Microsoft Edgeが新たな更新プログラムを通じて、GoogleChromeのブラウザデータを自動的に取り込もうとする問題が発覚した。The Vergeの報道によると、この動きはMicrosoftによる一連の攻撃的なブラウザ戦略の最新事例となる。
新たな「データ取り込み」の手口
The Vergeの調査によれば、Windows PCの起動時にMicrosoft Edgeが自動的に起動し、「ブラウジング体験を強化する」という名目でポップアップを表示。このポップアップには「他のブラウザからデータを定期的に取得する」オプションがデフォルトで有効化されており、ユーザーが意図せずChromeのデータをEdgeに引き渡してしまう可能性があるというのだ。
Microsoftの広報担当者Caitlin Roulston氏は The Vergeに対し、「これは他のブラウザからデータをインポートする選択肢を提供する通知です。オプションをオフにすることも可能です」と説明しているが、デフォルトで他のブラウザからの定期的な情報の取得が行われている点を鑑みれば、トラップのように感じられるのも当然だろう。
継続的な攻撃的マーケティング
この問題は2024年初頭に発生した同様の事案の再発である。当時はユーザーの同意なくChromeのタブを自動的にインポートする動作が報告され、批判を受けてMicrosoftは更新プログラムで対応した。しかし今回の新たな手法は、表面的にはユーザーの選択を尊重するような体裁を取りながら、実質的には同様の結果を導こうとするものだ。
Microsoftの攻撃的なブラウザ戦略は、2020年のChromiumベースEdge発表以降、着実にエスカレートしている。当初は単にEdgeを自動的に起動させるという比較的穏健な手法から始まったが、その後、Windowsのプラットフォームとしての特権を最大限に活用する方向へと進化していった。
特に注目すべきは、Windows 11での既定ブラウザ変更プロセスの意図的な複雑化だ。従来のWindowsでは簡単だった既定ブラウザの変更が、複数のファイル形式やプロトコルごとに個別の設定を要する仕様へと変更された。さらに、サードパーティ製のブラウザ設定支援ツール「EdgeDeflector」をブロックするなど、ユーザーの選択肢を技術的に制限する動きも見られた。
さらに露骨な例として、ユーザーがGoogle Chromeをダウンロードしようとすると、Microsoft Edgeが警告を表示し、ChromeがWindowsに最適化されていないという誤解を招く情報を提示する事例も報告されている。The Vergeの報道によれば、Microsoftはさらに一歩進んで、Bing検索でChromeに関する検索を行った際に、意図的に誤解を招くAI生成の回答を表示するという戦術まで採用しているという。
これらの施策は、個々に見れば些細な「ナッジ」のように見えるかもしれない。しかし、The Vergeが指摘するように、これらが体系的かつ継続的に展開されていることは、Microsoftが意図的にプラットフォームの影響力を行使して、ユーザーの選択の自由を制限しようとしている証左といえる。特に懸念されるのは、こうした行為がWindowsというオペレーティングシステムへの信頼性そのものを揺るがしかねない点である。
Xenospectrum’s Take
Microsoftの一連の行動は、技術的な優位性ではなく、プラットフォームの支配力を利用したユーザー獲得戦略の表れといえる。特に懸念されるのは、ユーザーインターフェースの意図的な操作(ダークパターン)を用いて、ユーザーの選択を誘導している点だ。
この手法は短期的なシェア拡大には効果があるかもしれないが、長期的にはユーザーの信頼を損ない、Windows OSやCopilotなどのAIサービスへの不信感にも波及しかねない。Microsoftは「選択の自由」と「プラットフォーム責任」の均衡を、改めて見直す必要があるだろう。
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