Micron Technologyの決算は、AI向けメモリ不足が一時的な価格上昇にとどまらず、顧客との複数年契約へ移り始めたことを示した。同社は2026年6月24日、2026年度第3四半期の売上高が414.56億ドルに達したと発表した。前四半期比74%増、前年同期比346%増で、5四半期連続の過去最高売上となる。

数字の大きさ以上に目を引くのは、Strategic Customer Agreements(SCA)の拡大だ。3月時点で最初の5年契約を結んだ段階だったが、今回の決算では締結済みが16件に達した。14件については、残りの契約期間における最低価格ベースの累計売上が約1,000億ドルにのぼる。

メモリ市場では、需要が供給を上回る局面でスポット価格が上がり、供給が増えると価格が崩れるという循環が繰り返されてきた。今回のMicronの説明は、その循環がなくなるという意味ではない。ただ、AIデータセンターからスマートフォン、PC、自動車まで需要が広がるなかで、顧客が将来の供給を契約で押さえにいく段階に入ったことを示している。

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売上414億ドルより重要なは、粗利85%という採算だ

2026年度第3四半期のMicronは、GAAPベースで純利益282.43億ドル、希薄化後EPS 24.67ドルを計上した。非GAAPベースでは純利益288.57億ドル、希薄化後EPS 25.11ドルである。GAAP粗利益率は84.6%、非GAAP粗利益率は84.9%、非GAAP営業利益率は81.2%に達した。

第4四半期のガイダンスも強い。売上高は500億ドルプラスマイナス10億ドル、非GAAP EPSは31.00ドルプラスマイナス1.00ドルを見込む。第3四半期の営業キャッシュフローは253.88億ドル、調整後フリーキャッシュフローは183億ドルで、期末の現金・市場性有価証券・制限付き現金は301.55億ドルだった。

事業別では、AIデータセンター向けの強さがはっきり出ている。Cloud Memory Business Unitの売上は137.69億ドル、Core Data Center Business Unitは115.24億ドルで、合計252.93億ドル、全社売上の約61%に相当する。Mobile and Client Business Unitも115.21億ドル、Automotive and Embedded Business Unitも46.34億ドルまで伸びており、値上がりの恩恵はデータセンターに限られていない。

出荷量より価格が動き、利益率を一気に押し上げた

今回の決算で読み落とせないのは、売上増の内訳だ。DRAM売上は313.28億ドルで全体の76%、NAND売上は99.43億ドルで24%を占めた。前四半期比ではDRAM売上が67%増、NAND売上が99%増である。

ビット出荷量の伸びはずっと小さい。DRAMのビット出荷量は前四半期比で低い1桁台の増加にとどまり、平均販売価格は60%台前半上がった。NANDもビット出荷量は1桁台半ばの増加だったが、平均販売価格は80%台半ば上昇した。Micronの利益を押し上げた主因は、出荷量の急増ではなく、足りない供給に対して顧客がより高い価格を受け入れたことにある。

この傾向は前四半期から続いている。2026年度第2四半期のMicronは売上239億ドル、前年同期比196%増を記録した。その時点でもDRAMの平均販売価格は前四半期比で60%台半ば、NANDは70%台後半上がっていた。第3四半期はその延長線上で、価格上昇がさらに大きな売上と利益率に結びついた。

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16件の長期契約が、メモリ不足を顧客の購買計画へ組み込む

Micronが今回の決算で最も強く打ち出したのはSCAだ。契約は通常、2026年から2030年末までの5年間で、自動車向けはおおむね3年と説明されている。締結済みの16件は、この期間のDRAM数量のおよそ20%、NAND数量の約3分の1に相当する。計画中の契約まで実行されれば、全社売上の半分以上がSCAの対象になる見通しだ。

契約の構造も従来の長期購入契約より踏み込んでいる。SCAは特定数量を購入する拘束力のあるコミットメントを伴い、最大級の契約では既存製品について2026年第2四半期時点の市場価格を上限に、契約期間を通じた下限価格も設ける。固定価格または同四半期の市場価格に近い上限を持つ契約は、計画中のSCAがすべて実行された場合、全社売上の約40%になる見込みだ。

顧客にとっては必要なメモリを確保しやすくなり、Micronにとっては価格下落局面でも一定の採算を保ちやすくなる。締結済みSCAのうち14件は、最低価格ベースで残り期間の累計売上が約1,000億ドルとされる。さらに、締結済みSCAから220億ドルの現金預託金と関連する資金コミットメントを受ける見通しで、その大半にあたる約180億ドルは現金預託金になる。

