絶滅種の形質を現生種に再現する技術を開発するColossal Biosciencesが、200億〜300億ドルの企業価値を前提に新たな資金調達を協議している。Axiosが2026年7月20日、関係者の話として報じた。2025年1月に完了した前回ラウンドの評価額は102億ドルだったため、今回の上限は約3倍に当たる。会社は前回の調達時には売上を計上していなかったが、現在は一部の売上が生じているという。ただし、その規模も発生源も分からない。投資家が値付けしようとしているのは、絶滅種再現の研究そのものか、それとも横展開できるバイオ技術事業なのか。
102億ドルから最大300億ドルへ
Colossalが2025年1月15日に発表したシリーズCは2億ドルで、累計調達額は4億3500万ドル、評価額は102億ドルとなった。出資したのはTWG Globalで、会社は資金をゲノム工学技術の開発に充てるとしていた。今回報じられた200億〜300億ドルは、この102億ドルに対して1.96〜2.94倍となる。報道された条件で成立すれば、約18カ月で評価がほぼ倍から3倍へ動く計算だ。
もっとも、現時点で確認できるのは協議の存在であり、資金調達の成立ではない。Axiosによると、調達額と主幹投資家は判明しておらず、Colossalもコメント要請に応じなかった。提示された企業価値が増資前か増資後かも明らかではない。新たに入る資金が大きければ、同じ300億ドルという数字でも既存株主の希薄化や投資家が受け入れた価格の意味は変わる。
評価額が確定するのは、投資家と条件が固まり、取引が完了してからだ。200億〜300億ドルは現状、会社と投資家が探っている価格帯として扱う必要がある。
売上発生で変わる投資家の見方
前回ラウンドとの最大の違いは、Colossalに売上が生じたとAxiosの取材源が述べている点である。前回は売上のない段階だった。売上実績を伴わずに評価されていた会社が売上を計上する段階へ進んだのであれば、投資家が使える判断材料は増える。だが、売上高と成長率は開示されていない。粗利も顧客数も分からず、継続契約による収入か、研究協力に伴う一時金かも不明だ。
Colossal自身も、事業の射程を絶滅種の再現に限定していない。2025年の資金調達発表では、ゲノム工学を軸にソフトウェア、ウェットウェア、ハードウェアを開発し、種の保全や人の医療へ応用する方針を示した。会社が資金を投じる技術群は、絶滅種の再現と他分野への応用を同じ研究開発基盤で進める構想に基づいている。
技術を別会社へ移す動きはすでに始まっている。2022年に分離したForm Bioは、Colossalの複数種ゲノム工学技術を人の遺伝子医薬へ展開する。Breakingは、Colossalで培った生物工学をプラスチック分解へ応用する会社だ。二社の存在は技術に複数の出口があることを示す一方、二社の売上をColossalの売上として数えたり、企業価値をそのまま親会社へ足したりはできない。持ち分やライセンス収入などの経済条件が開示されていないためだ。
政府との提携は売上と同義ではない
米内務省は2026年6月25日、米魚類野生生物局とColossalがバイオバンクと保全ゲノミクスで協力する覚書を結んだと発表した。対象は、絶滅危惧種の組織や細胞を長期保存し、ゲノム情報を保全計画へ取り込む方法やデータ管理の基準を検討することだ。公的機関が利用可能性を検討することは、技術の用途を広げる。ただし、内務省は覚書が連邦政府の支出を義務づけないと明記している。資金、サービス、資産を伴う将来案件には別の契約が必要になる。
UAEとの関係も、資本と売上を分けて見る必要がある。ColossalとUAEは2026年2月3日、ドバイ未来博物館に研究施設「World Preservation Lab」と遺伝資源を保存する「Colossal BioVault」を常設する計画を発表した。発表文によれば、UAEはColossalの直近ラウンドを拡張する初期出資を主導した。これは会社への資金供給であり、製品やサービスの販売額ではない。
政府との協力は、保全技術を実地に適用し、運用条件を詰める機会をColossalにもたらす。反面、公開文書から有償契約や継続収入の規模までは読み取れない。200億ドル以上という評価の妥当性を測るうえでは、提携数よりも、そこからどの程度の対価を継続的に得られるかが判断材料になる。
次のラウンドが証明すべきもの
今回の協議が成立すれば、参加した投資家がどの条件で評価額を受け入れたかが分かる。主幹投資家が誰で、いくらを投じ、増資前と増資後のどちらで200億〜300億ドルになるのか。これらが開示されれば、今回の私募で成立した価格を判断できる。
もう一つは売上の質だ。金額と伸び率に加え、どの技術が誰に売れたのかが分かれば、Colossalを研究開発会社、技術ライセンサー、保全インフラ事業者のどれとして評価すべきかが見えてくる。Form BioやBreakingに対する持ち分とライセンス関係も、親会社に戻る価値を左右する。
Colossalは絶滅種の形質再現を前面に出し、2025年1月までに4億3500万ドルを集めた。公開される取引条件と売上内訳は、ゲノム工学を繰り返し収益へ変えられるか、200億〜300億ドルという評価が妥当かを判断する材料になる。
