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GitHub Copilot、全ユーザーに「エージェントモード」展開、MCP対応、新料金体系導入などで大幅刷新

Y Kobayashi

2025年4月5日

GitHub Copilotが、AIコーディングアシスタントの能力を飛躍的に向上させる大型アップデートを発表した。今回の更新では、自律的なタスク遂行能力を持つ「エージェントモード」の一般提供開始、外部ツール連携を可能にする「Model Context Protocol (MCP)」のサポート、そして高性能AIモデル利用に関する新たな「プレミアムリクエスト」制度と料金プランが導入される。

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Copilotの新たな頭脳:「エージェントモード」が一般提供開始

今回のアップデートで最も注目すべきは、「エージェントモード」のVisual Studio Code(VS Code)ユーザー向け一般提供開始である。これは、従来のコード補完やチャットによる提案を超え、Copilotがより自律的に開発タスクを遂行する能力を獲得したことを意味する。

エージェントモードは、ユーザーからの簡単な指示(プロンプト)に基づき、必要なサブタスクを特定し、関連するファイルを自動的に識別または生成しながら、目標達成に向けて一連の作業を実行する。具体的には、以下のような能力を持つ。

  1. プロジェクト全体の反復処理: 単一ファイルだけでなく、プロジェクト全体を俯瞰し、必要な変更を複数のファイルにわたって実施できる。
  2. ターミナルコマンドの提案・実行依頼: 開発に必要なコマンドを提案し、ユーザーに実行を促す。
  3. ランタイムエラー分析と自己修復: コード実行時に発生したエラーを分析し、修正案を提示、あるいは自動修正を試みる。
  4. サブタスクの自動遂行: 主要な目標達成に必要な細かな作業(例: バックエンドAPI更新、UIコンポーネント修正、単体テスト生成など)を自律的にこなす。

GitHubが公開したデモでは、開発者がランナー向けWebサイトのレース情報を名前、距離、時間でソートする機能追加を指示すると、エージェントモードがサイト構造を分析。バックエンドとUIの更新、関連する単体テストの生成までを自動で行い、最後にユーザーにテスト実行を促す様子が示されている。

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このエージェントモードは、AnthropicのClaude 3.5および3.7 Sonnet、GoogleのGemini 2.0 Flash、そしてOpenAIのGPT-4oといった複数の強力なAIモデルから選択して利用可能だ。特にClaude 3.7 Sonnetを使用した場合、ソフトウェアエンジニアリングベンチマーク「SWE-bench Verified」において56.0%の合格率を達成しており、その能力の高さを示している。GitHubは、思考連鎖(chain of thought)推論モデルの進化に伴い、エージェントモードの能力は今後さらに向上すると見込んでいる。

エージェントモードは現在、VS Codeの安定版ユーザー向けに段階的に展開されており、数週間以内に全ユーザーが利用可能になる予定だ。待ちきれないユーザーは手動で有効化することもできる。

連携の可能性を拓く:「Model Context Protocol (MCP)」サポート

エージェントモードの能力をさらに拡張するのが、「Model Context Protocol (MCP)」のパブリックプレビュー開始である。MCPは、AIツール(この場合はCopilot)が外部のデータソースやツール(開発スタック)と連携するためのオープンスタンダードな仕組みであり、いわば「AIのためのUSBポート」のようなものだ。

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MCPをサポートすることで、エージェントモードは以下のようなタスクを実行可能になる。

  • データベーススキーマの理解
  • ウェブ上の情報クエリ
  • リポジトリ横断でのコード検索
  • GitHub Issuesの管理
  • Pull Requestの作成

例えば、「昨日自分に割り当てられたPRのタイトルをGitHubプロフィールに追加して」といった指示をエージェントモードに与えると、MCPを通じて利用可能なツール群(GitHub APIなど)と連携し、LLM(大規模言語モデル)が最適な手順を判断。必要なツールを反復的に呼び出しながら、タスクを完了させる。

GitHubは、開発者が利用できるMCPサーバーのエコシステムが既に形成されつつあるとしており、コミュニティが管理するインベントリリポジトリも紹介されている。さらに、GitHub自身もローカルで動作するMCPサーバーをオープンソースで公開。これにより、エージェントモードはGitHubプラットフォームの強力なユーザーとなり、リポジトリ操作やIssue管理などをよりスムーズに行えるようになる。

開発者は、ローカルおよびリモートのMCPサーバーを設定し、VS Code内でエージェントモードと共にこれらのツールを活用することで、より高度で文脈に応じたコーディングサポートを受けられるようになる。

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高性能モデル利用の新ルール:「プレミアムリクエスト」と新料金プラン

GitHubはこれまで、Copilotのチャット機能やマルチファイル編集機能向けに、ベースモデル(現在はOpenAI GPT-4o)以外にもAnthropic ClaudeやGoogle Geminiといった複数の高性能モデルを追加してきた。今回、これらのモデル(Claude 3.5, 3.7 Sonnet, 3.7 Sonnet Thinking, Gemini 2.0 Flash, OpenAI o3-mini)が正式提供(GA)されるにあたり、「プレミアムリクエスト」という新しい利用枠制度が導入される。

重要な点は、全ての有料プランにおいて、ベースモデル(GPT-4o)を使用したエージェントモード、コンテキスト駆動チャット、コード補完は引き続き無制限で利用可能であるということだ。プレミアムリクエストは、これらベースモデル以外の、より高性能なモデルを利用する場合に消費される。

各プランの月間プレミアムリクエスト付与数は以下の通り。

  • Copilot Pro(19ドル・10ドルに割引き中/月): 300リクエスト (2025年5月5日より開始)
  • Copilot Business(19ドル/月): 300リクエスト (2025年5月12日から19日の間に開始)
  • Copilot Enterprise(39ドル/月): 1000リクエスト (2025年5月12日から19日の間に開始)

これらの開始日までは、プレミアムモデルも無制限で利用可能だ。

さらに、個人開発者向けに新たな上位プラン「Copilot Pro+」(月額39ドル)も発表された。

  • Copilot Pro+:
    • 月間1500プレミアムリクエスト
    • GPT-4.5など、最高性能モデルへのアクセス権

付与されたプレミアムリクエスト数を超えて利用したい場合は、従量課金オプションが用意されている。

  • 追加プレミアムリクエスト単価: $0.04/リクエスト
  • 個人ユーザー、および組織管理者は、利用上限額を設定することでコスト管理が可能。

この価格設定の背景には、高度な推論能力を持つモデル(例: Anthropic Claude 3.7 Sonnet)ほど、回答の精度を高めるための内部的な検証プロセスなどに多くの計算資源(コンピューティングコスト)を要するという事情があると推察される。

ただし、Copilot事業自体が不採算というわけではない。MicrosoftのSatya Nadella CEOは2024年8月に、Copilotが2024年におけるGitHubの収益成長の40%以上を占め、MicrosoftによるGitHub買収時(約7年前)のGitHub全体の事業規模を既に超えていると述べている。今回の措置は、あくまで高コストな特定モデルの利用に対する価格調整と考えるのが妥当であろう。

今回のアップデートにより、GitHub Copilotは単なるコード補完ツールから、開発プロセス全体を支援する、より強力で自律的なパートナーへと進化を遂げた。エージェントモードとMCP連携は開発の可能性を大きく広げる一方、プレミアムリクエスト制度の導入は、ユーザーが自身のニーズと予算に応じて最適なモデルを選択・利用していく、新たな運用スタイルへの移行を促すものとなるだろう。


Sources

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