ただし、これをメモリ市場の価格変動が消える話として読むのは早い。顧客名、製品別の契約条件、価格帯の詳細は開示されていない。預託金は第4四半期以降に貸借対照表へ反映されるが、フリーキャッシュフローには含まれず、契約期間の後半に顧客へ戻される性格の資金だ。SCAの本質は利益をかさ上げする仕組みというより、供給不足の時代に顧客とMicronの双方が将来の数量と価格を読みやすくする仕組みにある。

HBM4とSSDが、AIインフラ設計の内側へ入り込む

製品面では、HBMとデータセンターSSDの伸びが決算の意味を補強している。Micronは1-beta DRAM技術を使うHBM4について、主要顧客のプラットフォーム向けに大量出荷中で、複数の最終顧客へ認定サンプルも出荷したと説明した。1-gamma DRAM技術を使うHBM4Eは開発が進んでおり、2027年の量産を予定する。

HBM4 12-highの立ち上げはHBM3E 12-highの2倍の速さで進んでおり、HBM4売上はすでに10億ドルを超えた。データセンターSSD売上も50億ドルを超え、前四半期から2倍以上になった。G9 NANDベースのPCIe Gen6高性能SSDは大量生産に入り、245TB QLC SSDの出荷も始まっている。

この流れを象徴するのが、MicronとAnthropicの戦略的合意だ。両社は2026年6月22日、メモリとストレージを含むAIインフラ設計、供給契約、Micron社内でのClaude導入、AnthropicのSeries Hへの戦略投資を含む合意を発表した。投資額は開示されていない。メモリ企業が部品を供給するだけでなく、AIモデルを運用する側とインフラの設計段階から関わる形が表に出た。

AnthropicがMicronの16件のSCAに含まれるかは、公表資料からは確認できない。それでも、AI企業がメモリ帯域、容量、ストレージ階層を長期の計算基盤として扱い始めたことは、MicronのSCA戦略と同じ方向を向いている。学習、推論、長いコンテキスト処理、ストレージ階層の設計まで含めて、メモリがAIインフラの制約条件になっている。

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増産しても、2027年を越えて不足が残るという見立て

Micronは供給拡大にも大きく踏み込んでいる。2026年度第3四半期の設備投資はネットで71億ドル、第4四半期は約100億ドルを見込む。2026年度通期の設備投資は約270億ドルになる見通しで、2027年度の四半期ごとの設備投資は第4四半期を上回る計画だ。2027年度の増加分の半分超は、長期需要に対応するためのクリーンルーム建設に向かう。

供給がすぐ追いつくとはMicron自身も見ていない。第2四半期時点でDRAMとNANDの需給が2026年を越えて逼迫すると説明していたが、今回の資料ではその見方を2027年越えへ伸ばし、2028年には供給改善が徐々に進むとしても、需要に追いつく時期は見通せないとした。

理由は複数ある。大規模な新工場は建設に時間がかかり、熟練技能者、許認可、電力インフラにも制約がある。DRAMやNANDの微細化は世代を追うごとに複雑になり、同じクリーンルーム面積から増やせるビット量の伸びも鈍る。HBMは世代が進むほど通常DRAMとのトレードオフが重くなり、一部の業界サプライヤーがNANDのクリーンルームをDRAMへ振り向けることで、NANDの供給増も抑えられる。

Micronの拡張計画はこの制約を前提に組まれている。アイダホ州のID1は2027年半ばに最初のウェハー出力を予定し、ID2は2028年後半を見込む。ニューヨーク州の最初の工場クラスターは2026年1月に着工した。台湾・銅鑼の既存工場は、従来計画より約1四半期早い2027年半ばに一定規模の出荷を始める見通しだ。シンガポールでは、HBM向け高度パッケージング能力が2027年前半から供給拡大に貢献し始めるとされる。

今回の決算が示したのは、MicronがAIブームの追い風を受けたという話にとどまらない。需要が供給を大きく上回るなかで、顧客は数量を契約で押さえ、Micronはその見通しを使って巨額投資を進める。次に問われるのは、2027年以降に立ち上がる生産能力が、SCAで固定された需要とそれ以外に残る幅広いメモリ需要の両方をどこまで満たせるかである。