Googleは先週、Trump政権下の司法省に対し、同社の分割を求める強硬策の再考を要請した。国家安全保障上の懸念を理由に、ChromeブラウザやAI投資に関する制限の緩和を求める同社の働きかけは、Biden政権時代の厳しい規制方針からの転換を期待しての動きとみられる。
Googleの国家安全保障論理と司法省への働きかけ
Alphabet社の代表者たちは先週、司法省との非公開会談の場で、オンライン検索市場での独占に関する判決後の対応策について、より寛容なアプローチを求めた。Googleの広報担当者であるPeter Schottenfels氏は「我々は規制当局とこの訴訟について定期的に会談しており、現在の提案が米国経済と国家安全保障に害を与えるという懸念を公に表明している」と述べている。
具体的な国家安全保障への影響については詳細を明かしていないものの、Googleは過去にAndroidとChromeに対する同社の継続的な投資がなければ、セキュリティアップデートの頻度が低下する可能性があると主張してきた。また、1月の別の投稿では、サイバーセキュリティの脅威対策において同社が政府とAI技術を活用した協力を行っていることも強調している。
この働きかけは「急進的な介入主義的アジェンダがアメリカ人とアメリカの世界的テクノロジーリーダーシップを害するだろう」とするGoogleの主張の延長線上にある。ただし、先週の会談では司法省の提案変更から生じる具体的な脅威については触れなかったとされる。
反トラスト訴訟の経緯と政権交代の影響
2024年8月、連邦判事のAmit Mehta氏はGoogleが検索および検索広告市場を違法に独占していると認定した。これを受けてBiden政権下の司法省は11月、同社に対して:
- 人気WebブラウザChromeの売却
- ライバル企業へのデータライセンス供与
- AppleなどへのGoogleの検索エンジンプリインストール支払いの禁止
- AI企業への投資制限
などを含む厳格な措置を求めていた。
Trump政権への移行に伴い、司法省の人員構成も変化。Omeed Assefi反トラスト担当代理補佐官が、Trump大統領の指名したGail Slater氏が承認されるまで部門を指揮している。今週金曜日までに両者は連邦判事への最終提案を提出する予定だ。
Googleの立場は、最近のTrump大統領とJD Vance副大統領による発言とも一致している。先月、ホワイトハウスはEUのデジタル市場法とデジタルサービス法を特に名指しし、「アメリカの経済は、自国の経済的成功を育てることに失敗した国々の収入源にはならない」と批判した。
今後の展開と業界への影響
両者の最終提案が提出された後、この救済フェーズは4月に本格的に始まる見込みで、最終判決は8月頃に予想される。現在司法省が検討している変更点には、Googleのローカル投資に対する制限を遡及的に適用するか、または将来のみを対象とするかという問題も含まれる。現行の提案では、GoogleはAnthropicなど同社が投資するAI企業からの資本引き上げを余儀なくされる可能性がある。
この反トラスト訴訟の行方は、テクノロジー業界全体に大きな影響を与える可能性がある。20年前のMicrosoftの分割未遂以来、最大規模の企業分割案に発展する可能性もあり、2022年にはGoogleを含む主要テック企業が、米国テクノロジーセクターの中国に対する競争力低下を理由に反トラスト法案に反対した経緯もある。
一方で、規制当局はGoogleの主張に対して懐疑的な姿勢を崩していない。分割案回避を目指すGoogleと厳格な規制を求める声のバランスをどう取るか、司法省の判断が注目される。
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