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Google Pixel 11向けTensor G6、コスト削減優先でGPUはTensor G5から”ダウングレード”の可能性

Y Kobayashi

2024年11月12日

GoogleのPixelシリーズ向け次世代プロセッサTensor G6において、コスト削減を優先するためGPU性能が現行のTensor G5から実質的なダウングレードとなる可能性が明らかになった。Android Authorityが入手した社内文書によると、この判断の背景には収益性改善という切実な事情があるという。

Tensor G6開発の実態:コスト重視の選択が示す戦略転換

GPUの後退とその背景

GoogleのgChips部門から流出した内部文書によれば、Tensor G6のGPU選定において、開発チームは2つの選択肢を検討していた:

  1. Tensor G5と同じIMG DXT(レイトレーシング対応)を採用し、レイトレーシング機能を省いてダイ面積を削減する案
  2. 「Redondo」(キャンセルされたTensor G4向け)用に開発されていたIMG CXT(レイトレーシング非対応)を転用する案

最終的に採用されたのは後者のアプローチだった。この決定により、以下のような仕様変更が確定しているという:

  • 採用GPU: IMG CXT(3コア)
  • 動作周波数: 1100MHz
  • ダイ面積: 14.1mm²(N3Pプロセス)
  • 削除される機能:
    • レイトレーシング
    • GPUの仮想化サポート

プロセス技術による補完

一方で、製造プロセスの進化により、一定の効率改善は期待できる状況だ。Tensor G6ではTSMCのN3Pプロセスを採用し、これによって:

  • N3Eプロセス比で約4%のダイ面積削減
  • より優れた電力効率
  • 熱制御の改善

といった利点が得られる見込みである。

CPU構成の最適化

CPUアーキテクチャについても、興味深い選択がなされている。まだ最終決定には至っていないものの、現時点での設計では:

  • 1基のCortex-X930(未発表)
  • 6基のCortex-A730(うち2基は高クロック設定)
  • 効率重視の判断からCortex-A5xxクラスのコアは不採用

という構成が検討されている。これは従来のbig.LITTLE構成からの大きな転換を示唆している。

実用機能への注力

性能面での譲歩の一方で、実用的な機能の強化も計画されている。例えば:

  • 新しい「Cinematic Rendering Engine」の搭載
  • 動画撮影時の電力消費を約40%削減
  • より効率的な画像処理パイプラインの実装

これらの改善は、Googleが掲げる「ベンチマークではなくユーザー体験の向上」という方針に沿ったものといえる。

このような詳細な実装の変更は、GoogleのTensor開発における優先順位の明確な変化を示している。純粋な性能向上よりも、実用性とコスト効率の最適なバランスを追求する姿勢が顕著だ。

収益性改善が最優先課題に:65ドルへの挑戦と事業存続の岐路

厳しい財務目標の実態

Android Authorityが入手した内部文書では、「TensorベースのPixelプログラムが財務目標を達成していない」という厳しい現状が明かされている。特に注目すべきは、事業存続の判断基準として、チップ1個あたりのコストを約65ドルまで削減する必要があるとされている点だ。この目標値は、Qualcommの最新フラグシップチップの推定価格150ドルと比較すると、驚くべき低さといえる。具体的な現状のコストは明らかにされていないものの、目標値からは依然として大きな隔たりがあることが示唆されている。

コスト削減への包括的アプローチ

この野心的なコスト目標を達成するため、Googleは複数の側面から最適化を進めている。まず注目されるのが、ダイサイズの削減だ。現行の121mm²から105mm²への縮小を目指し、さらにTSMCのN3Pプロセス採用により追加で4%の面積削減を見込んでいる。この目標サイズはApple A18 Proと同等であり、業界標準に近づけようとする意図が読み取れる。

さらに、機能面での選択と集中も進められている。DSPのコア数削減やシステムレベルキャッシュの半減(8MBから4MB)、そしてレイトレーシング機能の割愛といった判断からは、実用性を損なわない範囲での徹底的なコスト削減姿勢が見て取れる。

収益性と品質のジレンマ

しかし、このようなコスト削減は深刻なトレードオフを伴っている。現行のPixel端末では、返品の28%が熱問題に起因しているほか、バッテリー持続時間への不満も根強い。さらに、性能面での競合との差が拡大する可能性も否定できない。パフォーマンスを重視するユーザーからの評価低下や、コストパフォーマンスへの期待と現実のギャップは、ブランドイメージにも影響を及ぼしかねない状況だ。

将来への布石

一方で、このコスト構造の改善は、長期的な競争力強化のために不可欠な施策として位置づけられている。規模の経済を活かした収益性の改善は、持続可能な開発投資を可能にし、カスタムチップならではの差別化戦略を継続するための基盤となる。

Tensor G6の開発は、単なる技術的な進化の域を超え、GoogleのスマートフォンE事業全体の存続をかけた重要な転換点となっている。65ドルという挑戦的なコスト目標の達成が、今後のPixelシリーズの命運を左右することは間違いないだろう。


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