Micron Technologyが、メモリー供給不足を複数年契約で管理する方向に大きく踏み込んだ。同社は2026年6月24日、2026会計年度第3四半期決算に合わせて、16件の戦略顧客契約(SCA)を締結済みだと明らかにした。2026年3月の前四半期説明では「最初の5年SCA」にとどまっていたため、3カ月で契約網が一気に広がったことになる。

今回の発表で見るべきは、決算数字の大きさだけではない。DRAMNANDの供給不足が長引くという見方を、Micronと顧客が2026年から2030年までの契約に落とし込み始めた点だ。AIデータセンターがメモリーを吸い上げ、工場の増設には時間がかかり、HBMの増産が通常DRAMやNANDの供給余力を圧迫する。その構造が、価格交渉の場から長期契約の条項へ移っている。

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16件のSCAは、価格と供給枠をまとめて押さえる契約だ

Micronが説明したSCAは、従来の長期契約より踏み込んだものだ。多くは2026年から2030年末までの5年契約で、自動車向けは通常3年契約になる。take-or-pay型のため、顧客は複数年にわたって特定量を購入する義務を負う。Micron側から見れば将来の需要と投資計画を読みやすくする仕組みであり、顧客側から見れば逼迫した市況の中でメモリー供給を確保する手段になる。

規模も小さくない。16件のSCAは、対象期間におけるMicronのDRAM数量のおよそ20%、NAND数量の3分の1を占める。同社によれば、契約相手には4社の非常に大きな顧客、3社の中規模顧客、自動車業界の小規模顧客が含まれる。顧客名は明かされていないが、対象市場はデータセンター、コンシューマー、自動車まで広い。

価格条件がこの発表の核心にある。大口契約の多くは、既存製品について2026年第2四半期の市場価格を上限にしつつ、契約期間を通じて下限価格も置く。Micronは、価格帯を持つSCAでは下限価格だけでも過去の市況ピーク期を大きく上回る粗利率を確保できると説明している。一部のSCAは固定価格、または価格帯を持たず市場条件で価格を決める。予定しているSCAがすべて実行されれば、固定価格または現行市場価格に近い上限を持つ契約は同社売上の約40%に達する見込みだ。

高値の市況は、すでに決算数字に表れている

Micronの2026会計年度第3四半期は、SCAの前提となる需給の強さをそのまま映した。売上高は414億5600万ドルで、前四半期の238億6000万ドル、前年同期の93億100万ドルから急増した。非GAAPベースの粗利率は84.9%、非GAAP純利益は288億5700万ドル、希薄化後1株利益は25.11ドルだった。第4四半期についても、売上高500億ドル前後、粗利率約86%、非GAAP EPS 31ドル前後を見込む。

伸びの中身を見ると、数量より価格の変化が大きい。DRAM売上高は313億ドルで前年同期比343%増、全社売上の76%を占めた。前四半期比ではビット出荷が低い1桁台の伸びだった一方、価格は60%台前半上昇した。NAND売上高は99億ドルで前年同期比361%増、全社売上の24%を占めた。NANDもビット出荷の伸びは1桁台半ばだったが、価格は80%台半ば上昇した。

データセンターの存在感も変わった。Micronのデータセンター売上高は四半期で250億ドルを超え、年換算では1000億ドルを上回る水準になった。データセンターSSD売上高は50億ドルを超え、前四半期から2倍以上に伸びた。AI向けの計算基盤が広がるほど、メモリー容量、帯域、低消費電力の要求が高まり、ストレージ側にも需要が波及するというMicronの説明は、この数字と整合する。

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供給不足は2027年を越えるという見方に変わった

Micronは、DRAMとNANDの需給逼迫が2027年を越えて続くと見ている。2028年には業界供給が徐々に改善するとしながらも、需要に追いつく時期は見えていないという。工場を建てればすぐ解決する不足ではない、という判断だ。

理由は複数ある。メモリー供給の伸びには大規模なグリーンフィールド工場が必要だが、建設には長いリードタイムがかかる。熟練技能者の不足、許認可を含む複雑な規制、電力インフラの整備も制約になる。さらに、DRAMの微細化やNANDの世代更新は進むほど難しくなり、同じ投資で得られるビット成長の速度は落ちやすい。

