AMDが2025年1月後半、ハイエンドゲーミングプロセッサーの新製品として、16コア32スレッドの「Ryzen 9 9950X3D」と12コア24スレッドの「Ryzen 9 9900X3D」を発売する見込みであることが、信頼性の高いリーカーとして知られるHoang Anh Phu氏によって報告されている。両製品はCES 2025で正式発表される見込みだ。
第2世代3D V-Cacheを搭載した新設計
新製品は、AMDの最新アーキテクチャ「Zen 5」を採用し、第2世代の3D V-Cache技術を実装する。この技術革新により、CCDとキャッシュの配置が大きく見直され、さらなるパフォーマンス向上が期待される。フラッグシップモデルとなるRyzen 9 9950X3Dは16コア32スレッドを搭載し、16MBのL2キャッシュと128MBのL3キャッシュを組み合わせることで、総計144MBという大容量のキャッシュメモリを実現する。L3キャッシュは、CCDごとに64MBのキャッシュを備え、そこに追加で64MBの3D V-cacheスタックを積層する構造を採用している。
一方、Ryzen 9 9900X3Dは12コア24スレッドを実装し、12MBのL2キャッシュと128MBのL3キャッシュを組み合わせることで、総キャッシュ容量140MBを達成する。両モデルともDDR5-5600のメモリをサポートし、2基のRDNA 2 CUを統合したグラフィックス機能も備える。TDPについては、現行のRyzen 7 9800X3Dが採用する120Wを踏襲する可能性が高いが、マルチスレッド性能の向上やオーバークロック時の余裕を確保するため、170Wまでの引き上げも検討されているという。
興味深いのは、ゲーミング時の消費電力効率が極めて高いという特徴だ。3D V-Cache技術により、ゲーム実行時の消費電力を大幅に抑制しながら高いパフォーマンスを実現できる。一方で、マルチスレッド処理時やオーバークロック時には、より高いTDP設定を活用することで、状況に応じた柔軟な性能発揮が可能となっている。具体的な動作クロックについては未発表だが、既存のRyzen 9 9950Xが基本クロック4.3GHz、ブーストクロック5.7GHzを実現していることから、3D V-Cache版でもこれに近い水準が期待される。
なお、両モデルともにオーバークロックを完全にサポートする。これは、現行のRyzen 7 9800X3Dで好評を博している機能を踏襲したものであり、エンスージアストユーザーの期待に応える仕様となっている。メモリコントローラーの改良も施されており、DDR5メモリとの組み合わせによる更なる性能向上も見込まれる。
シングルCCD構成での3D V-Cache実装を採用
Hoang Anh Phu氏によってもたらされた情報として、もう一つの注目すべきことは、「Ryzen 9 9950X3D」と「Ryzen 9 9900X3D」が、デュアルCCD構成でありながら3D V-Cacheの実装は片方のCCDのみとなることだ。この設計方針は前世代のRyzen 7000シリーズを踏襲したものだが、非対称なCCD構成に起因する特殊な課題が存在する。
具体的には、ゲーミング性能を最大化するために3D V-Cache搭載のCCDを優先的に使用する一方で、高単一スレッド性能が求められるアプリケーションでは通常のCCDを活用するという、複雑なスレッドスケジューリングが必要となる。
これに対応するため、マザーボードメーカー各社は独自の「X3D Turbo」技術を実装している。この最適化技術は、SMT(同時マルチスレッディング)の無効化や、特定のCCDの無効化といった高度な制御を可能にする。これにより、ゲーミング時には3D V-Cache搭載のCCDに処理を集中させ、その他の用途では両方のCCDを柔軟に活用するといった、状況に応じた最適なパフォーマンスチューニングが実現できる。
多くのエンスージアストユーザーは、両方のCCDに3D V-Cacheを搭載することで、より均一な性能特性が得られると期待していた。しかし、AMDは製造コストと性能のバランスを考慮し、シングルCCD構成での3D V-Cache実装を選択したとみられる。Hardware Canucksによる検証では、この「X3D Turbo」技術がRyzen 7000シリーズおよび9000シリーズの両方で効果的に機能することが確認されており、非対称なCCD構成によるデメリットは実用上最小限に抑えられている。
さらに、第2世代3D V-Cache技術では、CCDとキャッシュの配置順序を前世代から逆転させる革新的な設計を採用している。この設計変更により、キャッシュアクセスの効率化が図られ、より高いゲーミング性能の実現が期待できる。また、マザーボードメーカーが提供する最適化技術と組み合わせることで、用途に応じた柔軟なパフォーマンスコントロールが可能となり、シングルCCD構成でのV-Cache実装というデザイン上の制約を効果的に補完している。
Sources
- Hoang Anh Phu
- via VideoCardz: AMD Ryzen 9 9950X3D and 9900X3D launching end of January, 3D V-Cache only on one CCD
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