HumaneのAI搭載ウェアラブルデバイス「AI Pin」は、残念ながら短命に終わる。HPによるHumaneの買収に伴い、AI Pinは2025年2月28日をもってサービスを終了する。この買収は、HPのAI分野における大きな一歩となるが、AI Pinのユーザーにとっては、高価なデバイスが使えなくなるという痛手を伴うものだ。
AI Pin、志半ばで幕
HumaneのAI Pinは、スマートフォンに代わるウェアラブルデバイスとして、2023年11月に華々しく登場した。音声コマンドやレーザープロジェクターによる操作が特徴で、699ドルという価格と月額24ドルのサブスクリプションにも関わらず、一部で注目を集めた。
しかし、CNETのScott Stein氏をはじめとするレビュアーからは、使い勝手の悪さや機能の不十分さ、発熱問題などが指摘されていた。AIソフトウェアの誤答や応答の遅さ、バッテリーの発熱問題など、技術的な課題も多く、販売台数は目標の10万台に対し、約1万台にとどまった。
HP、HumaneのAI技術と人材を獲得
HPは、HumaneのAIプラットフォーム「Cosmos」、300件以上の特許を含む知的財産、そして優秀な技術者チームを獲得する。Humaneの共同創業者であるBethany Bongiorno氏とImran Chaudhri氏もHPに加わる予定だ。
HPのTechnology and Innovation担当プレジデントであるTuan Tran氏は、「この投資により、AIリクエストをローカルとクラウドでシームレスに連携させる新世代デバイスの開発が加速する」と述べている。Humaneの技術は、HPのAI PCやスマートプリンターなど、幅広い製品に統合され、新たな機能を提供することが期待される。
買収されたHumaneの従業員は、HP内に新設されるAIイノベーションラボ「HP IQ」に所属し、HPの製品とサービス全体でインテリジェントなエコシステムを構築することに焦点を当てる予定だ。
ユーザーへの影響と今後の展望
AI Pinのサービス終了に伴い、通話、メッセージ、AIクエリ、クラウドアクセスなどの機能が利用できなくなる。Humaneは、2025年2月28日までにWi-Fi経由でAI Pinを同期し、保存されている写真、ビデオ、メモを.Centerからダウンロードするよう強く推奨している。この日を過ぎると、すべてのユーザーデータが削除される。
Humaneは過去90日以内にデバイスを購入したユーザーに対してのみ返金を行うと発表している。
XenoSpectrum’s Take
Humane Ai Pinのサービス終了は、革新的なアイデアを持つスタートアップであっても、製品の市場適合性、実用性、そして持続可能なビジネスモデルの確立がいかに重要であるかを改めて示す事例となった。Ai Pinは、斬新なコンセプトとデザインで注目を集めたが、実際のユーザー体験は期待に応えられず、商業的な成功には至らなかった。
しかし、Humaneが培ってきたAI技術と人材は、HPによって新たな命を吹き込まれ、同社のAI戦略の中核を担うことになる。HPの潤沢な資金力とグローバルな販売網、そしてHumaneの革新的なAI技術が融合することで、AI PC市場に新たな波が生まれるかもしれない。
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