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HuaweiがLDP技術で独自EUVリソグラフィ装置を開発:2026年量産へ

Y Kobayashi

2025年3月9日

中国Huaweiが米国制裁を迂回する新たな半導体技術として、独自のEUVリソグラフィ装置の開発を進めている。従来のASML製造装置とは異なるレーザー誘起放電プラズマ(LDP)技術を採用したこの装置は、現在東莞施設でテスト中であり、2025年第3四半期の試験生産、2026年の量産開始を目指しているようだ。

LDP技術がもたらす技術的優位性

Huaweiが開発中のEUV装置が注目される最大の理由は、その革新的な技術アプローチにある。この装置はレーザー誘起放電プラズマ(LDP)技術を採用しており、ASMLが使用するレーザー生成プラズマ(LPP)技術とは大きく異なるものだ。

LDP方式では、レーザーを使って少量のスズを気化させ、2つの電極間に雲状のガスを形成する。次に電極間に高電圧をかけてエネルギーを注入し、スズの雲をプラズマに変換。このプロセスで電子と高原子価スズイオンが衝突して放射し、半導体製造に必要な13.5nmの波長を持つEUV光を生成する。

この技術はASMLのLPP方式と比較して顕著な利点を持つ:

  • 単純化されたアーキテクチャ: LPP方式が高エネルギーレーザーと複雑なFPGAベースのリアルタイム制御電子機器を必要とするのに対し、LDP方式はより単純な構造を実現
  • コンパクトなサイズ: 構造がシンプルなため、装置全体のフットプリントが小さい
  • 高いエネルギー効率: 電気エネルギーを直接プラズマに変換するため、エネルギー利用効率に優れる
  • コスト効率: 技術的な複雑さが低減されることで、生産コストが大幅に抑えられる可能性がある。ASMLの最新High-NA EUVツールが約3億8000万米ドルであることを考慮すると、これは極めて重要な競争優位点となる

米国制裁下での独自開発とその戦略的重要性

EUVリソグラフィ技術は現代の半導体産業において極めて重要な位置を占めている。7nm(ナノメートル)未満の微細なチップを製造するためには、EUV技術が不可欠であり、現在まで世界でこの装置を製造できるのはオランダのASMLのみだった。

米国の厳しい輸出規制により、ASMLは2019年以降、中国への最先端EUV機器の販売を禁止されている。このため中国の半導体企業は標準的な深紫外線(DUV)リソグラフィシステムに頼らざるを得ず、これが先端プロセスノードでのチップ製造能力を制限してきた。DUVシステムは248nm(KrF)や193nm(ArF)の波長を使用しており、EUVの13.5nmと比較して解像度が大幅に低い。

中国の技術的自立を目指す取り組みは学術研究でも進んでいる。ハルビン工業大学の趙勇鵬教授が率いる「放電プラズマ極紫外リソグラフィ光源」プロジェクトは、高エネルギー変換効率、低コスト、コンパクトサイズ、比較的低い技術的難易度を特徴とする技術開発で最近表彰された。このプロジェクトはHuaweiの装置開発に影響を与えている可能性がある。

課題と半導体産業への潜在的影響

一方、HuaweiのEUV開発には依然として複数の技術的課題が残されている:

  • 放電パルスの最適化: パラメータとタイミングの最適化は依然として重要な技術的課題
  • 出力制限: LDP技術が商業的に実用的な出力レベルを達成できるかという懸念
  • 解像度とスループット安定性: 商業生産に必要な解像度能力と安定したスループットの実現
  • 製造ワークフローとの統合: 既存の半導体製造ラインへの統合も複雑な課題。堅実な半導体製造ワークフローの構築には通常数年を要する

SMICなどの中国の主要ファウンドリはすでにHuaweiと協力して、これらのEUVスキャナーを既存の製造プロセスに統合する取り組みを進めているとされる。

HuaweiのEUV装置開発が成功すれば、ASMLのEUVリソグラフィ市場における独占状態に挑戦することになり、グローバルな半導体サプライチェーンに大きな変化をもたらす可能性がある。中国半導体産業にとって、これは制裁下でも技術的な発展を遂げる「DeepSeek」モーメント(革命的なブレイクスルー)となりうる。


Sources

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