General Motors(GM)は2026年7月21日、商品市況と物流、それにDRAMの値上がりが通期で15億〜20億ドルのコスト逆風になるとの見通しを示した。中国ではBYDが、ストレージ費の上昇を理由にLiDAR搭載の運転支援オプションを9,900元から12,000元へ引き上げている。両社はAI需要を個別の原因に挙げていないが、AIサーバー向けを優先するメモリ市場の変化と並行して、自動車メーカーの利益計画と先進機能の価格にメモリ費が現れ始めた。
ただし、GMの最大20億ドルはDRAMだけの金額ではない。BYDの改定対象も車両本体ではなく、一部車種に追加する運転支援システムである。確認できる変化は、GMが複合コストの一項目にDRAMを挙げ、BYDが限定されたオプション価格を動かし、各社が長期供給契約を増やしているところまでだ。
最大20億ドルの内訳とGMの吸収策
GMのポール・ジェイコブソンCFOは第2四半期決算説明会で、商品市況と物流、DRAMを合わせた2026年通期のコスト逆風を15億〜20億ドルとした。DRAMインフレの一部は下半期に偏るという。同社は第2四半期の北米事業で、価格改善やEV損失の縮小、保証費の低下による利益増が、物流費とDRAMを含む商品コスト、米国内への生産移管費用で一部相殺されたと説明している。
最大20億ドルという数字をDRAMだけに割り当てることはできない。GMは商品別の内訳も、MicronやSamsungから調達するメモリの契約価格も開示していない。決算説明会では、両社との戦略関係が2022年にさかのぼり、安定供給と次世代メモリの共同ロードマップに役立っていると説明するにとどめた。
それでも、DRAMは決算上の逆風として名指しされた。GMの第2四半期売上高は480億2,600万ドル、調整後EBITは39億4,300万ドルだった。同社はコスト上昇を織り込みながら、2026年通期の調整後EBIT見通しを135億〜155億ドルから140億〜160億ドルへ引き上げた。北米で約0.5%の価格効果を見込み、保証費とEV損失はそれぞれ10億〜15億ドル改善するとの想定が、DRAMを含む負担を吸収している。
つまり、GMではメモリ価格が直ちに収益計画を崩したわけではない。だが、価格改善や保証費削減で相殺すべき規模のコスト項目にDRAMが加わった。ジェイコブソン氏は2027年にもインフレ圧力が残る可能性を認めており、負担が2026年で消えるとの見通しは示していない。
9,900元から12,000元、BYDが動かした運転支援価格
BYDは4月28日の価格調整告知で、王朝網、海洋網、方程豹の一部車種に設定する「天神之眼B(DiPilot 300)」LiDAR版の選装価格を、5月1日から9,900元から12,000元へ変更した。値上げ幅は2,100元、率にして21.2%である。BYDは「世界的なストレージハードウェア費の大幅上昇」を理由に挙げ、4月30日までに手付金を支払った顧客には旧価格を適用した。
対象は運転支援機能のオプションであり、BYD車全体の一律値上げではない。それでも、カメラやLiDARから流れ込むデータを処理する高性能SoCとメモリ、ストレージをまとめた機能では、部品費の上昇を旧価格で吸収できなくなったことが分かる。
5月28日のBYD智能化戦略発表会では、王伝福会長兼社長が全車種で天神之眼B LiDAR版を選択可能にすると発表した。中国の経済紙『毎日経済新聞』の会場取材によると、王氏は12,000元を「コスト価格」と表現した。BYDの公式発表では、同社の運転支援システム搭載車は315万台を超え、1日当たり2億km超の走行データを生むという。運転支援の普及台数が増えるほど、メモリ費の変動は一部の高級車に限られた問題ではなくなる。
GMとBYDの差は、メモリ負担の現れ方にある。GMは価格や保証費の改善を組み合わせて全社の利益計画で吸収している。BYDは対象を限定しながら、追加機能の価格へ2,100元を転嫁した。どちらも車両本体の広範な値上げを示すものではないが、メモリ高騰への対応が決算と顧客価格の両方に現れた。
AI需要と従来型DRAMをつなぐ製造能力の配分
