Intelは2025年のCESにおいて、ノートPC向けの新世代プロセッサー、Core Ultra 200HXおよび200Hシリーズを発表した。新製品は「Arrow Lake」アーキテクチャを採用し、最大24コアと5.5GHzの動作周波数を実現。AIアクセラレーション機能を標準搭載し、高性能ゲーミングから薄型軽量ノートまで、幅広い製品セグメントをカバーする。
「Core Ultra 200HX/200H」製品ラインナップと主要スペック
Core Ultra 200HX
新製品は、デスクトップ級の性能を目指す「Core Ultra 200HX」シリーズと、メインストリーム向けの「Core Ultra 200H」シリーズの2つのカテゴリーで展開される。フラッグシップモデルのCore Ultra 9 285HXは、8個のパフォーマンスコア(Pコア)と16個の高効率コア(Eコア)を組み合わせた合計24コアを搭載し、最大5.5GHzのブースト周波数と36MBのキャッシュを実現している。同シリーズには、やや低い5.4GHzで動作するCore Ultra 9 275HXも用意され、ハイエンド市場をカバーする。
中位モデルとなるCore Ultra 7シリーズでは、265HXと255HXの2モデルが投入される。これらは20コア構成を採用し、30MBのキャッシュメモリを搭載。最大でそれぞれ5.3GHz、5.2GHzまでの動作周波数を実現する。エントリー層を担うCore Ultra 5シリーズは、245HXと235HXの2モデルで構成され、14コア構成と24MBのキャッシュを採用。最大5.1GHzでの動作が可能だ。200HXシリーズ全体の特徴として、ベース電力は55W、最大ターボ時の消費電力は160Wに設定されている。
また、一部のIntel Core Ultra 200HX SKUは、性能をさらに調整するためのオーバークロック・オプションとして、DDR5 SODIMMオーバークロック用のIntel Extreme Memory Profile (XMP) のサポート。 新しいオーバークロック・インターフェースには、ダイ・ツー・ダイおよびファブリックが含まれ、16.6メガヘルツ比などの制御が可能。Intel Speed Optimizer機能を使用したワンクリック・オーバークロックが可能なIntel Extreme Tuning Utility の対応などが含まれる。
Core Ultra 200H
一方、薄型ノート向けのCore Ultra 200Hシリーズは、最上位のCore Ultra 9 285Hで6個のPコア、8個のEコア、2個の低電力Eコアを組み合わせた16コア構成を採用する。統合GPUとしてXe-LPG+アーキテクチャを採用し、最大8個のXeコアによって前世代比15%の性能向上を達成。消費電力は用途に応じて柔軟な設定が可能で、プロセッサーベース電力は28-45W、最大ターボ時は60-115Wの範囲で設定できる。これにより、OEMメーカーは同一プロセッサーで異なる性能特性を持つ製品を展開できる。
なお、200Hシリーズには注意が必要で、Arrow Lakeアーキテクチャを採用する「Core Ultra」ブランド製品と、従来のRaptor Lakeアーキテクチャを使用する「Core」ブランド製品が混在している。両者は製品名の3桁目の数字で区別され、Arrow Lake採用モデルは「5」(例:285H)、Raptor Lake採用モデルは「0」(例:280H)となっている。この違いは性能や電力効率に直接影響するため、製品選択時には注意が必要となる。
ノートPC向けIntel Coreプロセッサ一覧
コア数(P+E+LPE) | スレッド数 | ターボクロック(Pコア/Eコア、GHz) | スマートキャッシュ | パワーベース/ターボ(W) | メモリスピード | メモリ容量 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Core Ultra 9 258H | 16 (6+8+2) | 16 | 5.4 / ? | 24 MB | 45 / 60-115W | DDR5-6400 / LP5x 8400 / LP5/5x CAMM2 | 96 GB (DDR5) / 64 GB (LP5/x) |
Intel Core Ultra 9 185H* | 16 (6+8+2) | 22 | 5.1 / 3.8 | 24 MB | 45 / 115W | DDR5-5600, LPDDR/x-7467 | 64GB (LP5)/96GB (DDR5) |
Core Ultra 7 265H | 16 (6+8+2) | 16 | 5.3 / ? | 24 MB | 28 / 60-115W | DDR5-6400 / LP5x 8400 / LP5/5x CAMM2 | 96 GB (DDR5) / 64 GB (LP5/x) |
