携帯型PCゲーム機という新たなジャンルを作り上げたValveのSteam Deckだが、その後継機種の登場をめぐって新たな展開があった。Valveは、Steam Deckの年次更新を行わない方針を明確に示したのだ。どうやらしばらく新機種は登場しないらしい。
Valveの方針発表:年次更新を行わない理由
Valveの Steam Deck設計者、Lawrence Yang氏は最近のReview.orgのインタビューで、「我々は年次のサイクルでの更新は行わない」と明言した。この発言は、携帯型ゲーミングPC市場における他社の戦略とは一線を画すものだ。
Yang氏は続けて、「毎年何かをリリースする理由はない」と述べ、「正直なところ、我々の視点からすると、最近購入したばかりの顧客に対して、わずかな改善しかない製品をすぐに出すのは公平ではない」と語った。まるで、「毎年新製品を買わされるのはもううんざり」という消費者の声が聞こえてきたかのようだ。
この方針は、消費者に対する誠実さを重視するValveの姿勢を示すものだ。技術の進歩に伴い、多くのデバイスメーカーが年次更新モデルを採用する中、Valveの決断は際立っている。「最新モデル」という言葉に踊らされない、冷静な判断を示したと言えるだろう。
Steam Deck 2の開発状況と期待される性能
Valveは年次更新を否定する一方で、Steam Deck 2の開発が既に進行中であることを示唆している。Press Startとのインタビューでは、Yang氏は「Steam Deckの後継機の作業は正式に始まっており、オリジナルモデルから学んだことを適用する」と語った。
現行のSteam Deckは、AMDのZen 2アーキテクチャを採用した4コア/8スレッドCPUを搭載している。2022年2月の発売以来、2023年11月にOLEDバージョンがリリースされたが、主に画面とバッテリーの改良に留まっていた。「新しい服を着せただけ」と揶揄する声もあったが、それでも多くのゲーマーを魅了したのは事実だ。
Steam Deck 2に期待される性能については、AMDの最新のZen 5 CPUアーキテクチャとRDNA 3.5 GPUシリコンが鍵を握る可能性がある。これらの新チップは、近い将来のゲーミングハンドヘルドに搭載されることが予想されている。特に、Ryzen Z2シリーズへの期待が高まっている。「次世代チップを積んだら、どれだけ化けるんだろう」と、ゲーマーたちの想像力を刺激している。
しかし、Valveは単純な性能向上だけを目指しているわけではない。Yang氏は「バッテリー寿命を犠牲にすることなく、コンピューティング能力における世代的な飛躍」を待っていると述べている。この発言は、Steam Deck 2が単なる性能向上だけでなく、エネルギー効率の大幅な改善も目指していることを示唆している。
さらに、Valveの野心はハードウェアにとどまらない。同社はSteam Deck所有者だけでなく、より広範なPCゲーミングコミュニティ全体のゲーミング体験を向上させるための取り組みを進めている。例えば、最近ArchLinuxチームがValveとの協力を発表し、SteamOSの基盤となるArchLinuxディストリビューションの合理化を進めている。
また、ValveはSteamOSの対応範囲を拡大し、より多くの開発者のサポートを得ることにも興味を示している。一般向けのSteamOSディストリビューションのリリースが準備されている可能性もある。これは、「SteamOSをより多くの人に使ってもらいたい」というValveの願望の表れかもしれない。
これらの動きは、Steam Deck 2が単なるハードウェアのアップグレードではなく、ソフトウェアエコシステム全体を巻き込んだ大きな進化を遂げる可能性を示唆している。Valveは、ハードウェアとソフトウェアの両面から、次世代のゲーミング体験を形作ろうとしているのだ。「ハードもソフトも、全部まとめてレベルアップ」という野心的な計画が、徐々に形になりつつあるようだ。
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