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AMD次世代Zen 6「Medusa Ridge」CPUは最大32コア・128MBキャッシュ搭載か

Y Kobayashi

2025年3月9日

AMDの次世代アーキテクチャ「Zen 6」を採用する「Medusa Ridge」デスクトップCPUについて、新たなリークによると12コア、24コア、そして最大32コアのバリエーションで、最大128MB L3キャッシュを搭載する可能性があるとのことだ。現行世代Ryzenプロセッサの最大16コアから大幅に増加するこの新世代CPUは、2026年頃にRyzen 10000シリーズとして登場する見込みとなっている。

リークされた次世代Zen 6 CPUの仕様詳細

中国のフォーラム「ChipHell」の著名なリーカー「zhangzhonghao」によって、AMDの次世代Zen 6アーキテクチャに基づくCPUコアの詳細がリークされた。

zhangzhonghao氏によれば、標準密度設計の「Zen 6」CCD(コンピュート・コア・ダイ:CPUコアを含むチップレット)は12コアと48MB L3キャッシュを搭載する。これは現行のZen 5アーキテクチャと比較して、コア数が8コアから12コアへと50%増加、L3キャッシュ量も32MBから48MBへと50%増加していることになる。そのため、デュアルチップレットプロセッサには、 24個のコアと96MBのL3キャッシュが搭載されることになる。

一方、高密度設計の「Zen 6c」CCDについては解釈が分かれている。一つの説では、Zen 6c CCDは現行のZen 5cと同様に16コアを維持しつつ、L3キャッシュ量を32MBから64MBへと倍増させるというもの。もう一つの説では、Zen 6c CCDは一つのチップレットに32コアと64MB L3キャッシュを搭載するという、より野心的な解釈だ。HotHardwareは「これは興味深いアイデアであり、初期のZen 5cのリークでも、CCDあたり32コア(チップレットあたり2つの16コアCCX)が主張されていた」と指摘している。

複数のソースから報告されている可能性のある構成は以下の通りだ:

  • シングルZen 6 CCD:12コア、48MB L3キャッシュ
  • デュアルZen 6 CCD:24コア、96MB L3キャッシュ
  • シングルZen 6c CCD:16コア(または32コア)、64MB L3キャッシュ
  • デュアルZen 6c CCD:32コア、128MB L3キャッシュ

これらの構成から、AMDは次世代デスクトップCPUラインナップとして12コア、24コア、32コアという3つの主要なバリエーションを提供する可能性が高い。特に注目すべきは、これまでサーバー市場向けEPYCプロセッサでしか見られなかった32コアという高コア数がデスクトップ市場にも導入される可能性があることだ。

Zen 6/Zen 6cアーキテクチャの進化とその技術的意義

AMDはこれまで、デスクトップ向けRyzenプロセッサのトップエンドモデルを16コアで4世代(Ryzen 3000、5000、7000、9000シリーズ)にわたって維持してきた。これに対し、一部のファンからはIntel同様の「停滞」と批判する声もあった。今回のリーク情報が正確であれば、AMDは次世代製品で最大32コアという大幅な飛躍を実現することになる。

Zen 6アーキテクチャは「Medusa」コアデザインと呼ばれ、ダイシュリンク(製造プロセスの微細化)と共に登場すると予想されている。ダイシュリンクにより、同じダイサイズでもより多くのトランジスタを集積できるようになり、コア数とキャッシュ量の増加を技術的に可能にしていると考えられる。これには製造プロセスの進化が鍵となるだろう。

また、標準密度設計の「Zen 6」と高密度設計の「Zen 6c」の両方のCCDがあることで、AMDは様々な市場セグメントに対応する製品を柔軟に展開できる。リークによれば、現行世代では標準密度と高密度のコアを混在させたチップレットプロセッサは存在しないが、技術的には可能であり、将来的には混合構成の製品も登場する可能性もあるだろう。

これまでの情報では、Zen 6ベースのCPUはAM5ソケットとの互換性を維持するとされており、最近マザーボードを買い換えた人々にとっては朗報となりそうだ。

そして、AMDは現行世代でもX3D技術を用いたキャッシュ拡張モデルを展開しており、Zen 6世代でもX3D技術が適用される可能性もある。現在明らかになっているものは全て非X3Dパーツなので、3D-Vcacheを適用すれば現行の3Dキャッシュ積層技術により、さらに大容量のキャッシュを搭載したモデルが期待出来るだろう。

来週発売となるRyzen 9 9950X3DでもデュアルX3Dキャッシュは導入されていないが、これは技術的な制限ではなく、経済的な要因によるものとも言われており、将来的にコスト効率が改善され、更に大容量のキャッシュを搭載する可能性もありそうだ。

コア数増加の実用性と市場戦略

一般的なデスクトップ用途では高コア数のメリットが限定的であることも事実だろう。

しかし、コンテンツ制作やシミュレーション、仮想化など、高コア数の恩恵を受けられる専門的な用途も確実に存在する。AMDがデスクトップ市場で最大32コアのCPUを投入することで、これまでワークステーション市場やサーバー市場に限定されていた高コア数プロセッサを、より広い層のユーザーが利用できるようになる可能性がある。

また、ゲーム市場においても、ゲームエンジンがマルチコア活用に最適化されるにつれて、高コア数CPUのメリットが増加する傾向にある。特にストリーミングやバックグラウンドタスクを同時に行うゲーマーにとっては、コア数の増加は実用的なメリットをもたらすはずだ。

AMDがデスクトップ市場で32コアCPUを投入する戦略は、Intelに対する技術的優位性をアピールする効果も大きい。現在のIntelの消費者向け最上位CPUは24コアであり、AMDが32コアを実現すれば、明確な差別化ポイントとなる。

デスクトップCPU市場の変革を予感させるリーク

AMDの次世代Zen 6「Medusa Ridge」CPUに関するリーク情報は、デスクトップCPU市場に大きな変革をもたらす可能性を示唆している。最大32コアと128MB L3キャッシュという仕様は、現行世代のRyzenプロセッサと比較して大幅な性能向上を実現する可能性がある。

特に注目すべきは以下の点だ:

  1. Zen 6 CCDは12コアと48MB L3キャッシュを搭載し、現行の8コア32MBから大幅に強化
  2. Zen 6c CCDは最大16コア(または32コア)と64MB L3キャッシュを搭載する可能性
  3. デュアルCCD構成により、最大32コアと128MB L3キャッシュという前例のない高性能が実現可能
  4. AM5ソケットとの互換性維持により、現行マザーボードでもアップグレード可能
  5. X3D技術の適用でさらなるキャッシュ容量の増加も期待できる

ただし、全ての情報はリークに基づくものであり、実際の製品発表までには変更される可能性がある点に留意する必要がある。特に「Zen 6c」CCDが単一チップレットで32コアを実現するかどうかは、技術的に大きなチャレンジとなるだろう。

いずれにせよ、AMDが次世代製品でコア数とキャッシュ量を大幅に増加させる方向性は、高性能コンピューティング市場においてAMDの競争力をさらに高めることになりそうだ。2026年頃と予想される製品発表まで、さらなる情報の登場が期待される。


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