TrendForceの調査では、2026年第1四半期の従来型DRAM契約価格は前四半期比で約93〜98%上昇した。第2四半期も58〜63%上がるとの予測である。この数字は車載DRAMだけの値動きではないが、上位3社が高価格・高収益のサーバー用途へ生産と出荷を優先し、PCやスマートフォンなど他用途の割当が絞られている状況を示す。
AIと車載では使うメモリが同じとは限らない。AIアクセラレーターが使うHBMと、車載機器で使うLPDRAM、NOR、UFS NANDは製品も要件も異なる。波及経路は、AI事業者が車載部品を直接買い占めるという話ではなく、DRAMメーカーが限られた製造能力をどの顧客と製品へ振り向けるかという配分にある。AI推論の拡大は一般サーバー向けDRAM需要も押し上げ、完成車メーカーは供給枠を確保するため長期契約へ動いた。
Micronの2026年度第3四半期では、自動車・組み込み事業部門の売上高が46億3,400万ドルとなり、前年同期の11億2,700万ドルから約4.11倍へ増えた。粗利率も26%から79%へ53ポイント上昇している。ただし、この部門には車載以外の組み込み製品が含まれ、売上増を車載メモリの値上げだけで説明することはできない。数量、価格、製品構成の寄与も開示されておらず、この業績を車載メモリ固有の価格指標としては使えない。
自動車側の使用量も増える方向にある。Micronが2023年に公表したS&P Global Mobility委託調査の要約は、当時の平均的な車両が使うRAMとNANDを90GBとし、2026年には約278GB、ハイエンド車では約2TBへ増えると予測した。278GBは2026年の実測値ではない。それでも、インフォテインメントから先進運転支援、車内AIまでが同じ車両に積み上がることで、完成車1台が必要とするメモリ容量が増える方向は、GMとMicronの契約内容からも確認できる。
車載メモリを囲う長期供給契約
GMとMicronは7月1日、車載メモリの長期供給を確保する戦略的顧客契約を発表した。対象はLPDRAM、NOR、UFS NANDである。両社は将来の車両アーキテクチャに向け、製品定義、システム最適化、次世代メモリの検証と認証でも協業する。調達量、契約年数、価格の固定方法は公表していないため、この契約がGMの2027年コストをどれだけ抑えるかはまだ分からない。
Micronは同じ7月、Fordとも長期契約を結び、DENSO、Astemo、Hyundai Mobisなど車載Tier 1との戦略的顧客契約も公表した。契約の狙いは、メーカー側には供給と価格の見通しを、Micron側には将来需要を示し、認証や製造能力への投資を計画しやすくすることにある。個別の契約期間は非公開だが、長期需要と供給能力、次世代製品の認証計画を早い段階ですり合わせる動きは共通している。
供給能力の追加も始まった。Micronは20億ドル超を投じてVirginia州Manassas工場を近代化し、2026年5月に1α DRAMの生産開始を発表した。同社によれば、この工程は長寿命用途のDDR4とLP4に適している。MicronはGMとの契約について、Manassasでの先進DRAM製造を含む車載供給の拡張・現地化投資が契約を支えると説明した。
ただし、新しい製造能力が動き出しても、車載向けの逼迫がすぐ解消するとは限らない。自動車は販売後も長期間にわたって同じ品質の部品を必要とし、新世代品には車両プラットフォーム上での検証と認証が要る。Micronが供給契約と技術協業を一体で進めるのは、メモリを別製品へ置き換えるだけでは済まないからだ。
車両本体へどこまで転嫁されるのか
現時点で確認できるのは、GMの複合コスト増と、BYDの限定された運転支援オプションの値上げである。GMが見込む北米の約0.5%の価格効果には、商品力や前年のモデルイヤー価格改定など複数の要因が含まれ、DRAMとの因果は示されていない。自動車業界全体がメモリ費を理由に車両本体を何%引き上げるかという数字もない。
それでも、メモリ不足への備えは決算説明の注記から経営課題へ移った。GMはDRAMを通期コストの名指し項目にし、BYDは先進機能の価格を動かし、Micronは完成車メーカーとTier 1へ長期契約を広げた。判定材料になるのは、2026年第3四半期以降の従来型DRAM価格と、GMが2027年のDRAM負担をどこまで見込むかである。長期契約が供給を守り、価格変動まで抑えられれば、車両本体への広範な転嫁を避ける余力が生まれる。



