Alphabetの自動運転部門Waymoは、同社の原点であるシリコンバレーで完全無人の24時間ロボタクシーサービス「Waymo One」の提供を開始した。マウンテンビュー、パロアルトなど27平方マイルをカバーし、現地住民向けの招待制からスタート。週20万回以上の配車を誇る米国最大の自動運転タクシー企業が、新たなステージに突入する。
27平方マイルをカバー:シリコンバレーの新たなモビリティ革命
Waymoの新サービスは、マウンテンビュー、ロスアルトス、パロアルト、そしてサニーベイルの一部を含む27平方マイルのエリアをカバーしている。このサービスはWaymo Oneアプリを通じて24時間365日提供される。
利用は段階的に拡大されるアプローチを採用しており、初期段階ではサービスエリア内の郵便番号を持つWaymo Oneアプリユーザーの特定グループに招待制で提供される。Waymoは「時間をかけてより多くのライダーを追加する」方針を示しており、アクセス権の拡大に関する最新情報はWaymo Oneアプリで確認できる。
サービスに使用される車両は、Waymoの最新鋭第5世代自動運転技術を搭載した完全電気自動車のJaguar I-Paceだ。これらの車両は人間のドライバーが不在の完全自律走行を実現している。
15年の歴史:Googleプロジェクトから商用サービスへの進化
Waymoの起源は2009年にさかのぼる。当時Googleの自動運転車プロジェクトとして、Mountain Viewでテストを開始した。
Googleの創設者Sergey Brin氏とLarry Page氏が掲げた野心的な目標は、人間の介入なしでシリコンバレーを縦横に走る10の100マイルルートを自律走行することだった。エンジニアチームは2009年12月に最初のルートを完了し、わずか9ヶ月後の2010年半ばには全ルートのテスト走行を成功させた。
その後、Googleの自動運転車プロジェクトは「卒業」し、Waymoとして独立。現在はシリコンバレーのマウンテンビューに本社を構える。文字通り「原点回帰」となった今回のサービス開始について、WaymoのチーフプロダクトオフィサーであるSaswat Panigrahi氏は「シリコンバレーで完全自律走行の配車サービスを開始することは、私たちのベイエリアの旅における特別なマイルストーンです。ここがWaymoの始まりであり、本社がある場所。今、私たちは地域コミュニティに、シームレスな乗車、より安全な道路、持続可能な交通手段をもたらします」と語った。
米国自動運転市場をリード:週20万回の配車と56億ドルの資金調達
Waymoはシリコンバレー進出前から、サンフランシスコ、ロサンゼルス、フェニックスで週に20万回以上の有料乗客トリップを提供し、毎週100万マイル以上を走行する規模に成長している。
財務面では、WaymoはAlphabetの「Other Bets」部門に分類され、2024年第4四半期に同部門全体で4億ドルの収益を計上したが、11億7000万ドルの営業損失も記録した。一方で、Waymoは昨年末に56億ドルの大型資金調達を完了し、企業価値は450億ドルと評価されるまでに成長した。
米国の自動運転タクシー市場では、GMのCruiseが安全上の問題から商業運転を停止している現在、Waymoが圧倒的なリードを保持している状況だ。
全米10都市への拡大計画:Uberとの提携とアフリカ企業との協業
Waymoはシリコンバレーのサービス開始に加え、全米各地への迅速な拡大戦略を展開している。
注目すべきは大手配車サービスUberとの提携だ。先週テキサス州オースティンで開始されたUberとのパートナーシップでは、Uberアプリユーザーが通常の配車リクエスト時にWaymoの自動運転車にマッチングされる可能性がある。この提携は今年後半にはアトランタにも拡大される予定で、Waymo従業員はすでに1月からアトランタでテスト走行を実施している。
さらに、アフリカのモビリティスタートアップMooveとのパートナーシップによって、2026年にはマイアミでもサービスを展開予定だ。また、Waymoはラスベガスとサンディエゴを含む「最大10の新しい米国都市」でテストを計画している。
地理的にはシリコンバレーとサンフランシスコの接続も視野に入れており、サンフランシスコ国際空港(SFO)との協議も進行中だ。Waymoの広報担当者はCNBCに対し「ベイエリアのより多くの場所で自律走行の乗車をシームレスに提供するために取り組んでいる」と説明している。
海外展開も視野に入れており、2025年には初の海外展開として東京の地で日本交通の乗務員がWaymoの車両を操作し地図データの収集を行う計画も明らかになっている。
激化する自動運転市場:Tesla、Zoox、Avrideの追随
Waymoが実用化で先行する自動運転タクシー市場だが、大手テック企業も参入を加速させている。
最も注目されるのはTeslaの動きだ。Elon Musk CEOは6月にテキサス州オースティンで長年約束してきたロボタクシーサービスのトライアル開始を予告しており、2025年末までにカリフォルニアなど他地域への拡大も計画している。
Amazon傘下のZooxもラスベガスでの商業サービス開始を進めており、最終的にはサンフランシスコでも展開する計画だ。さらに、UberとYandexのスピンオフ企業Avrideもダラスでのサービス開始を予定している。
こうした競合激化の中、Waymoは発祥の地シリコンバレーでのサービス開始により、自社の技術的優位性と実績を基盤とした市場先行の立場をさらに強固なものとしている。
Sources
- Waymo (X)