Valveは9月14日、無線VRヘッドセット「Steam Frame」の価格と抽選予約の開始を発表した。米国価格は256GBモデルが1,059ドル、1TBモデルが1,299ドルで、購入案内メールは9月18日から順次送られる。部材不足で価格と出荷計画を見直してきた製品が、ようやく購入手続きへ進む。ただ、1,059ドルからの価格を判断するには、ヘッドセット単体でゲームを動かす能力と、手元のPCから映像を受け取る仕組みを分けて見る必要がある。Steam Frameの設計は、重い描画をPCに任せながら、ケーブルから離れて遊ぶ体験を中心に組まれている。
1,059ドルからの抽選予約と日本向け販売
Valveの発売告知で示された米国価格は次の通りだ。両モデルともヘッドセットとコントローラーを組み合わせ、PC接続用の無線アダプターが付く。
| モデル | 米国価格 | 内蔵ストレージ |
|---|---|---|
| Steam Frame 256GB | 1,059ドル | 256GB UFS |
| Steam Frame 1TB | 1,299ドル | 1TB UFS |
上位モデルとの差額は240ドル(1,299−1,059)となる。両方にmicroSDカードスロットがあるため、容量を選ぶ際には本体へ何本のゲームを入れるかが判断材料になる。PCから映像を受け取って遊ぶ場合、ゲームの保存先はPC側だ。なお、これは米国の発表価格であり、日本での販売価格を示すものではない。
Steam直販地域では、9月17日午前10時(米太平洋夏時間、日本時間9月18日午前2時)まで申し込みを受け付け、その後、一度だけ順番を無作為に並べ替える。早く申し込んだ人から買える方式ではない。Valveは、短時間の先着販売で有利になるボットや高速な回線への偏りを減らし、転売目的の申し込みを抑える狙いを説明している。
抽選後は、予約枠に入ったか、待機リストに入ったかが通知される。予約枠に入った人への購入案内は9月18日から順次始まり、メール受信後72時間以内に決済する。9月18日は購入案内の開始日で、全員への発送日や到着日ではない。 待機リストに入った場合は、キャンセルや追加生産に応じて順番が進む。
公式FAQには、正常な状態のSteamアカウントに加え、2026年4月27日より前の購入履歴が必要とある。申し込みは1世帯につき1件で、地域とモデルごとにリストが分かれる。抽選後はモデルを変更できず、締切後の申し込みは待機リストの最後尾に回る。
日本はKOMODOが販売を担当する。台湾と香港も同社経由で、韓国は後日の出荷予定だ。9月15日の確認時点ではKOMODOの商品ページがメンテナンス中だったため、国内価格と受付日時は確認できていない。Steam直販地域の抽選条件を、そのまま日本の条件と考えることはできない。
付属品にも注意したい。『Half-Life: Alyx』は本体の設定から引き換えられるが、すでに所有しているアカウントで追加の1本を取得することはできない。電源アダプターは別売りで、Valve純正の45W電源は米国で29ドルとなる。純正アクセサリーは、購入案内を受け取った人が本体の決済時に追加する方式だ。
部材高騰で変わった価格と本体の構成
Valveは2月4日の説明で、メモリとストレージの供給不足が深刻化し、価格上昇によってSteam Frameなどの価格と出荷日程を再検討する必要があると明らかにしていた。今回の価格は、その見直しを経て公表されたものになる。
発売時のPC Gamerの取材でも、ValveのハードウェアエンジニアJoy Lyons氏は、世界的なRAM不足で当初の価格目標が変わったと説明した。同社のソフトウェアエンジニアJeremy Selan氏も、前年に想定していた価格で出荷したかったと述べている。ただし、この説明から旧目標価格や、部品ごとにいくら上乗せされたかまでは分からない。240ドルのモデル差額を、ストレージの部品原価と読み替えることもできない。
本体にはSnapdragon 8 Gen 3と16GBのLPDDR5Xメモリを搭載し、SteamOSで動く。表示は片眼2,160×2,160画素のLCDで、リフレッシュレートは72〜144Hz。144Hzは仕様欄で実験的機能とされている。パンケーキレンズを採用し、本体の中核モジュールとヘッドストラップを合わせた重量は440gだ。