Intel Core Ultra 7 165H | 16 (6+8+2) | 22 | 5.0 / 3.8 | 24 MB | 64 / 115W | DDR5-5600, LPDDR/x-7467 | 64GB (LP5)/96GB (DDR5) |
Core Ultra 7 255H | 16 (6+8+2) | 16 | 5.1 / ? | 24 MB | 28 / 60-115W | DDR5-6400 / LP5x 8400 / LP5/5x CAMM2 | 96 GB (DDR5) / 64 GB (LP5/x) |
Intel Core Ultra 7 155H | 16 (6+8+2) | 22 | 4.8 / 3.8 | 24 MB | 64 / 115W | DDR5-5600, LPDDR/x-7467 | 64GB (LP5)/96GB (DDR5) |
Core Ultra 5 235H | 14 (4+8+2) | 14 | 5.0 / ? | 18 MB | 28 / 60-115W | DDR5-6400 / LP5x 8400 / LP5/5x CAMM2 | 96 GB (DDR5) / 64 GB (LP5/x) |
Intel Core Ultra 5 135H | 14 (4+8+2) | 18 | 4.6 / 3.6 | 18 MB | 64 / 115W | DDR5-5600, LPDDR/x-7467 | 64GB (LP5)/96GB (DDR5) |
intel Core Ultra 5 225H | 16 (6+8+2) | 16 | 4.8 / ? | 18 MB | 28 / 60-115W | DDR5-6400 / LP5x 8400 / LP5/5x CAMM2 | 96 GB (DDR5) / 64 GB (LP5/x) |
Intel Core Ultra 5 125H | 14 (4+7+2) | 18 | 4.5 / 3.6 | 18 MB | 64 / 115W | DDR5-5600, LPDDR/x-7467 | 64GB (LP5)/96GB (DDR5) |
AI機能と新技術
「Core Ultra 200HX/200H」の両シリーズに搭載されたNPU(Neural Processing Unit)は、専用のAIアクセラレーション機能を提供する。200HXシリーズでは最大13.1TOPS、200Hシリーズでは最大11TOPSのAI演算性能を実現している。しかし、これらの数値はMicrosoftのCoPilot+ PC認証が要求する40 TOPS以上という基準には届かず、すでに発売されているLunar Lake搭載モデルが、現時点でIntel製品の中で唯一CoPilot+認証を取得できる状況となっている。
ただし、システム全体でのAI処理性能に着目すると、異なる様相が見えてくる。特に200Hシリーズでは、GPUが最大77TOPSの演算性能を提供し、CPUの11TOPSと合わせてプラットフォーム全体で最大99TOPSものAI処理性能を実現している。これにより、NPU単体では基準を満たせないものの、システム全体としては十分なAI処理能力を確保している。
メモリシステムにおいても大幅な進化が見られる。新製品は従来のDDR5-6400やLPDDR5x-8400といった高速メモリ規格に加え、新たに策定されたCAMM2(Compression Attached Memory Module 2)規格にも対応する。これにより、ノートPCにおけるメモリの実装自由度が高まり、製品設計の柔軟性が向上している。ただし、最大メモリ容量については200Hシリーズで前世代の192GBから96GBに減少しているが、モバイル用途では実用上の影響は限定的と考えられる。
接続技術では、統合Thunderbolt 4コントローラーを標準搭載し、外付けデバイスとの高速接続を実現。さらに、別途専用チップを追加することでThunderbolt 5への対応も可能となっている。無線通信では最新のWi-Fi 7およびBluetooth 5.1規格をサポートし、高速かつ安定した無線接続環境を提供する。特に200HXシリーズでは、PCIe Gen5とGen4のレーンを合わせて最大48レーンまでサポートしており、次世代の高速ストレージや外付けGPUの接続に対応する十分な拡張性を確保している。
パッケージング技術でも注目すべき進展があり、プロセッサーパッケージ全体で前世代比33%の小型化を実現している。これにより、高性能を維持したまま、よりスリムなノートPC設計が可能となった。特に200HXシリーズでは、デスクトップ向けArrow Lakeと同じダイを使用しながら、BGAパッケージに最適化することで、モバイル環境での実装を可能としている点が技術的な特徴となっている。
これらの新製品は、2025年2月からCore Ultra 200H/200Uシリーズが、2025年前半にはCore Ultra 200HXシリーズが順次市場投入される予定だ。特にゲーミング向けの200HXシリーズは、新世代の専用GPUの発売時期に合わせて展開されることが明らかにされている。
Source
コメント