のことを行っていると主張している。設備には耐震アンカーが設置され、施設全体にはダンパーが設置され、台南サイエンスパークのすべての工場には浮き杭が設置されている。浮き杭は基本的に、建物の支持をより緩い土壌から、より安定したより深い地下の土壌層へと移動させる。これは、地震による液状化の影響によって、建物の支持をそれだけに頼っていると構造的な損傷につながる可能性があることから、取られている。
TSMCの製造施設全体の設備の耐震能力には、頻繁な検査、絶え間ない耐震補強の検証、地震対策に特化した180人の地震対策警備員の雇用が含まれる。台湾の商業周刊記者であるWen-Yee Lee氏はXで、地震発生後10時間以内に、ウェハーファブ設備の復旧率は70%を超え、新設ファブの復旧率は80%を超えたと共有している。
Barclaysのアナリストは、地震発生直後、生産が滞れば、真空状態で数週間の隔離を必要とする工程に支障をきたす可能性があると指摘した。その後、Citiグループは今回の災害がTSMCにとって「管理可能」であると楽観的な見方を示し、Jefferiesも「限定的」な影響を予想している。
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