HBMの拡大も、通常のDRAM供給を圧迫する。MicronはHBM4 12-highを主要顧客のプラットフォーム向けに量産出荷しており、HBM4の売上はすでに10億ドルを超えた。HBM4 12-highの立ち上がりはHBM3E 12-highの2倍の速さで進んでいる。一方で、新世代HBMはより多くのウェハーや先端パッケージング能力を必要とするため、非HBM向けDRAMの余力を削る。NAND側でも、業界内でクリーンルーム空間をNANDからDRAMへ振り向ける動きが、NANDのビット供給成長を抑えている。

長期契約は、顧客にとっても苦い保険になる

SCAはMicronに有利なだけの契約ではない。大口顧客にとっても、供給が読めないことは製品計画そのものを揺らす。AIサーバー、スマートフォン、PC、自動車、産業機器は、いずれもメモリー容量と性能を前提に設計される。高値を受け入れても供給枠を確保する方が、製品投入の遅れや構成変更よりましだと判断する顧客が増えている。

その代わり、SCAは高い市況を一定期間受け入れる契約でもある。価格上限がある契約なら、顧客は市場価格がさらに上がった場合の上振れを抑えられる。しかし下限価格がある以上、市況が下がった場合でもMicronの収益性は守られる。Micronは14件のSCAについて、契約上の最低価格に基づく残存期間の累計収益が約1000億ドルになると説明した。

会計上のRPOも、この契約構造を別の角度から示す。締結済みSCAのRPOは、四半期末後に実行された契約を含めて約1000億ドルで、最低数量と最低価格に基づく保守的な見積もりだ。Micronは、実際に認識する収益は関連するRPOを大きく上回ると見ている。

資金面でも、SCAは増産計画と結びつく。Micronは締結済みSCAに基づき、220億ドルの顧客預かり金と関連する金融コミットメントを見込む。このうち約180億ドルは現金預かり金で、フリーキャッシュフローではなく財務キャッシュフローに計上される。現金は契約期間の後半に顧客へ返されるが、足元では設備投資と供給拡大に向けた財務の見通しを支える。

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古いDRAMと国内生産にも、AI需要の余波が回る

AIデータセンター向けの話に見えても、影響は先端HBMだけに閉じない。Micronは米バージニア州Manassas工場で2026年5月に1α世代DRAMの製造を開始した。このラインはDDR4やLP4など、長い製品寿命を持つメモリーに向く。自動車、防衛・航空宇宙、産業、ネットワーク、医療機器のように古い規格を長く使う分野では、最先端ではないメモリーの確保も重要になる。

同社はManassasのDDR4ウェハー供給を4倍にするとしている。AI向けの先端DRAMとHBMに設備と投資が集まるほど、長期供給が必要な旧世代品は手当てが難しくなる。Micronが自動車業界の小規模顧客にもSCAを用意しているのは、この領域の需要が短期の市況で片づかないからだ。

供給拡大の時間軸も長い。Micronはアイダホ州のID1工場で2027年半ば、ID2で2028年後半の初回ウェハー出力を見込む。ニューヨーク州の最初の工場クラスターは2026年1月に着工した。台湾Tongluo拠点の既存300,000平方フィート工場は2027年半ばに意味のある出荷を始める見通しで、シンガポールでは2027年前半からHBMパッケージング能力に寄与する施設を予定する。いずれも必要な投資だが、2026年の供給不足をすぐ緩めるものではない。

次の焦点は、売上の半分がSCA化するかどうかだ

Micronは、予定しているSCAがすべて締結されれば、売上の半分以上がSCAの下に入ると見込む。そこまで進めば、メモリー市況の性格はかなり変わる。価格が周期的に下がる局面が消えるわけではないが、少なくともMicronの売上と利益の一部は、過去より長い契約期間と最低価格に支えられる。

未確定点も残る。16件の契約相手は明かされていない。価格帯の具体的な水準も公表されていない。AI需要が現在の勢いをどこまで保つか、2027年以降の新工場とパッケージング能力が予定通り立ち上がるかも、これから確認が必要だ。Micron自身も第4四半期の粗利率見通しについて、価格上昇ペースは意味のある形で緩やかになると説明している。

それでも、今回のSCA拡大が示す動きは大きい。顧客は高値の一部を受け入れて供給を確保し、Micronはその契約を手がかりに設備投資を積む。AI時代のメモリー争奪戦は、スポット価格だけでなく、2020年代後半の工場建設、先端パッケージング、旧世代DRAMの供給計画まで巻き込む長期戦になってきた。