外向きのカメラでヘッドセットとコントローラーを追跡するため、外部のベースステーションを設置する構成から変わる。一方、周囲を映す標準のパススルー映像はモノクロである。価格だけから、あらゆる表示・撮影機能を備えた製品だと考えるのは早い。Valveが力を入れた部分は、PCとヘッドセットの間で映像を運ぶ仕組みにもある。
無線化を支える3つの処理は、役割が違う
Steam Frameには6GHz帯の専用無線アダプターが付属する。本体はWi-Fi 7に対応するが、アダプター側はWi-Fi 6Eだ。本体の2つの無線系統を使い、PCからの映像・音声と通常のWi-Fi接続を分担させる。さらに、製品ページでは「Multi-Link Streaming」を説明している。利用可能な複数の接続へ同時にデータを振り分け、通信状況に応じて適応する機能だ。
視線に応じて送信画質を変える機能、描画の負荷を減らす機能、無線経路を増やす機能は、それぞれ別の処理に働く。 Valveの製品説明と2月の技術FAQを、処理の対象と実装条件で分類すると違いが見える。
| 仕組み | 何を変えるか | 実装・利用の条件 |
|---|---|---|
| Foveated Streaming | 視線の先へ高品質な映像を集中して送る | システム側の機能で、ゲーム開発者の追加作業は不要 |
| 視線追跡を使う可変解像度描画 | 視線に合わせ、ゲームが高解像度で描く領域を変える | ゲーム側での実装が必要。伝送側の機能と併用できる |
| Multi-Link Streaming | 複数の接続経路を同時に使い、伝送の安定性を高める | 付属アダプターと本体の無線系統を生かし、利用可能な接続に適応する |
表は9月15日に確認したValveの説明を照合したもので、性能の実測比較ではない。特に、Foveated StreamingはPCが描く段階ではなく、映像を送る段階を変える。視線追跡が付いているからといって、この機能だけでPCの描画負荷まで減るわけではない。
Multi-Link Streamingも、視線に合わせて画質を変える処理とは役割が異なる。伝送に使える経路を増やし、冗長性を持たせることで接続を安定させる設計である。Valveは品質と信頼性の改善をうたうが、家庭ごとの通信環境でどれだけ遅延や画質が改善するかを一律に示してはいない。
つまり、ヘッドセットを無線化しても、ゲームを描くPCの性能という条件は残る。そのうえで、描かれた映像を視線に合わせて送り、接続経路も活用する。PCの計算能力と無線の品質を別々に改善できるようにした構成だ。
単体認証の基準とPC接続時の電池持ち
Valveは発売告知で、単体動作の認証を受けたゲームが100本を超えたと説明している。ただし、この認証が評価するのはヘッドセット内でゲームを動かす体験だ。PCからのストリーミングとは評価対象が違う。
開発者向けの認証基準は、通常のプレイ時に次の最低性能を求める。
| 単体動作でのゲーム種別 | 認証に必要な最低解像度 | 最低フレームレート |
|---|---|---|
| 2Dゲーム | 1,280×720 | 30fps |
| VRゲーム | 1,728×1,728 | 72fps |
これは認証の下限であり、搭載LCDの解像度でも、すべてのゲームで達成できる性能の保証でもない。仕様欄の144Hzを見て、単体動作のVRゲームがすべて毎秒144フレームで描かれると期待するのも誤りだ。Windows向けゲームを動かすProtonにも互換性の制約があり、手持ちのタイトルごとの確認が必要になる。
外部PCに描画を任せる効果は、ヘッドセットの電池持ちにも表れる。PC GamerのJacob Ridley氏は『Half-Life: Alyx』で、Arm版の単体動作では63分、PCからのストリーミングでは114分の駆動時間を報告した。いずれもフレームレートを72fpsに制限するPlaytimeモードでの試験であり、他のゲームや設定で同じ時間を保証する数値ではない。それでも、どこでゲームを動かすかが装着中の駆動時間に関わることを示す具体例になる。
Steam Frameを選ぶ前に確かめたいのは、遊びたいタイトルを単体で動かすのか、すでにあるPCから送るのかという使い方だ。前者なら認証状況と本体容量、後者ならPCの性能と無線環境が購入後の体験を左右する。日本の販売条件が確認できた段階で、必要な電源やPCを含めた費用と照らせば、1,059ドルからの製品が自分の環境で何を解決するのかを判断できる。



