Valveが新たなSteamOS搭載デバイス「Fremont」の開発を進めていることが、Steam Deckのカーネルアップデートから明らかになった。AMDの次世代プロセッサを採用する可能性が高く、デスクトップコンソールまたは次世代Steam Deckとして登場する可能性が示唆されている。
開発の痕跡と技術仕様
Steam Deckのカーネルに約1ヶ月前、「Fremont」と呼ばれる未発表デバイスのためのアップデートが追加された。このアップデートには、ChromeOS Embedded Controller(CEC)ドライバーやGoogle Dexi、そしてAMD Lilacへの参照が含まれている。
特に注目すべきは、AMD Lilacプラットフォームの採用だ。これはモバイル AMD Ryzen プロセッサ用の開発マザーボードの名前のようで、おそらく Valve 独自のものではない。Geekbenchのデータベースによると、このプラットフォームではRyzen 5 8540Uプロセッサ(Hawk Point)とRX 7600M XT GPUの組み合わせが確認されている。この構成は、Zen 4 CPUアーキテクチャとRDNA 3グラフィックス技術を採用しており、現行のSteam Deckと比較して大幅な性能向上が期待できる。
デバイスの形態を巡る推測
現時点でFremontの具体的な形態は明らかになっていないものの、搭載されるハードウェアの特性から、いくつかの有力なシナリオが浮かび上がっている。
最も可能性が高いと見られているのは、デスクトップコンソールとしての展開だ。この見方を裏付けるのが、搭載が示唆されるRX 7600M XT GPUの存在である。同GPUは120Wの定格電力を持つが、携帯ゲーム機に搭載するには明らかに高すぎる値となっている。Valveは過去にSteam Machineでデスクトップ市場への参入を試みており、Fremontはその経験を活かした第二のアプローチとなる可能性がある。
一方で、著名なゲームハードウェアアナリストのThe Phawx氏は、より興味深い可能性を指摘している。それは、Nintendo Switchのような2つのモードを持つハイブリッドデバイスとしてのSteam Deck 2だ。この場合、通常時は省電力モードで動作し、ドッキング時に完全な性能を発揮する仕組みが想定される。これにより、携帯性と高性能を両立させることが可能となる。
さらに、VRヘッドセットとしての可能性も無視できない。Valveは「Deckard」という開発コードネームのVRヘッドセット開発を進めていることが知られており、Fremontがこのプロジェクトの一部である可能性も考えられる。特にChromebookで使用されるCECドライバーの存在は、独自のディスプレイ管理システムを必要とするVRヘッドセットと親和性が高い。
ただし、これらの推測に対して慎重な見方も存在する。例えば、AMDのLilacプラットフォームを採用した他社製品として、TUXEDOのSirius 16 Gen2ラップトップが既に市場に存在している。このため、Fremontが完全に別の未発表デバイスである可能性も排除できない。現時点では、Valveがこのハードウェアをどのような形で市場に投入するかについて、確定的な結論を導き出すのは時期尚早といえる。
Xenospectrum’s Take
Valveの新デバイス開発は、PCゲーミング市場における興味深い展開を示唆している。AMD Lilacプラットフォームの採用は、単なる性能向上だけでなく、電力効率の最適化も視野に入れた戦略的な選択と見られる。
特にChromebookで使用されるCECドライバーの存在は、GoogleとValveの潜在的な協力関係を示唆している。これは、SteamOSとChromeOSのエコシステムの融合という、より野心的な計画の一部である可能性も否定できない。失敗に終わったSteam Machineの教訓を活かし、より明確な市場ポジショニングと実用的な価値提案が期待される。
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