SK GroupのChey Tae-won会長は、供給不足で高騰するメモリ価格を「異常」と呼び、価格は下がるべきだと訴えた。2026年7月15日、韓国・済州島で開かれた第49回KCCI済州フォーラムの記者懇談会で語った。SK hynixを傘下に持つ供給側のトップが値下がりを求めるのは、PCやスマートフォンの値上げが続けば消費者が買わなくなり、メモリ市場の成長も止まるとみるからだ。しかも、顧客から届く2027年のAI関連需要は2026年比で60〜100%増という。短期の利益を守るか、供給を増やして市場を守るか。Chey氏は後者を選ぶべきだと明言した。
顧客要請60〜100%と、広がる2027年の需給差
Chey氏が示した60〜100%は、市場調査会社による中立的な予測ではない。顧客が2027年に求めるAI関連半導体またはメモリの使用量について、同氏が記者懇談会で明かした要請ベースの数字である。毎日経済新聞とハンギョレによると、Chey氏はAI向け半導体が需要全体の半分以上を占めるとの見方を示し、メモリ全体でも2026年比で少なくとも50〜60%の需要増を見込んだ。
メーカーは供給量を需要と同じ速度で増やせない。Chey氏は、2027年に供給量を大きく増やせるメーカーはほとんどなく、2026年より需給差が広がると説明した。そこで、生産を絞って高価格を維持する戦略を否定し、利益率が多少下がっても供給を増やし、市場そのものを育てる方が長期的な利益になると主張した。
Chey氏は、価格が上がりすぎれば新規参入を呼び、各国政府から供給拡大を迫られる可能性が高まると警告した。そのうえで同氏は、建設候補を広く検討し、韓国の龍仁と湖南地域、さらに米国にも言及した。
93〜98%高の先で端末市場が縮む
「異常」という表現には数字の裏付けがある。TrendForceによると、汎用DRAMの契約価格は2026年第1四半期に前四半期比93〜98%上昇した。DRAM業界の売上高も同81%増の970億ドルに膨らんだ。第2四半期も汎用DRAM価格は58〜63%上がると同社は見積もっており、供給側の増収と端末メーカーの原価上昇が同時に進んでいる。
スマートフォンでは値上がりの影響がすでに製品設計へ入り込んだ。主流の8GBメモリと256GBストレージを組み合わせた構成の契約価格は、2026年第1四半期に前年同期比で約200%上昇したとTrendForceは推計する。従来は端末の部品表(BOM)原価の10〜15%程度だったメモリの比率が30〜40%へ上がり、メーカーは価格転嫁か搭載容量の削減を迫られる。
価格転嫁には限界がある。TrendForceは2026年の世界スマートフォン生産を前年比10%減の約11億3,500万台と予測し、弱気シナリオでは減少幅が15%以上へ広がるとみる。メモリメーカーにとって、単価の上昇が数量の減少を招けば、足元の利益率は高くても顧客の製品市場が縮む。Chey氏が警戒するのは、この需要破壊である。
価格上昇が鈍っても不足は消えない
2026年第3四半期のサーバーDRAM契約価格について、TrendForceの予測は前四半期比13〜18%増まで伸び率が鈍る。複数年の長期供給契約(LTA)が一部のクラウド事業者向け価格を抑え、サーバーCPU不足でDRAM在庫が積み上がったためだ。ただし、これは供給不足の解消を意味しない。同社は2027年のRegistered DIMM(RDIMM)供給量をビット換算で前年比15〜20%増と見積もり、サーバーCPUの出荷増に届かないとみている。
60〜100%と15〜20%は対象が違う。前者はChey氏が顧客から受け取ったAI関連需要の要請であり、後者はTrendForceが推計したRDIMMの供給量だ。それでも、AI計算基盤が求めるメモリの伸びに対し、主要なサーバーメモリの増産が限られるという方向は一致する。LTAを結んだ顧客の値上げ幅が抑えられても、契約を持たない顧客や追加購入分に価格上昇が移る可能性がある。
さらに、高帯域幅メモリ(HBM)は同じ記憶容量を作るのに汎用DRAMより多くのウェハーを使う。AI向け製品へ生産を振り向けるほど、工場の床面積や製造装置を増やさなければ総供給量を伸ばしにくい。需要の中心がAIへ移る変化は、既存工場の製品構成を変えるだけでは吸収できない。
1,100兆ウォン戦略と生産開始までの時間差
SK hynixは龍仁、清州、韓国南西部へ段階的に投資する総額1,100兆ウォンの中長期戦略を公表している。内訳は龍仁600兆ウォン、清州100兆ウォン、南西部400兆ウォンだ。今回の発言で新たに投資を決めたわけではなく、実行時期は市場環境と同社の投資原則に応じて変わる。高値を抑えるには、すでに掲げた計画をどれだけ早く生産能力へ変えられるかが問われる。
だが、工場建設は価格シグナルにすぐ反応できない。龍仁では第4工場の建設完了目標を2045年から2033年へ12年前倒ししたものの、SK hynixによれば同クラスターの開発には約9年かかった。清州ではNAND工場M17に80兆ウォン、先端パッケージ施設P&T7などに20兆ウォンを投じる。P&T7の完成は2027年末、M17は2027年に着工して2029年上半期の稼働を目指す。
工場には広い土地と安定した電力・水が要る。さらに、製造装置と熟練人材も確保しなければならない。Chey氏はAIの次の不足先として電力設備やケーブル、その材料まで挙げた。メモリの供給を増やす投資が、別のインフラ不足にぶつかる構造である。
したがって、「価格は下がるべきだ」という発言を近い将来の値下がり予告として読むのは早い。2027年に実際の供給割り当てがどれだけ増えるか、LTAを持たない顧客の価格がどう動くか、P&T7とM17が予定通り立ち上がるか。これらが揃って初めて、AIメモリの成長とPC・スマートフォン市場の購買力を両立できる。



