自宅に太陽光パネルを載せている人なら、モニタリングアプリの発電量グラフを見て一度は首をかしげたことがあるはずだ。日射がいちばん強いはずの8月なのに、5月や6月と比べて発電量の伸びが思ったより小さい。あるいは、快晴が続いているのに前日よりむしろ少ない日さえある。

日射量そのものは6月から8月にかけて年間でも高い水準を保つ。太陽の南中高度は高く、晴天日の日照時間も長いため、地表が受け取るエネルギー量そのものは増える。それなのに肝心の発電量は、日射量の伸びほど素直に伸びない。

夏特有のこの目減りの原因は、雲でも汚れでもなく、パネル自体が持つ「熱に弱い」という性質にある。太陽光パネルは光を電気に変える半導体デバイスであり、半導体は温度が上がるほど性能が落ちる。この記事では、その物理的なメカニズムと、メーカーがカタログに載せる性能値がなぜ「25℃」を基準にしているのかを解く。

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日射は増えているのに、出力は目減りしている

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結晶シリコン太陽電池の最大出力は、パネル温度が1℃上がるごとに0.4〜0.5%ずつ低下する。この数値は「温度係数」と呼ばれ、太陽電池の教育や研究のためのリソースであるPVEducationが解説する結晶シリコン系の標準的な値だ。基準になるのは25℃で、これはパネル性能を測定する国際的な標準試験条件(STC)が定めるセル接合温度であり、カタログに載る「定格出力」もこの条件下で測られた数字だ。

真夏の炎天下でパネルが25℃で済むことはまずない。パネルの実際の温度は、メーカーが公表する「公称動作セル温度(NOCT)」という指標から見積もれる。NOCTは日射量800W/m²、外気温20℃、風速1m/sという現実に近い条件で測った温度で、結晶シリコンパネルでは40〜48℃程度に収まる機種が多い。ここから実際のセル温度は、外気温に(NOCT-20)×(日射量/800)を足すことでおおよそ計算できる。

日本の夏の炎天下を想定し、外気温35℃、日射量は快晴時のピークとなる1000W/m²、NOCTは標準的な45℃を当てはめると、セル温度は35+(45-20)×(1000/800)で約66℃まで跳ね上がる。25℃という基準から41℃も高い。ここに温度係数0.4〜0.5%を掛け合わせると、同じ強さの日射を浴びていても熱だけでカタログ値の約18.5%が失われる計算になる。日射量が増えた分の上乗せを、この目減りが飲み込んでしまうことがあるわけだ。

出力低下の正体は電圧にあった

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太陽光パネルの発電量は電流と電圧の掛け算(P=IV)で決まる。温度が上がると電流が減って出力が落ちる、と考えたくなるが、実際の主犯は逆だ。電流は温度が上がるとむしろわずかに増える。PVEducationのデータでは、その増加率は1℃あたり約0.06%にとどまる。半導体は熱を受けると光を電気に変えやすくなる性質があり、これまでは吸収できなかった波長の長い光まで電子に変換できるようになるためだ。

出力を実際に押し下げているのは開放電圧(Voc)の方だ。同じくPVEducationによれば、結晶シリコンセルの開放電圧は1℃あたり約2.2mV低下する。背景にあるのは、半導体内部を漏れ流れる微弱な電流が、温度が10℃上がるごとにおよそ倍増するという性質だ。光が当たっていなくても熱エネルギーで動き回る電子が増え、その漏れが電圧を押し下げる。電流はほとんど変わらない一方で電圧は下がり続けるため、掛け算である出力は温度とともに一方的に減っていく。

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「25℃」は比較のための物差しだった

STCが定める25℃は、実際の使用環境を再現するための条件ではなく、異なるメーカー、異なる製品を同じ土俵で比較するための物差しだ。米エネルギー省のレポートは、STCと並んで「PTC(PV USA Test Conditions)」という別の基準も紹介している。PTCは外気温20℃、日射量1000W/m²という、より現実の運用環境に近い条件で測定した値で、STCより低めの出力が出ることが多い。

太陽光の品質解説サイトSinovoltaicsは、1000W/m²というSTC並みの強い日射を浴びながらパネル温度だけ25℃に保たれる状況は実運用ではほぼ起こり得ないと指摘している。つまりカタログの「定格出力」は、真夏の屋根の上で出せる数字ではない。あくまで比較のための共通ルールの上に成り立つ数字なのだ。

この物理をどう和らげるかは、パネルの世代によっても違う。太陽光発電の情報サイトstandard-project.netの試算では、比較的新しい世代のセルの温度係数は-0.27〜-0.30%/℃程度で、従来型のセル(-0.40%/℃程度)よりも熱に強いとされる。パネル温度70℃のとき、新しい世代のセルは定格の86.5%程度を保つのに対し、従来型のセルは82%程度まで落ち込み、その差はおよそ4〜5ポイントに達するという。パネルのスペック表に載る温度係数の数値は、平常時の性能を表すと同時に、夏場にどれだけ発電量が目減りするかも左右する現実的な指標だ。

次に自宅のモニタリングアプリで発電量グラフを眺めるときは、日射量の折れ線に加えて、その日の気温も確認してみるといい。気温が高い日ほど、パネルは同じ日射を浴びながら本来の実力を出し切れていない。数字が伸び悩む日の裏側には、屋根の上で60℃を超えて働き続けるパネルの姿がある。