NVIDIAは2026年8月25日、DLSS 4.5 Ray Reconstruction(レイ再構成)を公開した。対象はGeForce RTX 20シリーズ以降の全世代だが、現時点で使えるのはNVIDIA Appの早期アクセス版で、正式版は9月に予定されている。今回変わったのは、レイトレーシングの光をきれいに整える機能の有無ではない。DLSS 4で採用したTransformerを第二世代へ進め、動く光や細かな模様を時間の流れに沿って保つ能力を高めている。
NVIDIA Appから新モデルを上書きできるゲームは30タイトルに達する。ただし、対応表に名前があることと、あらゆる場面で画質が大きく向上することは別だ。初期の実機検証からは、残像が目に見えて減る場面がある一方、差を判別しにくい作品や、新しいアーティファクトが現れる場面も見つかっている。
DLSS 3.5から4.5までのモデル更新
レイ再構成は、リアルタイムのレイトレーシングやパストレーシングで不足する光のサンプルをAIで補い、ノイズを除く技術である。1画素あたりに十分な数のレイを飛ばすと処理が重くなるため、ゲームは少ないサンプルから最終画像を組み立てる。DLSS 3.5は2023年、反射や間接光ごとに用意していた手調整のデノイザーを、NVIDIAのスーパーコンピューターで学習した一つのネットワークへ置き換えた。
2025年のDLSS 4では、レイ再構成と超解像のモデルがCNNからTransformerへ移った。自己注意を使って広い画素範囲の関係を追えるため、フレームをまたぐ細部や照明を残しやすくなった。DLSS 4.5は、このTransformer路線を第二世代へ更新する。機能そのものの新設ではなく、時間方向にどの情報を蓄え、現在のフレームにどこまで反映するかを改良した世代交代だ。
レイ再構成はデノイズと高解像度化を一つのモデルで処理する。とはいえ、モデルを差し替えればゲーム側の実装品質まで均一になるわけではない。開発者は線形深度やモーションベクトルを正しく渡し、従来のデノイザーを止めなければならない。カメラが切り替わる場面では履歴をリセットする必要もある。入力が崩れれば、より賢いモデルでも残像やちらつきを正しく直せない。
35%と20%の正しい読み方
NVIDIAは第二世代モデルについて、前世代と同程度の性能を保ちながら「compute capability」を35%増やし、処理するパラメータを20%増やしたと説明する。ここでいう35%はフレームレートの上昇率ではなく、処理負荷の増加率とも限らない。20%もモデルのファイル容量やVRAM使用量がそのまま増えるという意味ではない。NVIDIAは公開ページで測定方法や基準ワークロード、GPU世代別の内訳を示していない。
画質面では、学習データを拡張し、シーン全体の空間的な関係を捉える能力を深めたという。ゲームエンジンから受け取る画素サンプルと動きの情報を選ぶ精度も高め、照明の正確さ、時間方向の安定性、動いている物体の明瞭さを改善する。さらに開発者は、過去フレームの情報をどの程度蓄えるかを細かく調整できる。
NVIDIAが公開した変更点には、時間方向の蓄積を開発者が細かく調整できる機能も含まれる。ただし、公開ページは設定値や場面ごとの効果を示していない。第二世代モデルが入力された動きと光をどう選ぶかは、ゲーム側のネイティブ更新後に確認する必要がある。
30タイトルへの上書きと9月の正式版
8月25日時点で新モデルを使うには、NVIDIA Appの「Settings > About」でEarly Accessを有効にし、GeForce Game Ready Driver 580.88 WHQL以降を導入する。対応ゲームのGraphics画面、またはGlobal Settingsから「DLSS Override - Model Presets」を開き、レイ再構成でRecommendedかPreset Fを選ぶ。ゲーム内ではレイ再構成自体を有効にしておく必要がある。
上書き対象にはAlan Wake 2、Cyberpunk 2077、DOOM: The Dark Ages、PRAGMATA、Indiana Jones and the Great Circleなど30作品が並ぶ。これは既存の対応ゲームへ新しいAIモデルを配る仕組みであり、未対応ゲームにレイトレーシングやレイ再構成を追加する機能ではない。また、30作品すべてが同日にゲーム本体を更新したわけでもない。開発者が時間方向の蓄積まで調整するネイティブ対応は、各作品の更新として順次届く。
全GeForce RTX対応という表現も、世代をまたいで同じ速度が出ることを保証しない。RTX 20シリーズから50シリーズまでモデルを利用できる一方、NVIDIAは公開資料で世代別の処理時間を示していない。古いGPUを使う場合、画質差とフレームレートを自分の環境で確認する価値がある。
PRAGMATAで消えた残像、Cyberpunkで残った弱点
NVIDIAは改善例として3作品を挙げた。Indiana Jones and the Great Circleでは雪の粒子に生じる残像が減り、PRAGMATAではレーザーが消えた後に光が残る現象を抑えた。Alan Wake 2では、CRTテレビに映る細いノイズの線を安定して保持できるという。いずれも静止画の解像感より、時間の経過で崩れやすい情報を直す例である。
独自に4作品を比較したHotHardwareは、Blackwell世代のGPUでは旧モデルとの性能差を走行間のばらつき内とした。PRAGMATAのレーザー残像は明確に改善したが、Cyberpunk 2077の特定の金網では光るようなアーティファクトが旧モデルより目立ったという。Crimson DesertとHogwarts Legacyでは、動作中に違いを見分けるのが難しい場面も多かった。
WccftechもRTX 5090とRTX 40シリーズで比較し、フレームレート差をプラスマイナス3fps以内と報告した。ただし、RTX 40側の具体的なGPUや解像度など、比較条件は十分に開示されていない。初期検証から言えるのは、新モデルが特定の失敗パターンを直せることまでだ。全ゲームで一律に鮮明になり、速度も変わらないとはまだ断定できない。
007とCONTROLが試すネイティブ統合の完成度
今後の目印は、アプリによる上書きよりも、開発者が第二世代モデルに合わせて調整する作品だ。007 First Lightは9月15日にパストレーシングとDLSS 4.5 Ray Reconstructionの更新を受ける。CONTROL Resonantは9月24日の発売時から、パストレーシングとDLSS 4.5に対応する予定である。
RTX Remixにも新モデルが加わり、既存modへ差し替えられるようになった。NVIDIAは一方で、modごとに互換性と画質が異なると注意している。レイ再構成の適用先はユーザー制作のmodへ広がったが、公式に統合されたゲームと同じ結果が出るとは限らない。
9月の正式版が届いた後は、30タイトルという数より、RTX 20/30シリーズでの処理時間と、ネイティブ更新が残像をどこまで減らすかが効いてくる。ゲーム側が正しい情報を渡し、場面に合わせて履歴を調整できれば、第二世代モデルはパストレーシングで最も目につく時間方向の破綻を抑えられる。その条件が複数のエンジンで再現するかどうかが、DLSS 4.5 Ray Reconstructionの実力を決める。



